習い事,大学院生指導,自分の先生は自分自身なのだ(子連れワンオペ・サバティカル #12)
※この記事を書いている今はサバティカルでアーバイン(カリフォルニア州)に来て10か月目です。この記事では8か月前の話を書いています。
サバティカルの始まった4月,カリフォルニアに来て子どもたちは現地の小学校に通い始めたけれど,学校以外の時間はどう過ごさせるか。特に,日本でやっていた楽器の習い事はどうするのか。
一方で,私の仕事のほうでは,日本にいる大学院の指導生たちに対して,指導はどうしていくのか。今回は,その二つの話。4月から5月にかけての話だ。
夕方はオンライン面談の時間
夜7時ごろ,子どもたちのために食事を準備すると,私はパソコンでオンライン面談を始める。アメリカについたばかりのホテル暮らしの頃から,二日に一回ぐらいはこのようなオンライン面談をするようになった。面談の相手は,日本にいる大学院の指導学生たちだ。カリフォルニアの夜7時は,(夏時間のときは)日本の午前11時にあたる。
日本の所属大学において,私が担っていた教育業務には,授業のほかに大学院生の研究指導があった。私には9人の指導学生がいて,同僚の教員と比べると多い方の部類に入る。だから,大学院生の研究指導は,私の仕事の中でけっこう大きい比重を占める。
サバティカルを取得することで,今年度の授業担当は免除された。一方で,大学院生の研究指導の仕事は免除されたわけではない。研究指導は簡単に他の教員に交代できるものでもないし,自分としても自分の指導学生は何があろうときちんと指導したい。そういうわけで,サバティカル中も指導学生の研究指導をしているというわけだ。
大学院生の指導の方法は多様だと思う。自分が大学院生のときに受けた指導の方法に倣っている教員もいるだろうし,自分なりの方法を新たに模索している教員もいるだろう。
私が大学院生のとき,指導教員から個別面談のかたちで指導を受けたことは,ほとんどなかった。自分からお願いすれば個別面談のかたちでの指導を喜んでしてくれたかもしれないが,そうすることはなかったし,そのような発想自体がなかった。授業中や「月例会」と呼ばれる場で発表をし,その場でコメントをもらうのが研究指導だった。
自分が大学教員として大学院生の指導をする立場になってからは,自分が大学院生だったときの指導の方法に倣うのではなく,自分なりのやり方を模索してきた。研究指導法に関する本を読んだりもした。そうして辿り着いた今のやり方は,隔週の個別面談と,月1回の指導生全員を集めた「ミーティング」だ。私がサバティカルに入って海外に来たので,この個別面談とミーティングはオンラインになった。時差の関係で,午後7時(日本時間午前11時)ぐらいに面談をやることが多いというのは,最初に書いた通りだ。
この隔週の個別面談というやり方でよいのか。やりすぎか,やらなさすぎか。面談では何をどのように指導するべきか。大学院生の研究に指導教員はどこまで立ち入るべきか。何が正解かわからないけれど,試行錯誤しながら,大学院生の研究指導という仕事を,もう十年以上続けている。
習い事の先生を探さなければならない
話は変わるが,娘はバイオリンを小さい頃から習ってきた。まだ小6だが,日本では青少年オーケストラで活動したり,コンクールに入ったり,わりと本格的にやってきた。
日本にいたとき,娘は毎週バイオリンレッスンを受けていた。バイオリンに限らないだろうが,楽器のレッスンというのは個人レッスンが基本だ。生徒が毎日家で練習をしているという前提で,毎週先生がチェックしながら指導をする。
アーバインでも,現地で個人レッスンを受けられる先生を探そうと思っていた。ただ,どうやって先生を探せばよいものか。インターネットで検索すれば様々な先生の情報が見つかるので,そういうところから探して連絡をとり,体験レッスンから始めればよいだろうか。そう考えながら,ひとまずは日本でお世話になっていた先生に,オンラインで指導を受けていた。
中学のオーケストラ
現地の小学校は6月上旬から夏休みに入る。小6の娘の場合,夏休み前の最後の日に卒業式があり,8月下旬から中学生になる。
現地の中学校では通常の授業のほかに選択コースがあるらしく,小学校卒業を一か月ちょっと先に控えた4月下旬の時期に希望を出すことになった。コースのリストをみると,芸術,技術,サイエンスなどの様々なコースのほかに,3種類のオーケストラもあった。日本でもオーケストラに入っていた娘はオーケストラがいいというし,私もそれがいいだろうと思った。そこで,担当の先生(音楽の先生)にメールで問い合わせてみた。うちの娘はバイオリンをやっているのだけど,三つのオーケストラのどれが娘に合っているかと。
メールをしたら,その先生からはその日の夜遅くに返事がきた。演奏の動画があれば送ってほしいとのことだった。娘のコンクールでの演奏はYouTubeにあげているので,すぐにそのリンクを送った。そしたらまたすぐに返事が来て, 演奏を褒めてくれた。そして,三つのうちのいちばん上のレベルのオーケストラを勧めてくれた。
そのメールには,ここでのバイオリンのレッスンはどうしているのか,もし先生が決まっていなかったら紹介もできると書かれていた。私たちとしても,この街でバイオリンの先生をどう探せばいいか悩んでいたところだったので,まるで私たちの状況を見透かしているかのような,タイミングの良い申し出だった。
自分の先生は自分自身なのだ
そういうわけで,中学の先生の紹介してくれた先生と連絡をとった。そして体験レッスンを受けに行った。アーバインに来て2か月目,5月上旬のことだ。
写真で見た先生は厳しそうに見えたけど、会ってみるとやさしくて面白い先生だった。その先生はレッスンをしながら,娘にときどき質問をする。シャイな娘は,小さな声で答える。
僕は質問しすぎてるかな。でもね,ただ教えるんじゃなくて,質問をするのが大切だと思ってるんだ。どうしてか分かる?・・・あ,また質問しちゃったね。どうしてかというと,ただ教えるだけだと習うほうはすぐ忘れちゃうからなんだ。でも質問をすると,聞かれた方は自分で考えるようになる。そうすると,ちゃんと覚えられるんだ。
先生はこう続ける。
今まで日本で先生にバイオリンを習ってきただろうし,これからは僕が君の先生になるかもしれない。で,10年後,20年後はどうだろう。そのときの君の先生は誰だろう?
それはね,自分自身なんだ。自分が自分の先生になるんだ。誰も教えてはくれない。自分で考えないといけない。だから,そのとき自分の頭でちゃんと考えられるようになるためのサポートを,今はしているんだよ。
横で聞いていて,なんだか大学院生の指導みたいだなと思った。手取り足取り指導していけば,論文は形になるだろう。でも,大学院生(特に博士課程)は修了したら研究者として自立していかなければならない。だから,博士課程の指導というのは,その先の自立を見据えたものになる。
では,どのような指導をするのが良いのだろうか。それはまさに,私が日々模索していることなのだ。
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付記
私が大学院生を指導するようになって参考にした本。
