「AIに媚びる時代」に何が残るか——AIBB Tokyo 2026 キーノートレポート~平井卓也氏(速報版)~
2026年5月25〜26日、渋谷MAGNET by SHIBUYA109。「話題性より実務」を掲げたカンファレンスで、初代デジタル大臣・平井卓也氏が語ったのは、AI時代に生き残る"人間の条件"だった。


失敗を許さない国で、AIは使えない
平井氏は自民党AIホワイトペーパーの作成経験を振り返り、こう率直に語った。「今日決めたことが正しいはずがない。半年後には修正が必要になる」。ところが日本の行政・企業文化は「失敗を避け、空気を読む」ことを優先しすぎて、せっかくの優秀な人材が本来の力を発揮できていない。
そこで平井氏が提唱するのが「責任あるアジャイルガバナンス」——素早く試し、結果を見て迅速に修正する仕組みを国の方針に組み込む考え方だ。黒田氏も「優秀な官僚の皆さんがもったいない瞬間が多い。AIでルーチンを解放し、本来の政策立案能力を使ってほしい」と同意した。

AIが「感性」まで模倣できるなら、人間に残るものは?
議論が最も熱を帯びたのは「人間にしかできないこと」をめぐる問いだった。ANAで新規事業開発を担う津田氏は「CAなどの接客案内の仕事は感情労働で、その場の空気を読む力や、プラスアルファの印象が価値だった」。ところが生成AIは今や、その「感情を超えた感性」すら模倣しはじめている。
登壇者が一致して挙げたのは、リアル空間でしか成立しないもの——季節を感じて作る料理、介護や建設の現場、ライブの一体感。デジタルで代替できない「体験の重力」だ。
平井氏は独自の視点も加えた。「AIは忘れない。でも人間は嫌なことを忘れられる。この差異こそが強みだ」。さらに「AI相手に媚びへらうような関係性が生まれるリスクにも警戒が必要」と警鐘を鳴らした。人文・哲学・歴史——いわゆるリベラルアーツこそが、AI時代の教育の軸になると繰り返した。
ANAが仕掛ける「ポジティブ接客データ」の革命
津田氏はANAの具体的な取り組みを惜しみなく公開した。ANA発でAI・ロボティクスのスタートアップである「アバターイン」との連携で、接客案内業務にAIエージェントを実装するトライアルを行っているが、平井氏からは「CAが装着するスマートグラスによる接客データを蓄積して、ネガティブチェックではなく、良い接客の画像・音声・目線をポジティブに集め、言語化して全社共有してはどうか」というアドバイスもあった。また、フィジカルAIのスタートアップとの協業による、機内清掃や手荷物積み付けの自動化などのチャレンジも進んでいる。さらに、未来「妄想」室では、空飛ぶクルマやドローンや宇宙事業といった破壊的イノベーションによる事業化も検討中。
地方路線の赤字、コロナ後も3割減ったままの出張需要——航空業界が直面する構造的課題に対し、ANAが打ち出すのは関係人口の創出とインバウンド活用だ。高松空港の全天候着陸対応(カテゴリー3)や海底ケーブル陸揚げによるデータセンター誘致が、地方でも東京と同等の業務環境を実現し、2拠点居住を後押しするという。
。

AIエージェントの時代、「責任」はどこに?
規制改革の話題では、Airbnbやライドシェアが旅館・タクシー業界と激突した歴史が引き合いに出された。「新しい事業は常に既存業法とぶつかる。一つひとつ解決してきた」と平井氏。2拠点居住を広げるためには、移動データを活用した住民税の日数按分という具体的な提言も飛び出した。

セッションの締めくくりで平井氏が強調したのは「ヒューマン・イン・ザ・ループ」——AI同士が取引や意思決定を行う時代でも、最終責任は人間が持つべきだという原則だ。特に金融分野では責任の所在が曖昧になるリスクが大きく、「責任あるアジャイルガバナンス」が最も試される領域になると結んだ。


資料 デジタル・ニッポン2026を3分で(会場上映)
ひらたくさんのnoteが始まりました!
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます
