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日本人初? ブラジル警察を取材してきた話①


迷彩服、迷彩車輌、デカい銃。

一見すると、軍隊の写真にしか見えない。
しかし、これらの写真はいずれもブラジルの法執行機関(Law Enforcement, 警察etc.)のものだ。

2025年、私は日系ブラジル人の旧友とともにブラジルを訪れた。

キリスト像で有名なリオデジャネイロ
世界三大瀑布のひとつ、イグアスの滝
麻薬組織が支配するロシーニャ ファベーラ(スラム)

友人はブラジルにも数年住んでいたことがあり、現在は日本で通訳の仕事もしている。

なので、せっかくなら普通の観光者では行くことのない場所を含めた、行ける範囲のブラジルの表裏両方を行ってみようということになり、定番観光地から地元の人が行く場所、地元の人が近づかない場所、ファベーラ(スラム)等いろいろ訪れた。

あらゆる部分でサポートしてくれた友人とそのご家族、そのまた友人たちには、この場を借りて感謝申し上げたい。

さて、今回は『LE装備』の解説ブログとして、この旅の道中で取材やインタビューに応じてくれた、軍警察や関連組織にフォーカスを当てて話したい。



取材経緯など

私がブラジルの警察を取材した経緯も説明しておきたい。

私はアメリカ最大の捜査機関であるFBIの装備品を収集・研究するコレクターで、これまでにも当ブログでFBI関連の記事を掲載したり、元FBI SWAT隊員へのインタビューを行ったりしてきた。

FBI SWAT装備を着ている筆者

なので、当然、ブラジルに行くなら現地の法執行機関も見てみたいとなる。

……というより、「ブラジルまで行くのに、現地の警察を見ずに帰るのはもったいない」という、かなり単純な発想だった。

せっかく“専属通訳”の友人もおり、彼もやれることは全部やろうぜと言ってくれたのが大変ありがたかった。

現地のバイク強盗のニュース

ブラジルの法執行機関について語るうえで、避けて通れないのが治安の問題だ。

自分たちがブラジルへ行く前には、メインの滞在地となるサンパウロで、日本人観光者が強盗(バンジード)に殺害される事件が起きている。

友人もサンパウロに住んでいた時期に拳銃を突きつけられ、スマホを盗まれたことがあるし、今回の旅で我々も強盗に遭うかと思ったヒヤリな瞬間があった。

ちなみに基本的な防犯対策を行い、夜は出歩かず、私が行ったような危険地帯にむやみに近寄らなければ、安全に観光できる。そこまでビビる必要はないし、ほとんどの人は真っ当で優しく、間違いなく楽しい国だ。

滞在中、近所の教会前でも罰当たりな強盗事件が起きていた
とある方が正当なライセンスにて所有していた銃
次ブラジルへ行くときはFALとUZIも見せてくれるとのこと
一見ただの交差点だが、有名な強盗多発エリア
「バットマンはいないけど、ジョーカーなら100人いる」

日本に住んでいる私たちからすれば非日常そのものだが、現地では、それが決して遠い世界の出来事ではない。

そんな環境が、ブラジルの警察官たちの日常なのだ。

治安の悪さに加えて、ブラジルでは一部の警察官による汚職も問題となっている。

そのため、市民の中には警察そのものを信用していなかったり、警察官に対して悪い印象を持っていたりする人もいるという。

真面目に働いている警察官たちからすれば、一部の人間の行為によって、自分たちが命を懸けて守ろうとしている市民から悪く思われてしまうことは不愉快だろう。

だからこそ、私のような外国人が、わざわざ日本からやってきて自分たちの仕事に興味を持って声をかけてきたことに、インタビューに応じてくれた方々は喜んでくれた。

そして彼らは口を揃えて、「こうしたブラジルの現状を、日本の人たちにも伝えてほしい」と話してくれた。

私自身、彼らの話を聞く中で、日本からニュースを見ているだけでは決して分からないものがあると感じた。

そんな経験が、今回この記事を書くきっかけになった。


ブラジルの警察について

ブラジルは、日本とは異なる「連邦制」の国家だ。国全体の政府とは別に、各州にも大きな自治権があり、警察制度も州ごとに異なる。

日本では、全国共通の法律と制度のもとで都道府県警察が活動している。一方、ブラジルでは国・州・自治体それぞれのレベルに法執行機関が存在し、さらに仕事内容によっても組織が分かれている

そのため、「ブラジルの警察」と一括りにすることは実際には難しい。

ここで全てを説明するとかえって分かりにくくなるので、細かな制度については一旦置いておきたい。
本記事では、私が実際に現地で見かけたり、取材・インタビューすることができた法執行機関を中心に紹介していくが、実際に見てもらうほうが早いだろう。


軍警察 - Polícia Militar(PM)

コルコバードの丘で警備してたアニキ、快く撮らせてくれた

軍警察は超ざっくり言えば、州政府に属し、主な仕事はパトロール、緊急対応、犯罪者の制圧・逮捕、交通取締りなど、初動対応などを担う制服警察だ。

「軍」と付いているが軍隊ではない。国軍ではなく、基本的には州の法執行機関である。
ただし、軍隊に似た階級・組織・規律を持っており、その名に相応しい武装もしている。

また、州ごとに別組織となっているのも特徴だ。
サンパウロ州軍警察とリオデジャネイロ州軍警察は、同じ「軍警察」でも別の組織。ある州の軍警察官が別の州へ移る場合も、日本の警察官のような単純な「異動」ではなく、基本的には別組織への転職・再採用に近い。

私が滞在したサンパウロの都市部では、ほとんど日本の警察官と同じような感覚で街中にいた。

都市部では至る所で警備しているので、安心感が大きい
オシャレな交番(サンパウロ)

サンパウロ州軍警察(PMSP)

こちらはサンパウロでの散策を開始して早速出会ったサンパウロ州軍警察のお二人。ゴリゴリにタトゥーも入ってるし、婦警さんのほうも強そう。

ファベーラ(スラム)へ行くことを話し、何か気をつけたほうがいいことはあるか聞いたが、「あんなとこ行くの? とにかく気をつけるしかない!」くらいのことを言われた。

友人が言うには、「たぶん俺らより年下」とのことで色々切なくなった…

写真のようにあちこちで街頭警備しており、本当にただそこに立って存在してくれているだけで、少なくとも都市部で日中に強盗にあうようなことは少ないだろうという安心感があった。

パトカーもちょっと都会的なデザイン

サンパウロの軍警察は、基本的にグレーを基調とする装備を使用していた。

サンパウロは、日本でいうところの東京のような大都市であり、街中にいても違和感・威圧感のない色合いとして選定されたとみられる。

ブラジルのコップショップにて(そういう所も行った)

リオデジャネイロ州軍警察(PMERJ)

左下に広がる暗いエリアはファベーラ、
右側の明るいエリアはリゾート地

カーニバル等で有名なブラジルといえばな観光地、リオデジャネイロ。ビーチ沿いは華やかなリゾート地帯である一方、最恐に治安が悪いことでも知られている。

この地域のギャングはドローンや近代的カスタムのライフル等を持っていたりと重武装で、本当に「戦争・内戦」レベルの警察との激しい戦闘が起きることもある。

「今日もリオで生まれなかったことを神に感謝する」こういうブラックジョークもあるほどだ。

パトカーはサンパウロと異なり、ブルーを基調としたデザインで、トヨタ カローラ等のタイプもあった。
全体的にどの車輌もボロいというか使い込んでいる感があり、あまり綺麗ではなかった。

装備スタイルは、黒をベースに威圧感がある見た目で、写真を撮り損ねたがライフルを持っている方もいた。
サンパウロの軍警では、車に一応ライフルやショットガンも積んでいると聞いていたが、さすがに街頭警備で持っているのは見なかったので、治安の悪さが装備から垣間見えた。

今思うとゴキゲンな格好でスラムを歩いててバカすぎる

写真を撮らせてくれたのは、麻薬組織コマンド・ヴェルメーリョ(CV)支配下のファベーラ(スラム)「ロシーニャ」を、頂上から歩いて下り、その出口近辺にいた軍警察のアニキたち。

ほぼ安全だったとはいえ、ロシーニャは麻薬組織の影響力が強く、警察すら近寄らない場所だったので、「うおー!軍警がいるー!無事に出てこれた!」と思った。

色々話を聞くと、リオは警官の汚職等も多く、真面目に働いてる自分たちまでとばっちりを受けることがあるのは正直辛いと話していた。
「でも、もっと本音を言うと、早く家に帰りてえよ」と言っていて、皆仕事中に思うことは同じだよなと思った。

右のアニキが私の活動やインタビューに喜んでくれて、インスタで連絡先交換しようと言ってくれたので、今でもたまにIMBEL製M964(FALの派生型)を手にパトロールへ行く投稿を見たりしている。

