ナポレオンと雷電爲右エ門は同世代~横軸で歴史を眺める面白さ~
歴史は普通、過去から現在に向かって縦軸に見ていく・研究される学問です。しかし、この視点をちょっと横軸に、つまり同時代性で全く異なる地域の歴史を比較してみると、時間間隔のバグのようなものを感じ取れる面白さもあります。
サムネに使ったフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトと江戸時代の強豪力士雷電爲右エ門。縁もゆかりもないこの両者は
ナポレオン 1769年~1821年
雷電 1767年~1825年
とほぼ同世代で、生きていた期間もピタリと重なっています。
フランスではナポレオンがヨーロッパを相手に戦争を繰り広げていた頃、日本では雷電爲右エ門が土俵を沸かせていました。
同じ時代を生きながら、片や皇帝、片や力士。しかも当時の両者は互いの存在すら知らなかったはずです。
それでも生没年を並べてみると、二人はほぼ同じ時間を生きていた。歴史を横軸で見る面白さは、まさにこういう「時間感覚のズレ」にある。
ふと、このことに気づいた時、非常に面白く感じたのを覚えています。
同時に、フランスが大革命で近代の幕開けを迎える一方、日本は江戸時代で太平の世を過ごしていたのだな、とその違いを感じながら、もし彼らより一時代前の田沼意次(1719年生まれ)の改革(一般には1751年~1786年)が続いていたら日本の近代化はもう少し早まっていたのだろうか、など、少し違った角度で想像を膨らませることも可能です。
ちなみに田沼を「資本主義の先駆者」とするのはやや先走った評価だとは思いますが、蝦夷地開発など、国防に力を入れていたのも事実です。
仮に田沼の方針が引き継がれ、蝦夷地の海防などの強化が図られていたら明治維新も違った形になっていたのではないか、というIFは十分想定可能だと思います。
私はゲームは全くやらないのですが、ゲーム好きな友人に言わせると戦史シミュレーションゲームでは、織田信長がイギリスのエリザベス1世、スペインのフェリペ2世、モスクワのイワン雷帝、インドのアクバル大帝等世界史上に名を残す君主たち相手に勝ち抜いて世界の覇者になる、というようなシナリオがあるそうです。
さすがに誇大妄想が過ぎるだろう、とは思いますが授業ではバラバラに覚えさせられるこれらの人物が同時代人であったことに気づかせてくれます。
奇説の類ですがチンギス・ハーン=源義経説、などもこの二人が同世代だからこそ成立するものです。
また、人物だけではありません。同時代性で見ていくと、思想や宗教にも不思議な集中現象があります。
これは歴史学において「枢軸時代」と名付けられ、歴史好きの間では知られていることですが、古代中国の諸子百家とインドの仏教やウパニシャッド哲学、イランのゾロアスター教、イスラエルでのユダヤ教の成立、古代ギリシア哲学が花開いた時代も紀元前8世紀~紀元前3世紀にかけて集中しているます。
約500年というスパンはいささか長めですが、この時期に古代の思想が大きく変革し、今日にまで影響を及ぼす宗教・思想が同時代的に発生した、というのも歴史を横軸から見ることで気づかされる不思議さです。
小ネタですが、ザ・ビートルズがデビューし人気が爆発した時、かのウィンストン・チャーチルがまだ存命だった、などという事実も、知ると楽しくなってきます。
さすがにチャーチルはザ・ビートルズを聴いたことはなかったようですが。
歴史を勉強していると、つい因果関係を追いかけたくなります。しかし時には視点を九十度回転させ、同時代の世界を眺めてみるのも面白いものです。
ナポレオンと雷電爲右エ門。
織田信長とエリザベス1世。
チャーチルとザ・ビートルズ。
本来交わることのなかった人物たちを同じ時間軸の上に並べてみると、歴史は年表ではなく、同じ世界を生きた人間たちの巨大な群像劇だったことに気づかされます。
これも歴史好きにとっては、想像を膨らませられる大きな醍醐味の一つなのです。
