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か カミュ「転落」2日目〜なんか過去自慢してくる

ネタバレあり

1日目と同じバー「メキシコ・シティ」、相手も同じと思われる。
クラマンスは、「告解者にして裁判官」という職業?について語ろうとする。が、その前に、パリで弁護士をしていた頃の、華やかな生活の話から始める。
クラマンスは、大義ある弱者を守る弁護士だった。正義の女神と共にあった。裁判官への嫌悪感は常に持っていた。
弁護を引き受ける唯一の条件は、善き殺人者であること、善き野蛮人であること。彼は常に清廉で、貧者から金は取らなかった。
クラマンスは当時の自分の心情と行動をこう表現する。

気質による満足感に満ちていた。自分は進んで盲人の手を引いた。
礼儀正しさの快感に浸っていた。自ら席を譲り、老婆の落としものを拾った。時に、困っている人を車で自宅まで送りさえした。
気前良さの愉悦があった。
物品や金を惜しむことなく与えた。たとえ裏切られても喜びが損なわれることはなかった。自らの施しにおいて自分は支配者であった。
弁護士の職務は悦楽のなかにあった。無償で引き受けた裁判で、被告の妻から礼を言われても、当然のことですと颯爽と立ち去った。(おい、カッコいいな)

そうしてクラマンスは人生の高みに立ち、その美徳で自己成長した。下方からは常に歓喜と喝采の声が聞こえていた。
彼は自分が裁判官の上の存在だと信じていた。裁きを下す彼らを逆に裁く存在であると。
犯罪者の名声は一夜のもの、やがて忘れ去られる。だが、自分の栄光は永遠で、ただ一人自分だけがエデンの光の中にいた。
容姿にも恵まれたクラマンスは、女性たちを愛し、スポーツや芸術を嗜んだ。自分は超人でさえあるかもしれないと思った。

と、ここまで話して、不意にクラマンスは、話の聞き手に「あなたの同情が欲しい」と言い出す。
友情でなく同情でいい。友人そして親族は、時に急所を撃ち抜く言葉をかけてくる存在だから。
またこうも言う。
友情は腑抜けで無能だ。感情を覚醒させるのは人の死だ。死者には公正で寛大になれる。なぜなら、彼らは何も押し付けてこないから。
そしてようやっと、クラマンスは自分に訪れた異変を語り出す。
ある秋の夕、セーヌ川の河岸を歩いていると、背後にけたたましい笑い声を聞いたと。それは晴れやかで、屈託のない、友好的とさえ言える響きだった。部屋にに帰ると今度は窓の外からその声を聞く。クラマンスは鏡に顔を映した。するとその微笑は二重に見えて……。

と、そこまで話して、クラマンスは今日の話はこれまでにしたいと言い出す。実はこの後、絵画の密売屋と相談があるからと。そういえば「メキシコ・シティ」の壁には、かつて一枚の絵が掛けてあった。正真正銘の傑作が。

2日目には、何も核心的なことは起こらない。語られるのは、クラマンスがどんなに高貴な魂を持っていたか、どんなに意識高い人間であったかだ。それがたとえ偽善であっても、何もしてない、できない人間からとやかく言われる筋合いはないように思う。クラマンスは充分に立派だ。ただ友情であるとか親族への拒否感は気にかかる。死への必要以上の賞揚も。そして笑い声も。
まあ、前振りはこのくらいにして、3日目にはいいかげん何が起こったのか話し出して欲しく思う。サルトルにけちょんけちょんにやられた後の小説なんで、その辺のとこも匂わせてくるのかなあ、と期待する。
サルトルといえば実存主義で、それを簡単に言うと、まあ簡単にしか言えないけど、
「人は生まれただけではダメで、生きる中で自分の中身を作っていかなければならない。何をするにしても人類代表くらいの気持ちで社会に参加していってほしい」みたいなことか。
そう考えると、クラマンスなんてまさに実存主義を実践してるよなもんだが、なにか笑われるようなことでもあるのだろうか、謎である。


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