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AI検索時代に追うべきは「流入」だけではない。海外SEOカンファレンスAhrefs Evolve 2026参加レポート

2026年5月14日、シンガポールで開催された「Ahrefs Evolve Singapore 2026」に参加してきました。

主催者によると、20か国以上から200人を超える参加者が集まりました。

CanvaやManus AIなど、SEO以外の企業も登壇し、AI時代のマーケティング全体を考える場になっていたと感じます。

今年の登壇の顔ぶれ(筆者作成スライド)

今回は、特に印象に残った次の3つの講演を紹介します。

  • AI検索がウェブサイトへの流入とブランド認知に与える影響

  • 大規模言語モデルの中に存在するブランドの序列

  • AIに自社を正しく説明してもらうための情報整備

3つに共通していたのは、AIの回答で自社が「見つかるか」「どの程度想起されるか」「正しく語られているか」を継続的に確認し、整える必要性です。

クリックだけでは見えないブランド認知

最初は、AhrefsのCMO、Tim Soulo氏の基調講演です。

Tim氏は、人が企業や商品を知る経路を「検索」「発見」「口コミ」に整理し、AIが大きく変えたのは検索だと説明しました。

ahrefs.comの検索流入も、2025年3月のGoogleコアアップデート以降に大きく減少し、その後もAI Overviewsなどの影響で減少が続いたといいます。

Ahrefs自身の検索流入も減少している(Tim Soulo氏スライド・筆者撮影)

Ahrefsが30万キーワードを調査したところ、AI Overviewsが表示される検索では、検索1位ページの平均クリック率が35%低くなっていました。

さらに、2025年12月の再調査では、その差が58%まで拡大したそうです。

検索そのものは増えている。一方で、検索結果からウェブサイトへ流れる人は減っている。

この変化が、AI検索時代の大きなポイントです。

AI Overviews表示時、1位ページの平均CTRは58%低い(Tim Soulo氏スライド・筆者撮影)

ChatGPTがGoogle検索を奪ったわけではありません。

講演で示された2024年の利用データでは、Googleの検索回数は前年比20%以上増え、ChatGPTの約373倍でした。

人々がGoogleを使わなくなったのではなく、検索結果からサイトをクリックする割合が下がっているのです。

AIからの流入は小さいが、認知経路としては無視できない

Googleから減った流入を、ChatGPTなどのAI検索が補っているわけでもありません。

Tim氏が紹介した7万5,000サイトの集計では、ChatGPTからの送客は全体の0.19%でした。Googleのおよそ150分の1で、DuckDuckGoよりも少ない水準です。

ChatGPTの送客シェアは0.19%(Tim Soulo氏スライド・筆者撮影)

一方、Ahrefsの新規登録者への自己申告調査では、認知経路の3位がChatGPTで、10.73%を占めました。

ただし、これは購入率ではなく、先ほどの送客シェア0.19%とも母集団・分母・計測方法が異なるため、単純には比較できません。

それでも、ChatGPTで商品を知った後にブランド名で検索するなど、アクセス解析では捉えにくい認知接点の存在は示唆されます。

AIの価値を直接流入だけで測ると、影響を過小評価する可能性があります。

直接流入は小さくても、認知経路としては無視できない(筆者作成)

AIで名前が出る企業は、ウェブ上の言及が多い

Tim氏の調査では、AI上の可視性は、被リンク数やDomain Ratingよりも、ウェブ上のブランド言及数と強く相関していました。

特にYouTube上の言及は、ChatGPTだけでなく、GoogleのAI ModeやAI Overviewsでも高い相関が確認されたそうです。

ただし、これは相関であり、言及を増やせば必ずAIに取り上げられるという因果関係を示すものではありません。

AI上の可視性と相関が強いのは「言及」(筆者作成)

Tim氏は、企業のYouTubeチャンネルや商品説明動画がない状態は、現時点では機会損失になり得ると話しました。

実務では、自社サイトやYouTubeの情報を充実させ、最新に保ちます。そのうえで、重要キーワードの比較・おすすめ記事に自社が掲載されているか、既存の引用元や新しい言及で何が語られているかを確認します。

おすすめ系の質問でChatGPTが参照したページの4割以上はリスト記事で、その8割は2025年に公開または更新された記事でした。「どこで言及されているか」と「情報が新しいか」の両方を管理する必要があるとの事でした。

Tim Soulo氏の講演内容を5項目に整理(筆者作成)

大規模言語モデルの中には「ブランドの序列」がある

次に紹介するのは、DEJAN MarketingのManaging Director、Dan Petrovic氏による「I probed Gemini and GPT 1,000,000 times. This is everything I've learned so far.」というセッションです。

Dan氏は、GeminiやGPTに大量の質問を繰り返し、AIの中でブランドがどのように記憶されているかを調査していました。

「100万回」という数字は、内容を分かりやすく表現したものだと冒頭で説明しています。

最初の調査では、Geminiに同じ質問を20万回繰り返しました。

APIの請求額は2,000ドルに達し、経理担当者を驚かせたというエピソードも紹介されていました。

調査規模を示す「1,000,000 model probes」(Dan Petrovic氏セッション・筆者撮影)

