【小説】Lv3 24歳の勇者|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第1章 冒険への誘い 編
【これまでのお話】
Lv3 24歳の勇者
4年4組の教室の前に立ち、
僕が、あの古くて冷たい扉に手をかけ、
ガラガラと音を立てて開けたあの瞬間に、
もう始まっていたんだ。
誰も見たことのない、
僕たちの冒険が。
31年前-----
あの眩しかった
新学期の記憶が、
今も目を閉じるだけで鮮烈に、
熱量を持ったまま蘇ってくる。
あの日。 黒板いっぱいに
広がる色鮮やかな
『魔法の地図』に目を奪われ、
声を失ったまま教室の入り口で
立ち尽くしていたみんな。
僕もまた、
内履きが床に
足が縫い付けられたように、
一歩も動けなくなってしまった。
期待と不安が入り混じった
奇妙な緊張感が、
教室を満たしていく。
その時だった。
ガラガラ……。
僕たちが今さっき開けてきた
後ろの扉ではない。
教室の前方、
教壇のすぐ横にある、
もう一つの扉が静かに開いたんだ。
ゴクリ。
自分の、
唾を呑み込む音が聞こえた。
教室中の空気が、
一瞬にしてピンと張り詰める。
新しい4年4組に集まった33人の子ども
の視線が、まるで強力な磁石に
引き寄せられるように、
一斉にその一点へと集まった。
そこから一歩、
教壇へと踏み出してきた人物の姿を
見た瞬間、僕の脳内に
ある言葉が強烈に浮かんだ。
……カッコいい

第一印象は、
若い、さわやか、スマート
だった。
そして、
当時の僕たちから見れば、
まるで見上げるような長身。
どこか自信に満ち溢れた、
けれど、同時に僕たちを包み込むような
優しいオーラを纏っている。
直感だった。
まだ人生をたった10年しか生きていない、
取り柄のない僕の直感だったけど、
一瞬でわかった。
この人は、
圧倒的な『強者』だ。
そこに立っていたのは、
テレビ画面の向こう、
ロールプレイングゲームの中で
しか見たことがない、
まぎれもない『若き勇者』そのものだった。
もしも、10歳の僕のレベルが、
まだ初期ステータスの『10』だとしたら。
忘れ物ばかりで怒られて、
何をやってもダメで、
自分の人生の主人公にすらなれていない
僕のレベルがたったの『10』なのだとしたら。
目の前に立つその人は、
間違いなく、
数々の激戦を勝ち抜いてきた
『レベル99の勇者』
だった。
放つ空気の重みが、
存在の輝きが、
僕たちとは違っていた。
その勇者が、
ゆっくりと僕たち33人の顔を見渡す。
そして、巨大な黒板の地図へと視線を向け、
悪戯っぽく、最高に魅力的な笑みを浮かべた。
「やっぱり、この人だ!」
確信した。
この人こそが、
あの、どんよりとした緑色の黒板に、
息を呑むような魔法の絵を描いた人。
僕たちの退屈で窮屈だった学校という場所に、
一瞬にして眩い光を降らせた正体だったんだ。
それまでの僕にとって、
学校はただの苦行でしかなかった。
勉強もダメ、
内股で運動もダメ。
毎日プリントを失くしては怒られてばかり。
勝者を意味するブランドの服を
着ているくせに、何一つ勝てない
『だらしなキング』
それが僕だった。
今日もきっと、
そんな灰色のモノクロの世界を
耐え忍ぶために、重い足取りで
登校してきたはずだった。
それなのに。
目の前に立つレベル99の勇者を
見つめていると、
胸の奥が
ドクドクと、
バクバクと、
耳の裏まで届きそうなほどの
爆音で脈打ちを始める。
あぁ、僕は、
僕たちは…
この人と一緒に......
「あの地図の向こうへ
大冒険に出るんだ」
抑えようとしても、
どうしてもワクワクしてしまう。
諦めていたモノクロの世界が、
この人の存在によって、
信じられないスピードで
鮮やかに彩られていく。
『勇者』は、
ゆっくりと教壇の真ん中に立った。
運命の歯車が、
大きな音を立てて回り出す。
その若き勇者の名は――。
『やまのべ よしき』
24歳の若者だ。
僕たちを、
誰も見たことのない、
誰も教えてくれなかった
本当の冒険へと連れていく、
『現実世界の勇者』
そして、
これから始まる僕の人生の、
もう一人の主人公だ。
ここから、
僕たちの刺激的な毎日が、
本当の幕を開ける。
退屈な授業もお説教も、
ここにはもう存在しない。
期待を遥かに超える、
予測不能で壮大な物語に、
33人の子どもたちが一瞬で魅了され、
巻き込まれていくことになる。
僕たちのパーティーに、
今、『最強の勇者』が加わったんだ。
勇者の最初の話を聞け!
Lv3:現実世界の勇者 完 / Lv4へ続く