2025年10月に起きた衝突の際にも安否確認で連絡したが、無事ではあったものの「まさにアルカイダとの衝突、アメリカの戦争映画みたいだったよ」と言っていた。

ちなみに、そんなリオデジャネイロの軍警察には、世界的に有名な対麻薬テロリストの最強部隊「BOPE(ボッピ)」がいる。

リオデジャネイロ州各地のファベーラで、銃撃戦必至とも言える、超危険度の高い作戦にあたっている。

先ほどのアニキの友人が、BOPEのスナイパーらしいが「あんな過酷な訓練を通過できるのも異常だし、ろくな装備も持たずに迷路みたいなファベーラを駆け抜けて行けるのも狂ってる」と言っていた。

本当は取材をしたいと思っていたが、パイプが友人含めて一切なかったのと、スケジュール的に難しかったため、今回は取材できなかった。
またリオへ行く機会があれば、アニキが会えるか聞いてみてくれるとのことで、いつかの楽しみにしておく。


文民警察 - Polícia Civil

セー大聖堂に突然現れた文民警察のパトカー

文民警察は、まさに日本とブラジルの警察組織の違いの分かりやすい例と言える。州レベルに置かれている警察組織で、主に犯罪捜査を担当する。

街頭でのパトロールや治安維持を担う軍警察に対し、文民警察は事件が発生した後の捜査、証拠収集、事情聴取、容疑者の特定・逮捕などを行う、いわば「捜査を担当する警察」という位置づけだ。

日本なら「警察」という組織の中にいる「刑事」が、ブラジルでは州レベルの別組織として存在しているようなイメージだ。

皆さんは街中で“刑事”を見たことがあるだろうか?
ほとんどの人がないだろうが、ブラジルでも同様で、文民警察は滅多に見かけないとのこと。

サンパウロ観光初日にセー大聖堂に行ったら、ジーパンにTシャツ、黒の防弾ベストを着た、制服でないあたりがいかにも捜査官な文民警察の二人組がパトカーから降りて、どこかへ向かっていくのを目にした。

ただ、そんなレアキャラとも知らず、さすがに仕事中なので声をかけたりはできなかった。

リオデジャネイロの文民警察のパトカー

パトカーくらいしか写真を撮れなかった。


市民警察 - Guarda Civil Metropolitana(GCM)

GCMは、各都市が設置する自治体レベルの法執行機関だ。

軍警察(Polícia Militar)が州レベルで街頭の治安維持を担い、文民警察(Polícia Civil)が犯罪捜査を担当するのに対し、GCMは市の施設や公共空間の警備、パトロール、地域の治安維持などを主な任務としている。

日本でいうと、警察とは少し性格が異なるものの、市役所などの自治体が持つ治安部門に近いイメージだ。

なお、ブラジルのGCMは自治体ごとに設置されるため、サンパウロ市のGCMと他都市のGCMは別々の組織であり、制服や装備、運用などにも違いがある。

GCM-SP(サンパウロ市 市民警察)

最初の写真の御三方は、サンパウロの名所のひとつ「セー大聖堂」で街頭警備をしていた。

セー大聖堂

名前の通り地域密着型の法執行機関なだけあって、セー大聖堂や街の歴史についてツアーガイド並みに話してくれた。
ぶっちゃけもっと仕事や治安に関する話も聞きたかったが、めちゃくちゃ丁寧に解説してくれるので、聞く余裕がなかった…

社会勉強としてクラコランジア(麻薬街)がどんなものか観に行こうと思っていたが、「あんなの観て何が面白いの?危ねーからやめとけ」と言われたので、行くのは辞めておいた。(正確にはスケジュール的に行けなかった)

ちなみに、このセー大聖堂前は軍警察もいたので、文民警察、市民警察すべてが偶然にも集結していた。

全部が別組織

観光名所なのに異様に警官が多くいたが、それもそのはず、周囲には驚くくらいホームレスがたくさんいた。

日本で例えるなら浅草寺にホームレスがたくさんいるようなもので、カルチャーショックを受けた瞬間だった。

偏見ではないが、事実として失うものがない人たちなので、やはりこういう場では警官が“ただ立っている”だけでも十分に危険な事態の抑止力になる。

話をGCMに戻すと、パトカーはシトロエンで、パトカーも組織ごとに違うので、注目して見ると本当に面白い。

LE(警察)装備オタクとして、装備も見せて欲しいと頼んだら、「たくさん写真撮ってくれ」とのことで、もちろんたくさん撮らせてもらった。

紋章の入ったベルトやランヤードのほか、止血帯や予備のマガジン等も携行していた。

こうした装備からは、その地域で想定されている“一番危ない状況”が見えてくる。

ホルスターはロック機構があるタイプで、ランヤードまで着いていることから、銃を奪いに来る輩がいる可能性があるということだ。
止血帯は銃やナイフで怪我を負う状況、予備のマガジンはたくさん発砲する状況(銃撃戦)、こういう想定をしているのが推測できる。