調査では、8,608のブランドを起点に、「このブランドから何を連想するか」を何段階も尋ねました。

たとえば、

「GUCCI」→「LOUIS VUITTON」→「CHANEL」

というように、ブランド同士のつながりをたどります。

この方法で調査対象を広げ、最終的には約300万ブランド規模まで分析したそうです。

8,608ブランドを起点に約300万ブランドの地図へ(Dan Petrovic氏スライド・筆者撮影)

ブランドの評価には、2つの指標が使われていました。

  • Popularity Index:ブランド名が出た回数と、回答内で想起された順位を組み合わせて評価

  • Authority Index:ブランド同士の関連ネットワークを、PageRank型の方法で評価

Popularity Indexでは、Appleが1位、Nikeが3位でした。

Nikeはブランド名が出た回数だけならAppleを上回っていました。しかし、想起される順番まで含めると3位でした。

日本企業では、Toyotaが5位で最上位でした。

国別では、米国のブランドが最も強く、その次が日本でした。

少なくともこの調査では、日本企業はAIの中で比較的強く想起されていることが分かります。

Popularity Indexの上位ブランド(Dan Petrovic氏スライド・筆者撮影)

一方、Authority Indexでは、中国のEVメーカーBYDが883位、大手電池メーカーCATLは6,000位台でした。

中国ブランドはAIの中で過小評価されていた(Dan Petrovic氏スライド・筆者撮影)

Popularity IndexとAuthority Indexは、別々の指標です。そのため、AppleやToyotaとBYDの順位を同じランキングとして単純に比較することはできません。

また、この順位は、現実の企業価値や製品力を示すものでもありません。あくまで、特定の方法でAI上のブランド認識を調べた結果です。

それでも興味深いのは、実際の市場で急成長している企業が、AIの中でも同じ強さで想起されるとは限らないことです。

つまり、企業の実力とAI上の認知には、ずれが生まれる可能性があります。

AIの回答では、競合ブランドが「対」で想起されやすい

Dan氏の調査では、ブランド同士の対の連想も確認されました。

例えば、BMWとMercedes-Benz、VisaとMastercardです。片方のブランドを挙げると、もう片方が連想されやすい関係になっていました。

「対」で記憶されるブランドの例(Dan Petrovic氏スライド・筆者撮影)

少なくとも今回の調査では、競合ブランドがセットで想起されやすいケースが確認されました。

これは実務でも重要なポイントです。自社単体の説明を増やすだけではなく、次の3点を明確にする必要があります。

  • 自社が「どのカテゴリー」に属するのか

  • 「どの企業」と比較されるのか

  • 「どの特徴」で差別化されるのか

一方で、AIの記憶をすべて自由に変えられるわけではありません。

Dan氏は、AIが回答に使う情報を2つに分けて説明していました。

1. 学習済みのパラメトリックメモリ

AIが学習によって内部に持っている情報です。企業が通常のコンテンツ更新によって、直接書き換えるのは難しい領域です。

2. グラウンディング情報

回答時のウェブ検索などを通じて取得する情報です。こちらは、ウェブ上のコンテンツを整えることで働きかけられる余地があります。

つまり、AIの内部にある記憶そのものを変えるのではなく、AIが回答時に参照するウェブ上の情報を整えることが、企業にとって現実的なアプローチになります。

抽象的な表現ではなく、固有名詞や具体的な数値で示す

Dan氏は、電気自動車メーカー「BYD」のコンテンツを使った最適化実験も行っていました。

対象ページの表現を調整した結果、複数の対象フレーズを合計して74ポジション改善したといいます。

ただし、すべての検証が成功したわけではありません。変化がなかった例や、Gemini上の評価順位が下がった例も紹介されていました。

効果が見られた修正は、単純なキーワードの追加ではありませんでした。たとえば、次のような変更です。

  • 商品名だけの見出しに、「メーカー名」「車種名」「具体的な特徴」を加える

  • 略語だけで説明していた部分に、「仕組み」や「性能」を加える

  • 「高性能」「長時間」などの抽象的な表現を、具体的な数値や固有名詞に置き換える

重要なのは、キーワードを増やすことではなく、AIが内容や特徴を具体的に理解できる情報へ書き換えることです。

実際の書き換え例。車種名にメーカー名と性能を明記(Dan Petrovic氏スライド・筆者撮影)

メーカー名、商品名、機能、用途を、関係が分かる形で近くに書くと、関連づけて理解されやすくなる可能性があります。

ただし、これは主にGeminiを対象にした実験で、すべてのAIや業界に一般化はできません。自社テーマで修正前後を測定する必要があります。

AIに見つかるだけでは不十分。正確性も重要

3つ目は、Flow Agency創業者Viola Eva氏のセッションです。

紹介されたBtoB購買調査では、LLMの利用割合は要件整理で26.5%と最も高い一方、最終判断では9%に下がり、人からの推奨が31.5%で最多でした。

これは各段階で使われたチャネルの割合であり、購買への影響度を測った数字ではありません。

購買段階ごとの利用チャネル(Viola Eva氏スライド・筆者撮影)

