読了(2026年6月①)【私はチクワに殺されます / 男は女で修行する。~ビジネス運を上げる60の法則~ / Mの女 / かか / 火喰鳥を、喰う / 流跡】
一体何が目的でこんなに暑いんだ。暑さって私達のやる気を大幅に削いでしまう。でも負けない。だって男の子だもん。
急な気温上昇は体を壊す原因になるから決して無理をしないで日々を生きてください。
さて、6月は読書の梅雨ということで沢山読んだので感想文まとめ記事が2つ上がります。まずは前編参りましょう。
【私はチクワに殺されます / 五条紀夫】

小説家である五条紀夫さんによるサスペンス小説。チクワの穴を覗くと人の死が分かる男の物語。こいつは一体何を書いているんだと思ったそこのあなたへ、私も同じ気持ちです。
まず、こんなタイトルなのに信じられないくらいグロい。描写があまりにも鮮明で、人によっては気持ち悪くなってしまうこともあると思う。ただ、それさえ平気なら一読の価値あり。
そして、内容としてはタイトル通りなかなかの奇書。ずっと主人公が変だし、当然のことながら何も感情移入ができない。無い世界の話すぎてSF読んでる感覚になりかけた。奇書すぎてキショい。
全5章からなる200ページ程度の短い話で、それぞれの章はさほど複雑ではないものの、それら全体を通してみると少し難解になるような、割と不思議な作りになっている。だから途中からは結構チクワクワクした。
短い小説ながら展開がしっかりあって、私達を飽きさせない。なんなら短いからこそ、現代の読書離れに一石を投じられるような希望もある。私達みたいなドパガキには目まぐるしい展開がちょうどいい。
もちろん現実世界でこんなことは起こらないけれど、主人公の男が人の死を知ることができるチクワと出会った後のように、何かのきっかけで“どんどん異常性を増していく流れ”は、誰にでも起こり得ることで、自制が効かなくなることもきっとある。周りの人間が気づいて止められるかが何よりも大事な要素。手遅れな時も当然あるのは承知のうえで。承知してるからあんまり怒らないでください。ゆとり世代だからさあ。
いつどこでどういったきっかけでこの話を思い付いたのか流石に知りたすぎる。よくある表現をするならば、「何食ったらこんな話思い付くんだよ」です。作者の頭の中を覗いてみたい。そう、チクワを覗くみたいにね。
【男は女で修行する。~ビジネス運を上げる60の法則~ / 中谷彰宏】

大阪府出身の著作家・中谷彰宏さんによる自己啓発本。“男は女の生き方を学べば人生を向上させることができる”と説いた本。
全編通して結局は、“柔軟性を持って生きよう”というメッセージが込められていた。確かに日常を振り返ると、女性の方が柔軟な思考を持って行動しているなと感じる場面もあり、そこはやはり男が見習うべきところなのは間違いない。絶対に。
さっき、“というメッセージが込められていた”と断定してしまったけれど、もしかしたら違うかもしれない。全然そんなこと思っていないかもしれない。でも大丈夫。自己啓発本って、何が書いてあるかよりも何を受け取ったかの方が大事だから。だって私の人生なんだもの。著者の人生をトレースする訳じゃないもんな。逆に私の人生も著者はトレースできない。相互不可能関係。
本編の途中で出てきた、“少年の心で少年の財布しか持っていない大人は一番困ります。”(157Pより引用)という一文は非常にドキッとした。いつまで経っても少年の心を持って無邪気でいると確かに魅力的だけど、それに伴った責任も一緒に持ち合わせていないとチャランポランな流浪者になってしまう。フラフラしている大人になんか近付きたくないもんな。嫌っ、あっち行って!
私は昔から、女性のやりたいことに対して「それ最高じゃねえか」って言って送り出してあげるのが男の役目だと思っているんだけど、今日でその気持ちがより一層強まった。まあより一層強まったからといってそういう人がいるのかといったらそれはまた別の話なんですけどね…。へへへ…。
でも別にこれって特定の人に対してっていうことでもないだろうから、人生のスタンスとしてそうであれると良いよねという気持ちで日々を歩んでいこうと思う。なんとなく今頭に浮かんだのは、野原を駆け回るハイジを後ろで見守るおじいさん。あの人作中で名前は明かされてないんだってさ。びっくりだよね。
自己啓発本って、いろいろ読んだけど内容自体は結構被ってるんだよね。それぞれのワードセンスで言葉が紡がれていても中身は大体一緒。それでも細かいニュアンスが違ったりするのが面白い。むしろ内容被っていた方が反復になって良いのかもしれないなどと思ったりする。さあ、前向いて行こうぜー!Yeah!
【Mの女 / 浦賀和宏】

