「私はキャストを搾取しているのでは」と不安なお客様へ【後編】――“きれいな利用”と“搾取に近づく利用”のあいだ
はじめに
前回の対談では、「私はキャストを搾取しているのでは」と不安に感じているお客様へ向けて、レズっ娘グループで働くキャストたちが、性的搾取という言葉をどう受け止めているのか、そしてお客様との関係をどう感じているのかを話しました。
この記事は、前回に引き続き、性風俗業界全体を代表して語るものではありません。また、搾取的な環境にある人たちを否定するものではありません。
あくまでも、当グループをご利用いただくお客様、特に「自分はキャストを搾取しているのではないか」と不安に感じているお客様へ向けて、当グループで働くキャストたちの実感と、当グループとしての考えをお伝えするものです。
キャストアンケートを実施しました
前回の対談を受けて、グループ全体でキャストアンケートを行いました。
アンケートでは、現在、お店やお客様との関係、またプライベートな関係性の中で「搾取されている」と感じることがあるか。また過去に「今思えば、搾取に近い状態だったのではないか」と感じる経験があったか。そして、「搾取に近い」と感じる行為にはどのようなものがあるかを聞きました。
今回募ったキャストアンケートで回答があった範囲では、現在、お店やお客様、プライベートな関係性などの中で「搾取されている」と感じているという声はありませんでした。
“きれいな利用”と“搾取に近づく利用”のあいだ
では、どこからが“搾取”に近づくのでしょうか。
どのような利用のあり方が、キャストにとってしんどさや負担、危うさにつながっていくのでしょうか。
後編では、前編の対談でまこさん、ひなたさんのお二人から出たことばと、その後に行ったキャストアンケートの回答を踏まえながら、ティアラ大阪店在籍キャストのゆうさんも交えて、前回挙がった“きれいな利用”と“搾取に近づく利用”のあいだにあるものを、より具体的に考えていきます。
実際にお客様から「私、搾取していませんか」と聞かれたことがある
アンケートの中で、ゆうさんは、前回のまこさんとひなたさんの対談のなかで語られていた「自分はキャストを搾取しているのでは」と不安になるお客様の存在について、実際のご案内中にも似たような話をしたことがあると答えてくれました。
ゆう:「(対談やアンケートについて)すごくいい機会だったと思います。
忘れていたかもしれないけど、意外とそうだったとか、気づくこともありました。改めてお仕事について考えさせられました。
あと、私は以前、お客様とこの件について話し合いをしたことがあります。お客様自身が心配になって、『自分は搾取していないだろうか?』という質問をいただいたことがあります。
その時も、私は私が素直に思うことをちゃんと話して、そのお客様も安心してくださいました。
自分がどんな気持ちで働いているのか、何のために働いているのかがある程度伝われば、安心してくれるんだと気づいた出来事でした。」
さらに、ゆうさんは、そのときのお客様とのやりとりについて、こう話してくれました。
ゆう:「お客様のほうから、『今から真剣な話をするけど、ちょっと聞いてね』という感じで、その点について一緒に話し合いました。
その方は、細かいことにも繊細に気を配っていただけるお客様で、『自分はいいお客様としてキャストを迎え入れられているのか』『ちゃんと会いに来れているのか』ということを、とても心配される方でした。
その流れで、搾取ということについても『もしかしたら自分は、そういうことをしてしまっているのではないか』という話になりました。
私は、本当にそんなことは全然感じないよ、とお伝えしました。実際にそう思っていたので、そのままお客様にお伝えして、納得というか、安心してもらえた感じでした。」
『自分はキャストを搾取しているのではないか』
それは、ゆうさんがご案内中におひとりのお客様から直接受け取った不安だけでなく、実際に当グループのレズ風俗ホットラインをはじめ、お客様アンケートや事前のお問い合わせなどでも、よく寄せられるご相談です。
その不安は、キャストを一人の人として見ているからこそ生まれるものでもあります。
だからこそ、キャスト自身がどう感じているのか。そして、どこからが負担になるのかを言葉にすることには、意味があるのだと思います。
搾取に近づくのは、キャストの意思や選択肢が奪われるとき