LLMが候補探しの初期段階で使われるからこそ、入口で誤って説明されると、本来は適した商品でも候補から外れかねません。

Viola氏は、AIの回答を「そのブランドについてウェブ上で語られてきた情報の平均」のようなものだと表現しました。公式情報だけでなく、過去の記事、古いプロフィール、レビュー、YouTube、フォーラムなども参照対象になり得ます。

同氏らのHR・Work Tech領域の調査では、AI Overviewsの1回答あたり7〜18件の情報源が参照されていました。ただし、この件数は同領域に限った結果です。AI上の情報を正しく保つには、ウェブ全体を継続的に確認する必要があるとの事でした。

Betterworksは、なぜ違う製品カテゴリーとして説明されたのか

講演では、HRテック企業Betterworksが、Googleの生成AI検索SGEで「クラウド型のHuman Capital Managementソフトウェア」と説明された事例が紹介されました。実際は、人事評価・キャリブレーション・目標管理など、従業員のパフォーマンス管理を支援する製品です。

誤った説明に影響した主要な引用元の一つが、古い製品分類の残っていたTechTargetの記事でした。

誤った説明に影響していた主要な引用元の一つが、第三者メディアのTechTarget(Viola Eva氏スライド・筆者撮影)

この状態では、Betterworksを必要とする人に正しく伝わらないだけではありません。別の機能を求める人を呼び込み、結果的に「期待した製品ではなかった」と判断される可能性もあります。

AI上で名前が出ること自体は、必ずしも成果ではありません。何について、どのように紹介されているかまで確認する必要があります。

情報を整える順番は「測る、正す、増やす」

Viola氏は、デジタル上の情報を整える流れを5つの段階で説明していました。

まず、自社をどのような企業として説明するかを決めます。次に、自社サイトの情報を更新します。

その後、SNSやレビューサイトなど、ある程度管理できる外部ページを整えます。土台ができてから、メディア掲載や比較記事などの外部露出を増やします。最後に、AIの回答と参照元を継続して監視します。

情報を整える5つの段階(Viola Eva氏スライド・筆者撮影)

この5段階を踏まえ、筆者なりに実務の流れを整理すると、「自社の説明を定める」ことを前提に、「測る、正す、増やす」の順になります。

AI検索対策は「測る→正す→増やす」の順(筆者作成)

まずAIに自社について質問し、「カテゴリー」「比較される競合」「参照ページ」「事実と異なる説明」を確認します。

誤りがあれば、自社サイトに加えて、古いSNSプロフィール、レビュー、過去記事も直します。そのうえで、YouTube、比較記事、業界メディアなど、自社が語られる場所を増やします。

順番は「測る→正す→増やす」です。説明が定まらないまま露出を増やすと、古い情報や誤情報まで広がる可能性があります。

AI検索時代は、SEOの指標も増やす必要がある

検索順位、自然検索流入、コンバージョンは今後も重要です。ただし、AI検索の変化を捉えるには、次の指標も必要です。

  • ウェブ上でブランドが言及された数

  • AI回答でのブランド出現率

  • AIが参照したページ

  • 指名検索の推移

  • 顧客が商品やサービスを知った経路

見る対象を「検索結果で何位か」から、「AIやウェブ上で自社がどう認識され、どこで語られているか」まで広げる必要があります。

従来のSEO指標に、ブランド言及や指名検索などの指標を加える(筆者作成)

昨年の「不安」から、今年は「実務」へ進んだ

私はAhrefs Evolveに2年連続で参加しました。

昨年は、AI Overviewsによって検索流入がどこまで減るのかという不安が、議論の中心だったように感じます。

今年は少し違いました。

AIによる変化を前提として受け入れたうえで、議論は具体的な実務へ進んでいました。

  • 何を測るのか

  • どの情報を直すのか

  • どのように露出を増やすのか

「AI検索で何が起きるのか」を議論する段階から、「変化を前提に、何をするのか」を考える段階へ移ったように感じます。

議論は「不安」から「実装」へ(筆者作成)

今年は、AIが古い情報を参照し、現状と異なる回答をするという、検索順位だけでは見つけにくい課題も見えました。

今後は、言及の増加でAI上の可視性が変わったか、情報修正で回答が正確になったかまで測り、改善する段階へ進むと考えます。

まとめ

今回の3つの講演を通じて、AI検索対策では「見つかる」「想起される」「正しく語られる」の3つの状態を継続的に確認し、整える必要があると感じました。

「見つかる」「想起される」「正しく語られる」の3つを確認する(筆者作成)

AIからの直接流入や表示回数だけでなく、何を参照し、どのように自社を説明しているかまで確認する必要があります。

まず測る。次に正す。そのうえで言及を増やす。この順番で継続的に整えることが、今後のSEOやAI検索対策の基本になるのではないかと思います。

―――
平大志朗/SEO研究チャンネル
株式会社TechFabric代表。AI Overview・AI ModeなどAI検索の調査分析と、企業向けSEO/LLMO/GEOコンサルティングを行っています。

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