神奈川県出身の小説家・浦賀和宏さんによるミステリー小説。ミステリー作家の主人公・冴子の元に届いた1通のファンレターによって事件に巻き込まれていく物語。
割と冒頭の部分で冴子の立てた仮定が、私の中ではこの小説を一気読みする理由になって、もうそこからはほぼ休憩なしでグイグイ最後まで読み進められた。ちょっと鳥肌が立つくらいにワクワクした。肩が一段階前に出た感じがする。ただでさえ姿勢が悪いのに。
“逆転に次ぐ逆転”と本の紹介文で煽っている通りラストでコロコロひっくり返って、その目まぐるしさに置いていかれそうになったけれど、最後はなんだか放り出された感じがして「おやおや?」となってしまった。最後までちゃんとお世話してよ!まだ靴下履いてないんだけど!
だけどそれもそのはず、どうやらこれには続編があるらしい。この、「おやおや?」となったところがきちんと回収されるかは分からないけれど、回収されないにしても顛末は見届けなければならないような義務感に苛まれている。勤労・納税・読書?
物語のキーとなる冴子の友人・“亜美”が最初は冴子の言葉を信じずにずっと彼女に対して怒ってるんだけど、自分が間違っていることに気付いてからはやけに協力的になって笑ってしまった。でもきちんと非を認められる人間は素晴らしい。偉いぞ亜美。頭を撫でてやろう。
ページ数が少ないため状況などの要素が描ききれていない感は拭えないものの、ある程度ミステリーに触れている人であれば勝手に脳内で補完出来そうなのでそこはあんまり問題じゃないかも。なんとなく中級者向けの本って感じがします。
それはそうとして、表紙のお姉さん。いい目をしている。こんな翳りのある女性を目にしたら好きになっちゃうじゃん。後ろに沢山の見えない要素が控えていそうな人ほど魅力的に見えますよね。素敵な表現をするならば、﨟長けている。素敵じゃない表現をするならば、エロいです。やあやあどうも。こんばんはこんばんは。
【かか / 宇佐見りん】

静岡県生まれ神奈川県育ちの小説家・宇佐見りんさんによる純文学小説。主人公である19歳の女の子うーちゃんと、その母である“かか”との関係性を巡る物語。全編が“かか弁”という独特の語り口で綴られている。
かか弁とは一体なんだろうか。読んで字の如く、“かか”から放たれる言葉遣いなのだが、関西弁のようで純正な関西弁でもなく、かといってその他の地域のものかと言われればそれも違うような、非常に不思議な言語。お陰で読みにくいと感じる方もいるかもしれないと思いながらページをめくっていった。
個人的な感覚だが、読みにくい文章なのに何故かするすると入ってきて、髄の髄まで染み込んできた。もしかしたら主人公と私は似たところがあるのかもしれない。似ているところがあると一見難解に思えるようなことでもすぐに解読できる。これが絆だ。
そもそもこれがデビュー作なことに非常に驚きがあった。尖りすぎている。宇佐見さん本人には尖っている意識なんてないかもしれないけれど、なんて鋭利な文章なんだと思った。先程髄の髄まで染み込んできたと綴ったように、深く突き刺さって心を離さない。誰かに抱きしめられた感覚とも違う。巨大な掌に体を握られているようなというのが正しい気がした。この掌は誰なんだよ。
きっと彼女は小説家になるべくしてなったんだろうなという印象が凄くあった。こんな話、小説家にならないと書けないだろ。もちろん小説なんて専業小説家じゃなくても書けるけれど、小説家を生業としている人間がこれを世に放つことに意義を感じた。なんとなく。もう一度綴ろう、あくまでなんとなくだ。
主人公のうーちゃんがSNS上で繋がっている人達に嘘を吐くシーンがあるんだけど、そこの緊迫感がエグすぎてエグかった。まさにエグ。
うーちゃんが“かか”を救うために他の誰にも理解されないようなことをやろうとするところなんかはギュッと心か締め付けられたし、途中うーちゃんが19歳であることも忘れてしまうほどに心理描写自体に引き込まれる。絶対に勝てない綱引きをずっとやらされていた。完全敗北。
さっきうーちゃんと私の思考は似ている気がすると綴ったものの、読み終わって、「大体こんな感じの話だったなあ」と頭の中で整理をしていると、100%で理解はしていないなと感じた。むしろ、全く見当違いの受け取り方をしているような気までしてくる。なんだこれ。
それでちゃんと理解しなきゃいけないなと思って頭を悩ませたんだけど、よく考えたらちゃんと理解する必要なんて全くなかった。だって小説だから。危ない危ない、迷宮に閉じ込められるところだった。ひえー。
【火喰鳥を、喰う / 原浩】