一方で、過去にご案内したお客様との関係については「今思えば、搾取に近い状態だったのではないか」と感じる声もありました。
では、キャストたちは、どのような状態を「搾取に近い」と感じるのでしょうか。
以下は、今回のアンケートで寄せられた回答をもとに、キャストの意思や安全、尊厳が軽視されやすい行為を、当グループで分類・整理したものです。
1.サービス範囲を超えた要求・コース外の要求
デートコースで予約しているにもかかわらず、ウェルネスに近い行為を求められる。
事前に決められたサービス範囲を超える要求を、繰り返し受ける。
特殊なプレイや事前確認が必要な行為を、その場で求められる。
「お金を払っているのだから、店のルール外の要求にも応えるべき」といった態度を取られる。
2.断っていることを繰り返し求める・ゴリ押しする
キャストが「やめてほしい」と伝えたことを、やめてもらえない。
複数回断っているにもかかわらず、執拗に要求を続けられる。
断りづらい空気をつくられたり、嫌だと伝えたことを軽視されたりする。
キャストが断ることに疲弊し、最終的に了承することを狙うような、いわゆる「ゴリ押し」をされる。
お客様自身の願望や希望を、一方的に押しつけられる。
3.料金・対価をめぐる不誠実な行為
予約確定後に、料金やホテル代、その他必要な費用の支払いを嫌がる、または支払わない。
「満足できなかったのだから、料金外・ルール外の要求にも応えるべき」といった態度を取られる。
対価を支払う立場であることを理由に、キャストを何でも応える存在のように扱う。
4.個人情報・プライベートへの侵害
個人的な連絡先を交換しようとする。
住所や本業の勤務先、最寄り駅、利用路線、乗換回数などを聞き出そうとする。
キャストが断っているにもかかわらず、個人情報を執拗に聞こうとする。
店を通さず、プライベートで会うことを求める。
ご案内時間外にも連絡や対応を求め、キャストの私生活に踏み込もうとする。
キャストの持ち物に、了承なく触れる。
スマートフォンや財布など、個人情報が含まれるものをのぞき見ようとする。
5.恋愛感情・依存・罪悪感を利用した圧力
本気の恋愛関係を求め、キャストに恋人のような役割を担わせようとする。
「店の外で会ってくれないなんてひどい」など、ルールを守るキャストに罪悪感を抱かせようとする。
自身の心身の状態についてキャストに責任を負わせるような発言をする。
キャストのやさしさや配慮を恋愛感情や個人的な好意と決めつけ、関係の境界線を越えようとする。
6.尊厳を傷つける言動・見下す態度
キャストを見下すような態度を取る。
キャストを一人の人間としてではなく、金銭を支払えば何でも応える存在のように扱う。
合意されたプレイの範囲を超えて、キャストの尊厳を傷つけるような言動をする。
怒鳴る、暴言を浴びせる。
人格を否定するような発言をする。
7.安全・体調・精神的負担を軽視する行為
キャストの意思やNGを尊重しない。
キャストの安全や体調、精神的な負担よりも、自分の満足を優先する。
キャストが「帰りたい」「やめてほしい」と示した意思を軽視する。
ご案内終了後も帰ろうとせず、対応を続けさせようとする。
キャストが不安や負担を感じているにもかかわらず、対応を続けるよう求める。
過剰に飲酒を強要する。
8.撮影・脅迫・重大な権利侵害
盗撮や隠し撮りをする。
景色やホテルの室内を撮影するふりをして、キャストを無断で撮影する。
不正に取得したキャストの個人情報などを利用して、キャストを脅す。
キャスト側に故意に不正行為やルール違反を促したり、「店にはナイショで」等と、キャストを共犯関係に巻き込もうとする。
キャストの安全や社会生活を脅かす行為をする。
今回実施したキャストアンケートの回答を見ると、キャストたちが「搾取に近い」と感じる行為には、いくつかの共通点がありました。
何をもって搾取と感じるかは、人によって受け止め方が違います。
ゆう:「搾取といっても一言では語れない感じですよね。搾取の受け取り方が、人によって違うというか。私は(他のキャストの回答のなかにあったものでも)搾取という認識はあまりありませんでした。仕事として受け止めていたところがあります。
お客様の不安をすべて受け止めて、時には断らないといけないということも、この仕事の一部だと思っていました。
