スピード感がどうなのかなって感じ?:読書録「21世紀を動かす思想」
・21世紀を動かす思想 加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピング
著者:樋口恭介
出版:集英社新書(Kindle版)

XかなにかのSNSで「今の哲学」として紹介されているのを見かけて手に取った一冊。
読んでみると、実に今っぽい内容でしたw。
(ChatGPT)
作品について
SF作家、コンサルタント、東京大学大学院客員准教授という複数の肩書を持つ著者が、生成AIや巨大テック企業の台頭によって「社会が技術に引っ張られすぎ」ている2020年代の状況を踏まえ、“未来予測”ではなく”未来学”――つまり未来を構想し設計する思考――が必要だと説く本です。
扱うのは、現在影響力を増している3つの思想・方法論です。
∙ 加速主義(とくに効果的加速主義 e/acc、防衛的加速主義 d/acc)
∙ プルラリティ(多元性にもとづく協働のための技術思想)
∙ SFプロトタイピング(物語で未来を試作し、問い直す手法)
これらを通覧・統合して「使える形」にすること――未来を創るための羅針盤として位置づけられた一冊です。

AIを中心とした技術が猛烈なスピードで進化し続ける中で、どのように未来を構想するかという視点から書かれています。
まず加速主義の説明が丁寧で、効果的加速主義・防衛的加速主義という考え方をきちんと整理してくれているのがありがたかった。
漠然とは知っていた概念ですが、こうして体系立てて説明されると理解がぐっと深まります。
続いて、その加速主義の技術的な偏りを補完する形でプルラリティ(多元性)が導入され、さらにSFプロトタイピングを中心とした未来学の可能性へと議論が展開していく構成も、流れとして腑に落ちました。
加速主義の面白さと危険性をプルラリティの考え方で緩和しながら、望ましい未来をどう構想していくかを考える、という大きな枠組みかな。
未来学の手法についても興味深かったです。
多様なアプローチや視点があって、実践するのは簡単ではないと感じる一方、AIをうまく活用することでより具体的に取り組みやすくなる可能性もあるのかな、とも思ったりして。
プルラリティも然りで、多元的な発想を技術でサポートすることで、より実効性のある未来設計ができるようになっていくのかもしれません。
一番気になるのは、やはりスピードの問題ですかねぇ。
Anthropicのダリオ・アモディなんかは防御的加速主義のスタンスだと思うんですが、そのアモディでさえAIの安全性について再検討を迫られているほど、今の技術の進展は速い。
(もっとも、アモディは思想的な信念が強い人物ですから、その目的のためなら多少のリスクも許容する姿勢があるようにも見えますし、権威主義的な覇権国家に対する強い危機感も動機の一部にある。
だから純粋に「防衛的加速主義者」と呼んでいいかどうか、微妙なところもあるんだけど)
未来学の手法を使って未来を想像する
その時間があるのか
その間にも事態は動いて行ってしまうのではないか
加速主義はそんなリスクをも突きつけてきます。
そこに有効な「答え」が未だ見出せないことが1番のリスクなのかもしれません。
とはいえ、今まさに起きていることの背後にある思想を整理する本として、本書は非常に分かりやすく、読み応えがありました。
現実との追いかけっこがどうなるか――それが最大の課題であり、一番気になるところじゃないですかね。
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