長野県出身の小説家・原浩さんによるホラー小説。ある日主人公である雄司の元へ届いた日記を読んだことで恐ろしい現象が起こるようになってしまう物語。2025年には映画化もされている。
うわー、そうかあ。これデビュー作かあ。マジかあ。かなり痺れた。センスある人間だりいって。途中に出てくるヒクイドリの描写が毎回しっかり気持ち悪くて、心の底から嫌だった。文章で書かれているだけで画像も映像も何もないのに克明で、これが文章力かというのを嫌という程思い知った。嫌だったなあ。
近年のトレンド的な部分もきちんと抑えつつ、しっかり独創性もあって人気が出たのも頷けた。でも、狙いすぎた感がなくて本当に絶妙。“狙っている感”って表部分に捲れちゃうと一気に冷めて凍りついちゃうから。液体窒素もびっくりの冷凍技術。
日記を扱うという特性上、過去と現在が行き来する場面もあるから、そこはきちんと置いていかれないよう丁寧に読んでいくといいと思う。そんな難しい構成ではないから問題ないと思うけれど、急に場面が変わって困惑する可能性もあるからね。
日記のせいで登場人物の脳にも影響が出てくるんだけど、そこの臨場感と絶望感ったらもう! 読んでて非常に苦しい。胸がギリギリと締め付けられ、鼓動が鳴るたびに血液が加速して全身を巡った。そうです! この段落は小説みたいなことがしたかっただけの時間!
ホラー小説といえども、お化け的なホラーではなく、あくまでもヒューマンにスポットが当たっていたなという印象。それゆえドラマとして楽しんだ方が物語に入り込めるんじゃないかなという感想。うーん、印象と感想じゃ流石に韻弱いか…。
しかしながら、人の執念というのは強すぎるとこうなっちゃうのかあ…。もちろん現実世界ではこんな怪異な現象は起きないだろうけど、執念で他人を巻き込んで環境破壊してしまわないように気を付けないとだよね。本当に。本当と書いて“ほんとう”と読む。
あと、どうやら映画版には原作にないシーンが少し追加されているそう。そこが凄く気になっているので、いずれ映画も観てみようと思います。楽しみが1つ増えて超ラッキー。やったー。
【流跡 / 朝吹真理子】

東京都出身の小説家・朝吹真理子さんによる純文学小説。時系列や場面が夢と現実のように交錯する、無機質で美しい日本語が特徴の作品とのこと。
“流跡”というタイトル…、神の視点過ぎた。勿論作品の中身としての側面もあるなとは感じつつも、文体そのものを見て付けられたタイトルという感じが凄くした。どういうことかって? 一回読んでみてくれたら分かるから!
ジャンルとしては純文学ということになるみたいだけど、なんか純文学じゃしっくりこなくて、勝手に“ニュアンス文学”という名前を付けた。でもこのニュアンス文学もよく考えたら純文学と意味全く一緒かもしれないと気付いてしまった。これこそが純文学なのか? ところで、私は何を書いている?
最初からずっと読み進めていて、どうにも話が繋がらないなと思ったんだけど、そういうルールでやっているのが分かってからは困惑しなかった。章も分かれない、もちろん作品が変わるわけでもない。ただひたすらに連続してどんどんどんどん違う話が流れ込んでくる。何これ?
結局よく分からなかったなというのが率直な感想。なんとなくこういうことかな?って自分なりの解釈はしたんだけど、それが合ってるかどうかは全然自信がない。なんか別にそんなのどうでもよかったし。
でも私もこんな感じで脈絡のないことを延々と脳内で垂れ流してるときあるもんなあ…。さっき考えてたこととは全く違うことを考えて、ふと振り返るとどうしてこんなこと考えてたんだろうって思うことがしばしば。多分その時の自分はちゃんとマジカルバナナしてたんだろうけど、気付いたらグラデーションの記憶がごっそり抜け落ちていて、「バナナと言ったら扇風機」になっている。だからそういう意味で考えると結構共感できた。
それと、読んでいて気になったのは、“々”という文字を全然使っていなかったこと。普通だったら“日々”と記すところを“日日”としていたりが頻出した。他の例を出すと、“粒粒”とか“燦燦”とかね。文章的にはふわふわしているのにこれだけ硬かったのが軽違和感。これは作者的に何かこだわりがあるんだろうか。こだわりであってくれ。いや、むしろイキリであってほしいまである。
流跡っていうタイトルではあるけれど、あまりにも流れるような文章だったから“流流”って感じだった。かといってとりとめのないようだったかと問われるとそれも違う気がする不思議な文章。やっぱ何これ?
ところで、文庫本の上側が揃えられずギザギザになっているものを“天アンカット”というのだけれど、私が手にしたこの流跡は今まで買った文庫本の中で1番ギザギザだった。しかもそのレベルが途轍もなく。偶然なのは分かっているが、これも演出のひとつなのではないかと見紛う程にギザギザだった。ギザギザ。
しかしこういう人間を世界は天才と呼ぶんですかねえ…。朝吹さんのWikipedia検索したら親族の欄がとんでもないことになっててとんでもなかったもんなあ…。数えてみたら個人でまとめが作られている人数15人…。バケモノ一族じゃねえか!おい!
なんか今年梅雨入り遅くないですか?そんなことない?愛知だけ?今年はもう梅雨が来ないのかと思ってたよ。忘れた頃にやってくるのかよ。
で、梅雨明けしたら大照りの日々が始まるわけだろ?いい加減にしてくれよ。マジ頼むぜ。みんなでこの夏も乗り切って楽しい時間にしような。
P.S. 今月は読書感想文後編もありますのでそちらもぜひ読んでください。
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