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親が倒れたら最初にやること|入院直後の72時間で家族が動く順番と、今はまだやらなくていいこと【元介護士10年】

「お父さんが倒れて、救急車で運ばれた」

その一報を受けた瞬間、頭が真っ白になって、何をどの順番でやればいいのか分からなくなる。病院に向かう車の中で、あるいは待合室で、この記事を開いている方もいるかもしれません。

まず、これだけ先にお伝えします。
今あなたがパニックになっているのは、気が動転しているからでも、頼りない人間だからでもありません。初めてのことで、手順を知らないだけです。順番さえ分かれば人は動けます。

元介護士として現場に10年いた立場から、親が倒れた直後に家族がやるべきことを、落ち着いて動ける順番に整理します。

まず知ってほしい、家族の「本当の役割」

倒れた直後、多くの人が「自分が何とかしなければ」と気を張ります。
でも、急性期にいちばん大事なことを先に言います。

治療は、あなたの仕事ではありません。

命に関わる処置も、検査も、方針の決定も、それは医師と病院の仕事です。家族がここで無理に何かを判断しようとすると、かえって消耗します。

では家族の役割は何かというと、「情報の窓口になること」です。
医師からの説明を受け取り、必要な情報を渡し、親族に共有する。この窓口役に徹するだけで、急性期のやるべきことの半分は片づきます。

そのためにまず決めてほしいのが、キーパーソンを1人に絞ることです。
病院は基本的に「誰か1人の連絡先」を求めます。きょうだいが複数いても、最初の窓口は1人。これを決めておくだけで、情報の行き違いや「聞いてない」の火種を防げます。

入院直後にやること(この順番で動く)

窓口役として、最初の数日でやることは大きく3つです。

1. 親の基本情報をかき集める

病院から必ず聞かれるのが、親の情報です。
かかりつけの病院、飲んでいる薬(お薬手帳)、持病、アレルギー、保険証や医療証のありか。ここで慌てないために、実家の「いつもの場所」を思い出しながら集めます。お薬手帳が見つからない場合は、かかりつけ薬局に電話すれば内容を確認できることが多いです。

補足:マイナ保険証がある場合
マイナ保険証で「薬剤情報・診療情報の閲覧」に同意すれば、薬の内容も、普段かかっている医療機関も、医療者側で確認できます。
ただし元になるデータは翌月11日以降の更新のため、直近の処方変更が反映されていないことがあります。またカード自体が手元にない場面もあります。お薬手帳やかかりつけの病院の情報は「必須」ではなく、直近の差分を埋める補完と考えてください。

2. きょうだい・親族へ第一報を入れる

ここは事務連絡のようでいて、後々いちばん揉めるポイントでもあります。ポイントは、「今わかっている事実だけ」を淡々と共有すること。憶測や不安をそのまま流すと、離れて住む親族ほど動揺し、話がこじれます。事実だけを、同じ内容で、全員に。この段階での丁寧な共有が、後の役割分担の土台になります。

伝える中身は、「いつ・どこで・どうなって・今どういう状態か・どの病院にいるか」の5点で十分です。まだ分からないことは「分かり次第また連絡する」と添えればいい。むしろこの段階で「今後どうする」「施設は」といった先の相談まで持ち出すと、事実と憶測が混ざって全員が混乱します。第一報はあくまで事実の共有に徹し、話し合いは急性期を越えて落ち着いてから。この順番を守るだけで、後の家族間のこじれはかなり防げます。

3. 病院の「医療ソーシャルワーカー」の存在を知っておく

これは意外と知られていませんが、多くの病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)という相談専門の職員がいます。退院後の生活、使える制度、転院や施設の相談まで、家族側に立って一緒に考えてくれる存在です。「これからどうすれば」と不安になったら、まずこの人に相談できる、と知っているだけで心の余裕がまったく変わります。担当がつくタイミングは病院によりますが、相談窓口の場所を早めに確認しておくといいでしょう。

「入院費、どうしよう」と思ったら

急性期に、多くの人が口には出せずに抱える不安があります。お金です。

「入院費や治療費が、いったいいくらかかるのか」。

これが見えないことが、混乱をさらに大きくします。

ここで覚えておいてほしいのは、日本には医療費の自己負担に上限を設ける仕組みがあるということです。ひと月にかかる医療費が一定額を超えた分は、あとで戻ってくる、あるいは最初から上限までの支払いで済ませられる制度があります。

制度の細かい条件や手続きは、ここで無理に覚える必要はありません。大事なのは、「青天井で際限なくかかるわけではない」と知っておくことです。この一点だけで、急性期の不安はかなり軽くなります。具体的な手続きは、先ほどの医療ソーシャルワーカー(MSW)に聞けば、その病院での動き方を教えてくれます。お金の心配は、一人で抱えず、専門の窓口に投げていい種類の不安です。

「今はまだやらなくていいこと」もある

焦っている人ほど、今日やる必要のないことまで一気にやろうとして、力尽きます。急性期の段階では、次のことは「まだ」で大丈夫です。

・施設探し
退院の見通しも立たないうちから施設を探し始める必要はありません。方針が見えてからで十分間に合います。

要介護認定の申請
「介護保険を使うには要介護認定が必要」という言葉だけは覚えておいてください。ただし申請のベストタイミングは、退院後の生活が見えてきてからです。申請から認定までは原則としてひと月ほどかかりますが、急いで今日動くものではありません。

「やること」と同じくらい、「今はやらなくていいこと」を知っておくと、消耗を防げます。

いちばん大事なのは、一人で抱え込まないこと

最後にこれだけは覚えて帰ってください。

親が倒れた直後の混乱は、あなたの能力の問題ではなく、「初めて・情報不足・時間切迫」という条件が重なった構造の問題です。この条件は、手順を知り、人に頼ることでほぐれていきます。

現場で数えきれないほどの家族を見てきて確信しているのは、最初の数日を一人で抱え込んだ人ほど、後で消耗しきってしまうということです。窓口役は1人でも、実務は分け合っていい。むしろ、分け合う前提で最初の共有をしておくことが、この先の介護を長く続けるための土台になります。

急性期を越えると、次に待っているのは「退院までの動き方」と「退院後の生活の組み立て」です。ここからの1か月は、やるべきことが時系列で決まっています。その30日分の具体的な手順は、別の記事にまとめてあります。今まさに渦中にいる方は、落ち着いたタイミングで、続けて目を通してみてください。


▼ この続き:退院までと、退院後30日の具体的な手順はこちら

「親の介護が始まったら最初の30日でやるべき7つのこと(30日ガイド)」


▼ まだ介護が始まっていない方・全体像を知りたい方はこちら

「親が倒れる前に読んでほしい|元介護士10年が整理した『介護の備え』入口ガイド」

▼ 合わせて読みたい

急性期を越えて、介護保険の手続きに進む段階になったらこちらもどうぞ。

「要介護認定の流れと日数|申請から認定まで実際は何日?」


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