でも、繊細なところですよね。全部を『アカン』としてしまうと、お客様にとってもすごく苦しいことになるかもしれないと思います。」
まこ:「お店のルールで認められていないことや、キャストが望まないことを求められたり、実際にその行為をするよう強要された場合は、搾取になりえるのかな 」
ひなた:「サービスを提供する立場だからこそ、お客様に満足していただきたいという気持ちはあります。でも、それと同時に、私自身も一人の人として、意思や境界線を大切にしてもらえる関係であってほしいと思っています。
私が「搾取に近い」と感じるのは、負担があることそのものではなく、自分の意思や選択肢がなくなってしまうようなときです。
もちろん、会いに来ていただけることは大歓迎ですし、お客様に満足していただきたい気持ちもあります。だけど、わたしたちキャストの安全や境界線よりも、お客様の要望に応えることを優先しなければいけないような空気になってしまうと、少し危ういのかなと思います。
決められた範囲を超えたお願いや、断りづらくなるような過度な求められ方が続いてしまうと、キャストの意思や安全が守られにくくなってしまうときが、搾取につながっちゃうんじゃないのかなって思います。」
ゆう:「道具というか、簡単に言うと、“お金を払えば何でも応える存在”みたいに見られてしまうことなのかもしれません。」
キャストに不安や寂しさを伝えること自体が問題なのではなく、キャストの意思や境界線が守られているかどうかが大切です。
やはり問題なのは「お金を払っているのだから何を求めてもいい」「キャストは仕事なのだから断ってはいけない」という考え方が前提になってしまうことです。
当グループでは、キャストの意思や境界線が軽視され、断ることや相談することが難しくなっていく関係性を、「搾取に近づく行為」と位置付けます。
キャストを一人の人として尊重しながら、ルールの範囲内で一緒に過ごすこと。
その前提があるかどうかが、とても大切なのだと思います。
わたしたちが考える“きれいな利用”とは、なにか
前回の対談で、きれいな利用ということばについても触れました。
ここでいう“きれいな利用”とは、上品に振る舞うことや、感情を出さないことではありません。重い相談をしてはいけない、悩みを話してはいけない、不安を伝えてはいけない、という意味ではありません。
むしろ、レズ風俗には、安心したからこそ涙が出る時間もあります。
誰にも話せなかったことを、やっと言葉にできる時間もあります。
また当グループでは、2020年にも、同じくキャストを対象に「お客様からやられたら嫌なこと」についてアンケートを実施しています。
・2020年キャストアンケート「お客様からやられたら嫌なこと」
個人情報やプライバシーへの踏み込み、衛生面への配慮不足、痛みを伝えてもやめない行為、NGや拒否の軽視、ルール外の要求、傷つける言動など、キャストが実際に負担を感じたことを匿名で紹介しています。
初めてのご利用では、知らずにしてしまうこともあるかもしれません。大切なのは、伝えられたことを受け止め、同じことを繰り返さないことです。
ゆう:「きれいな利用。とにかく、困らせないこと。時間内で、ルールを守って、一緒に楽しむこと。
基本的には、ルールさえ守ってくれたら、その範囲内で楽しんでもらえたらいいなという感じです。
相談にも乗りますからね。悩み事があったら全然聞くし、泣き出したりしても、それ自体が悪いわけではありません。そういう感情の持ち合いもあっていいと思っています。だからこそ、範囲内で。
あとは、そのキャスト一人ひとりの許可範囲内で遊ぶ、というのがいいんじゃないですかね。」
ひなた:「お客様も無理に自分を作らなくていいし、私たちも無理をしなくていい。そのバランスを大切にしながら、一緒に過ごせたら嬉しいです。
キャスト側が良かれと思ってしたことが、お客様にとっては苦痛になることもありますし、その逆もあると思います。もちろん、お客様に悪気がないことも多いと思っています。
だからこそ、一方だけが我慢するのではなく、「それはちょっと苦手かも」「こうしてもらえると嬉しい」と、お互いに伝え合えることが大切なのではないかなと思います。そういう積み重ねが、「きれいな利用」につながるのではないかなと思っています。 」
大切なのは、感情が出たときに、どちらか一方が背負い続ける関係にならないことです。
お客様が安心して気持ちを話せること。
キャストも、無理なことは無理だと言えること。