リオの軍警察なら、これらに加えてライフル用のマガジンポーチも携えていたので、さらに激しい銃撃戦を想定しているわけだ。

 

さて、GCMの方々と話した大聖堂のある「セー」というエリアは繁華街で、日中は大勢の人がいるものの、夕方には一斉に店が閉まりだし、友人も暗くなる前には離れたほうがいいエリアだと言っていた。

実際、行った人にしかわからない独特な空気感があった。
例えるなら、新宿で17時頃に店が一斉に閉まって、静まり返っているのを想像してみてほしい。何とも言えないザワザワ感を感じるだろう。

そんな不穏な空気感のなか、駅に向かって歩いていたところ、こんな場面に遭遇した。

GCM-SP IAMO(オートバイ活動監察部隊)

IAMO(Inspetoria de Ações com Motocicletas)は、サンパウロ市のGCM-SPに所属するオートバイ専門部隊だ。

二輪車を使用した警らを行うほか、他のGCM部隊への支援や要人警護・エスコートなども担当している。

GCMの中でも特徴的な部隊のひとつで、専用のバイクや装備が用意されている。

サンパウロの観光名所「イビラプエラ公園」で警備をしていたところを取材させていただいた。

いわゆる“白バイ”のベースは、ホンダがブラジルで設計・製造するXRE300だ。

「せっかくなら遊んでく?サイレンとか鳴らしていいよ」とのことで、恥ずかしげもなく子供みたいに大勢がいる公園で色々音を鳴らして遊ばせてもらった。

装備の基本構成は他のGCMと同じだが、テーザーガンを持っていたり、LE装備オタクなら見逃さない「モトローラ」の無線機等を携行していた。

イビラプエラ公園
“銃や刃物の持ち込み禁止”
日本では見ることのない公園の注意書き

イビラプエラ公園については、友人いわく「自分がこっちに住んでた頃はヤクの売人がいたり、夜はゲイがヤッてるような場所だったけど、正直綺麗になりすぎてて驚いた」とのことで、IAMOの人に何があったのか聞いていた。

数年前から推し進められている街の浄化作戦の一環で、このあたりのそういう連中は追い出したのだそう。

街の警官の多さなど含めて、サンパウロでは治安を良くするための作戦がきちんと成果を上げていることが友人を通してわかった瞬間だった。

カンポス・ド・ジョルドン GCM

軽井沢の姉妹都市で、ブラジルにも関わらず、ドイツ風建築の建物が立ち並ぶ別荘地「カンポス・ド・ジョルドン」のGCM。

写真はパトカーしか残していないが、こちらはフォルクスワーゲンだ。

この地域はところどころにセキュリティゲートがあり、そもそも犯罪をしないと生きられない層は近寄ることもできない。治安の最も良いエリアのため、パトカーも非常に綺麗だ。

友人「差別とかじゃないけど、さっきから本当に黒人を一人も見かけない。金持ちそうな白人しかいないね。」


まとめ

ご覧いただいた通り、今回は、大きく分けて3種類の法執行機関を紹介した。

それぞれ管轄や任務が異なる別々の組織であり、使用している車輌や装備にも、それぞれの役割や地域性が表れている。

今回紹介したのは、私が実際に現地で見たり、話を聞いたりすることができた組織のほんの一部だ。ブラジルには、このほかにも国・州・自治体それぞれのレベルに、さらに多くの法執行機関が存在する。

こうして実際に現地を歩き、警察官たちと話をしてみると、日本からニュースや写真だけを見ているだけでは分からない、ブラジルの警察と治安の「リアル」が少しずつ見えてきた。

日本から見れば地球の反対側にあり、治安事情も大きく異なるブラジル。そこで今も、彼らは日々の治安維持に努めている。

この記事を通じて、そんな彼らの仕事や姿を少しでも知ってもらうことができれば、そして、彼らの努力がほんの僅かでも報われるきっかけになれば幸いだ。

そして、ここからが今回の旅で最も印象に残った取材のひとつだ。

次回は、実際に軍警察の精鋭部隊の基地へ潜入取材した際のレポートを公開する。


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【オマケのトピック】
・警察の戦術装備品について
・採用されている銃器について

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