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アラフィフ、再び老人会へ。シャンソンのイメージが変わった日

地元の公民館で声をかけられて、
参加することになった趣味サークル。

ハンドメイド作品が作れると思って行った場所は、
70代の先輩方が集まる老人会でした。


前回の記事はこちらです。


あれから1か月。

「来月も参加します!」

勢いでそう言って帰ってきたものの、
時間が経ったことで、
正直、行くかどうか少し迷いが出ていました。


前回、
隣でおしゃべりしてくれた
70代の女性。

この集まりの中で、
私が唯一話せた人。

その人がお休みだったらどうしよう。

ひとりでポツンと過ごすことになるかもしれない。

そう考えると、
少し不安になってしまったのです。


でも、シャンソンは聴いてみたい。

そんな2つの気持ちと戦いながら、
勇気を出して向かいました。





今回は、
少し早めに家を出ました。

準備があったら手伝いたい。

そんな気持ちが、
芽生えていたからです。


あの女性がいますように…

そう願いながら扉を開けると、
会場には思いがけない光景が広がっていました。


少人数の女性だけだったはずの老人会。

今回は男性の姿もたくさんあり、
みんなほとんど70歳以上。

会場は、
人生の大先輩で埋め尽くされていました。


参加費300円のシャンソン鑑賞は口コミで広がり、
少し大きなイベントになっていたのです。


私はザワザワする会場を見渡しました。

あの女性の姿を遠くに見つけるも、
話しかけられるような距離ではありません。

どこに座ろう…

前回と同じように悩みながら、
私はまた一番後ろの席へ座りました。





時間になると、
会場にシャンソン歌手の方が入ってきました。

……え?

シャンソン歌手と言えば、
女性を思い描いていた私。

でもそこに現れたのは、
かっぷくの良い80代のおじいさんでした。


え?おじいちゃん?

私は、あまりのイメージの違いから、
失礼ながらも少しだけがっかりしてしまいました。





おじいさんが入場すると、
湧き上がる大きな拍手。

どんな歌を歌うんだろう。

会場の拍手鳴り響く中、
みんなは期待で目を輝かせています。


さっそく歌が始まる…
と思ったその時でした。

歌手の方が、
静かに自己紹介を始めました。


「私が30代の頃、3歳の息子を事故で亡くしました。」


あまりにも突然の発表に、
シーンと静まり返る会場。

その悲しみを歌にのせたいと思ったことが、
シャンソンを始めるきっかけだったそうです。


演奏は奥さんと40代の娘さん。

そうして、
最初の一曲が始まりました。





そのかっぷくの良い男性が歌うシャンソンは、
見た目とは違い、とても優しく繊細でした。

歌うというよりも、
言葉を音楽に乗せる。

そんな感じがしました。


有名なシャンソン曲が数曲歌われた後に、
男性がつくったオリジナル曲が歌われました。

亡くした息子を思って作られた
鎮魂歌(レクイエム)でした。

その曲には、
息子さんを失った悲しみや、
助けられなかった後悔が込められていました。


静まり返る会場では、
ところどころですすり泣く声が聞こえてきます。


シャンソンってこういうものなんだ…

キャバレーなどで歌われる陽気な恋の歌。

私は、
そんなイメージしか持っていませんでした。


でも、この日初めて聴いたシャンソンは違いました。

語るように歌い、
その人が歩んできた人生そのものを
届けるような歌。

私はそこに、
人が生きてきた証のようなものを感じました。





シャンソンの歌唱が終わると、
娘さんのアコーディオン演奏がありました。

「スタイルミユゼット」という
パリの街並みを連想させるような曲に、
先ほどの悲しい雰囲気はパッと明るくなりました。

その曲が終わると、
一枚の紙が配られました。

次に演奏される曲の
歌詞が書かれていました。


「よかったら皆さんも歌ってください!」

そう言われて始まったのは昭和の歌謡曲。


高校三年生、
いつでも夢を、
長崎の鐘、
恋のバカンス…


演奏が始まると、
小さな声で歌い出す女性たち。

それにつられて、
周りの男性たちもぽつりぽつりと歌い出します。

そして、その声はどんどん大きくなり、
会場はいつの間にか大合唱になっていました。


わぁ…なんかすごい。

私にとっては、
サビなら聞いたことあるかな?
程度の曲ばかり。

一曲も歌えないのは、
会場でおそらく私だけでした。


それでも、
父や母に近い年代の方々が笑顔で楽しそうに歌う姿に、
なんだか胸があたたかくなりました。

私は歌詞カードを手にしたまま、
そっと大合唱を聞いていました。





ミニコンサートが終わり、
その日は茶話会もなくそのまま解散となりました。

前回隣に座ってくれた
あの女性とは結局話せずじまいでした。


少しだけ会場の片づけを手伝い、
私は家に帰りました。

家に帰っても、
あの息子さんのことを歌ったシャンソンが、
じんわりと胸に残っていました。


人生っていろいろあるんだな…

そんなことを思いながら、
あの会場に集まった大先輩たちの姿を思い出していました。


みんなどんな人生を過ごしてきたんだろう。

もっといろんな人の話を聞いてみたい。

いつの間にかそんな気持ちになっていました。




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