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「聴いているつもり」が対話を止める

こんにちは。鷹取智子です。
企業向けにコミュニケーション研修やチームづくりの研修を中心に登壇しています。調剤薬局での勤務経験を活かし、医療機関や企業の現場づくりをサポートしています。


前回の記事では、承認することで部下の自信を育てることについて触れました。




今回は、部下の話を真の意味で傾聴することについてです。




忙しさや焦りが「決めつけ」を生む


あなたには仕事が立て込んでいたり焦りがあったりすると、目の前の出来事や人を冷静に見ることができなくなる、そんな経験はありませんか?

ストレスや焦り、疲れが強くなると、目の前の一部の情報に注意が偏り、物事を広い視点で捉えにくくなることがあります。こうした、見えるものや考えられることが狭くなる状態を「視野狭窄」といいます。

例えば、仕事が忙しく心に余裕がなくなると、


・「なんでこんなこともできないの?」と相手の欠点ばかり目につく
・自分の考え以外の視点や選択肢が浮かばなくなる
・相手の事情や気持ちを想像する余裕がなくなる

といったことが起こりやすくなるのです。心に余裕がなくなることで、見えるもの・考えられることが狭くなる。これは誰にでも起こり得ることです。


けれど、この状態で部下の話を聴いていると、下記のような悪循環が生まれることがあります。


忙しさ・焦りなどの心の余裕がない状態

視野が狭くなる

目の前の一部の情報や、自分の思い込みに合う情報に注意が偏る

決めつける・相手の話を遮る・すぐに指示をする

部下が話さなくなる

例えば、部下に対してこれらの決めつけ・思い込みはありませんか?


「この人はいつも消極的だ」
「また言い訳をしている」
「何を言っても変わらない」


例えば、こんな場面です。ある日、部下のAさんが上司に報告しました。

「先ほどのお客さまへの対応なのですが、確認に少し時間がかかってしまって……」

ところが上司は、Aさんが話し終わる前に、

「また言い訳? 次からは先に確認してから対応して。こういうことは何度も言っているよね」

と話を遮り、すぐに指示を出しました。

Aさんは、本当は「お客さまから普段とは違う要望があり、自分だけでは判断できなかったため、先輩に確認していた」と説明しようとしていました。


けれど、最後まで話を聞いてもらえなかったことで、

「どうせ何を言っても、言い訳だと思われるんだ」
「もう余計なことは言わず、言われたことだけやろう」


と感じるようになります。その後、Aさんからの報告や相談は少しずつ減っていきました。一方、上司は「最近のAさんは自分から話してこない。主体性がないな」と感じ始めます。


もしかすると、Aさんの主体性がなくなったのではなく、「また言い訳をしている」という上司の決めつけが、Aさんを話しにくくさせていたのかもしれません。


決めつける前に、確認する


忙しいと私たちは無意識のうちに、

「きっとこうだ」
「また同じことだ」

と、相手が話し終わる前に結論を出してしまいがちです。

私自身も、相手の話を聴きながら頭の中で先に答えを出し、後になって「ああ、またやってしまった」と反省したことが何度もあります。

では、どうすればよいのでしょうか。

まずは一呼吸おいて、自分の中に浮かんだ解釈や決めつけに気づくことです。

そして、いったん判断を脇に置き、相手の話を理解しようとする。

そのために、次の4つを意識してみてください。


① 相手の話を最後まで聴く

② 自分の中に浮かんだ解釈・決めつけに気づく

③ すぐに評価・助言をしない

④ 決めつける前に質問して確認する


特に大切なのが、④の「確認すること」です。例えば、


「もう少し詳しく聞かせてください」
「何か背景があったのですか?」
「私はこう理解したのですが、合っていますか?」

と尋ねるだけでも、見えていなかった事情が分かることがあります。

傾聴というと、「相づちを打つ」「最後まで話を聴く」といったスキルを思い浮かべるかもしれません。


けれど、その前に大切なのは、自分の中に浮かぶ思い込みや決めつけに気づき、それをいったん脇に置くことです。

昔の私はかなり思い込みが強く、相手とのコミュニケーションが上手くいかないことに悩んでいました。思い返すと、相手の話を聴いていたつもりが決めつけで聴いていた。つまり真の意味で聴くことができていませんでした。

20年以上前にNLP(コミュニケーション心理学)に出会い、そこから少しずつ思い込みも気づけるようになっていきました。適宜、立ち止まり自分自身に問いかけるトレーニングを積み重ねていったのです。小さな行動によって変わることができると体感しています。


マネジメントをする方々はお忙しいです。忙しいと、どうしてもいつもの癖に戻ります。だからこそ、まずは「今、私は決めつけていないかな?」と自分に問いかけてみてください。

そして、判断する前にひとつ質問してみる。

そんな小さな実践の積み重ねが、部下の「話してみよう」という気持ちにつながり、少しずつ対話のある関係をつくっていくのだと思います。


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