お店のルールを守ったうえで、必要なときには対話しながら、お互いの境界線を確認できること。
ここでは、お客様とキャストの双方が安心していられる関係性を、“きれいな利用”と考えます。
感情をなくすことではなく、感情が出たときにも、ルールと境界線を大切に守りながら一緒に安心安全に過ごせること。そうした関係性が、“きれいな利用”につながっていくのだと思います。
お店やルールの存在は、キャストだけでなくお客様も守っている
お店のルールや運営の存在は、キャストだけを守るためにあるのではない、ということです。
ゆう:「バックボーンとしてこう、御坊さんとかお店の存在や、お店の規約やルールがあるからこそ、こうやって安心してお客様とお話とかできますし。」
まこ:「お客様にとっても同じだと思っています。
いい意味でっていうか、キャストがルール破らないのもお店があるからやし、お客様がルール破らないのはお店があるからやしみたいな。そこはイーブンな関係で良いことやなと思っています、私は。
お客様もお店に守られてるし。キャストもお店に守られてるしっていうか。
ルールって、キャストだけを守るためのものだと思われたくなくて。お客様やスタッフも含めて、みんなの安心や安全を守るためにあるんだと伝えたいです。」
ひなた:「守られてるっていうのは大事ですよね。」
当店では、お客様もまた不安を抱えて来られることがあります。
初めて女性に触れる不安。自分のセクシュアリティへの迷い。自分がしていることは悪いことではないかという罪悪感。キャストにどう思われているのかという緊張。
その不安の中で、ルールがあること。予約の仕組みがあること。相談できるスタッフがいること。キャストにもお客様にも、断る権利があること。
それは、お客様を疑うためではなく、安心して出会うための仕組みです。
最後に――“きれいな利用”と“搾取的な利用”のあいだ
レズ風俗を利用すること、キャストを指名すること自体は、搾取ではありません。
お金を払ってキャストに逢いに行くこと。
性的なサービスを受けること。
話を聞いてもらったり、癒やされたりすること。
そのこと自体が、キャストを傷つけているわけではありません。
当グループの考える、きれいな利用とは
“きれいな利用”とは、完璧なお客様でいることではありません。
お客様が不安を持たないことでも、感情を出さないことでもありません。
キャストを一人の人として尊重すること。
お店のルールを守ること。
お互いに嫌なことを嫌と言えること。
そして、断られたときに、その意思を尊重できること。
キャストもお客様も、安心して過ごせる時間を一緒に作ること。
それが、当グループの考える“きれいな利用”です。
当グループが考える、搾取に近づく利用とは
キャストを一人の人として尊重せず「お金を払ったのだから何をしてもいい」という考えで、キャストの意思・境界線・安全・尊厳を軽視することを、“搾取”と考えます。
・キャストが断っていることを、繰り返し求めること。
・お店のルールやコースの範囲を越えた対応を求めること。
・「お金を払っているのだから応じるべき」という態度で、キャストに断りづらさや罪悪感を背負わせること。
・キャストの優しさや、仕事としての言葉を理由に、本人の意思や選択肢を奪ってしまうこと。
それは、わたしたちが求める“きれいな利用”のあり方ではありません。
レズ風俗は、お客様が必要以上に罪悪感を背負うための場所ではありません。同時に、キャストが自分の意思や境界線を手放してまで応える場所でもありません。
だからこそ、ご利用いただくことに必要以上の罪悪感を背負わないでほしいと思っています。
お互いへの敬意と、お店のルールを一緒に守っていくことが、お客様にとっても、キャストにとっても、安心して出会える時間を作り、“きれいな利用”につながっていくのだと思います。
ご指名いただくことに罪悪感や後ろめたさを感じているお客様へ
最後に、当グループのキャストたちからお客様へ向けた言葉も紹介させてください。
キャストQ&Aでは「ご指名いただくことに罪悪感や後ろめたさを感じているお客様へ」というテーマで、それぞれのキャストがメッセージを寄せています。
ご利用いただくことについて必要以上に罪悪感を背負わずに、でも敬意とルールは忘れずに安心して逢いに来てほしい。
そんな気持ちが、キャスト本人たちの言葉でも綴られています。
