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幸せは、ため息くらいじゃ逃げない

ため息を、ついた。

無意識だった。 氣づいたら、口から、ふーっと、長い息が、漏れていた。


ため息をつくと、幸せが逃げる。 そう、聞いたことがある。 だから、ずっと、いけないことだと思っていた。 人前では、こっそり、隠していた。 ひとりのときでさえ、なんだか、うしろめたかった。


でも、その日は、止められなかった。 ひとりで、思いきり、ついてみた。 ふーっと、長く、長く。

すると—— 逃げるどころか、なんだか、楽になった。 止まっていた何かが、やっと、動き出したみたいに。


たぶん、ため息は、 体が、勝手にしてくれる、小さな深呼吸なんだ。 ずっと、こらえていた息を、 やっと、外に出すための。

がんばっているとき、私は、息を、止めている。 うまくやらなきゃ、と、 無意識に、胸のあたりで、ぐっと、こらえている。 だから、ため息は、その反動で、出てくるんだろう。

体は、ちゃんと、知っている。 頭より先に、「もう、ゆるめていいよ」と。


幸せは、ため息くらいで、逃げたりしない。 むしろ—— ちゃんと、ため息をつけたほうが、 すこし、戻ってくる氣がする。

……ため息くらい、ついても、いい。 体が、私を、休ませようとしている、だけなんだから。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

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