葵。解ける鎖:第二章_暴かれる本性
第二章 暴かれる本性
「あの……こういうのは、良くないと思います」
葵が迷いながら送ったささやかな拒絶の言葉は、皮肉にも男たちの歪んだ欲望をさらに煽る最高のエサとなって返ってきた。
『もっと困った顔が見たいな』
『写真を送ってくれたら優しくしてあげるよ』
夜、静まり返った一人きりの暗い部屋で、葵はベッドに横たわりながらスマートフォンの画面を見つめていた。
指先が微かに震える。身体の芯から湧き上がる背徳感に、息が上手く吸えない。
(見たいのなら……見せてあげようか)
葵はかけていた眼鏡を外してサイドテーブルに置くと、着ていたブラウスのボタンを上からひとつ、またひとつとゆっくり解いていった。
スマートフォンのカメラを立ち上げ、露出した己の胸元へとレンズを向ける。顔は決して映さず、首元から滑らかな鎖骨にかけての肌を切り取った写真を一枚、送信した。
送信ボタンを押したその瞬間、背筋を鋭い電撃が駆け抜けるような、狂おしい快感が通り抜けた。
すると数秒と経たないうちに、画面上の通知が連打されるように爆発した。
『最高だよ!』
『もっと見せてくれよ』
『次は下も頼む!』
画面上に溢れかえる露骨な賛辞と、貪欲な言葉の数々を貪るように読み進めながら、葵は自身の頬が熱く潮差していくのを感じていた。
かつて大切に抱いていた羞恥心は完全に吹き飛び、代わりに「他者の視線によって満たされていく」という異常な全能感が彼女の全身を支配していく。
今まで独りで静かに処理するしかなかった夜の虚しさが、一気に狂おしい興奮へと塗り替えられていくようだった。
「私……何をしているんだろう」
暗闇の中に漏れた呟きは、自分でも驚くほど甘く艶を帯びて震えていた。
身体の芯は熱くなり、自分の秘密の場所から熱が溢れるような感覚と痺れたようなジンジンとした感覚になり、両の脚をきつく交差させ、その熱い部分をギュっと締め付けたい衝動が起きた。
(他の人、男性でこんなになるなんて……何年ぶりだろ?)
(もっと欲しい。この人たちにもっと私を欲望させたい)
葵の左手がブラをしていない白いシャツの中に滑り込んだ。そこには自分の意思はなく、必然的に、自然に柔らかな胸の上に手を這わせるのだった。
すでに触れられるのを待ち構えていたかのように、その先端は硬くなり、指気にコリっとした感触が伝わり、動かすと喉の奥から甘い吐息が漏れた。
真面目に生きてきたはずの彼女は、画面の向こう側に広がる無数の視線という名の底なし沼へ、自ら深く、深く堕ちていくのだった。
スマホの画面を右手でスクロールしていくと、今度は男性の局部の画像まで送られてきていた。
誇らしげに硬く上を向く画像、自分の手で握っている画像、完全に太く大きくなり上を向いた画像、それを下から撮影した画像。
下からの画像の彼のものは、筋なのか血管なのかがグロテスクに浮いているのだが、葵の目は彼のものに釘付けになってしまった。
(うそ……こんな、生の……)
不快感や恐ろしさよりも先に、圧倒的な「男」の輪郭が視界を占領する。画面越しに伝わってくる生々しい体温と荒い息遣いが、直接肌を撫でられているかのように彼女の皮膚を粟立たせた。
かつて最後に誰かと肌を重ねたのは、何年も昔のことだ。遠い記憶の中にあった熱が生々しい現実となって蘇り、葵の胸の奥でドクドクと重い脈を打ち始める。
(やだ、こんなの……ダメだよ。)
画面上のそのグロテスクで力強い塊は、自分という存在に向けられて提示されているのだ。他者の剥き出しの欲望と、それを引き出してしまった自分という関係性。その事実が、彼女の理性を決定的に破滅させていく。
スマホを持つ指先が微かに震えた。葵はスマホを握り締め直すと、胸元へと滑り込ませ、自ら触れているピンクの頂点の画像を……シャッター音が室内に響いた。
震える指先で、そのピンクの物の画像を送る。
すると直ぐに
『可愛い乳首……舐めてあげる』
『こんなに硬く尖らせて、俺の写真を見て感じちゃったの?』
中には
『こんなに可愛い乳首見せられたら、今すぐ飛んでいって吸い付きたくなるよ』
『もっと全体が見たい。下着をずらした写真も送ってよ』
といった、次々と画面に溢れかえるより過激で貪欲な要求の数々。
ただの雑談相手だったはずの男たちが、自分という一人の女性の身体に狂おしいほど執着し、欲望をぶつけてくる。
(みんな、私の写真を見て……興奮してる……)
再び男たちの力強いものの画像を見てしまう葵は、口の中一杯に涎が溢れだし……
(舐めたい……あっ、この……その太いのを)
左手の中指と人差し指を、そっと口に運んだ。
自分の舌が、唇が、卑猥な音をたてているのが自分の耳に響く。
「んっ……ちゅ……れろ……っ」
画面に映る生々しく太い肉茎を、目の前にある本物の男のものに見立て、自らの指を深く咥え込んでいく。
口内に広がる自分の体温と指先の感触。舌を絡め、吸い上げるたびに、ジュプ、ジュルッ……という湿った音が静かな暗闇に淫らに反響した。
(私……なに指なんて舐めて……ほんとにおかしくなっちゃった……)
羞恥のタガは完全に外れていた。
画面の向こうの男たちに欲望されているという事実と、己の身体から溢れ出す淫らな欲求が混ざり合い、脳をトロトロに溶かしていく。
濡れた指先を口から引き抜くと、糸を引く唾液が暗闇の中で微かに光った。
熱く火照った息を吐き出しながら、葵はもう片方の手で握りしめたスマホの画面を、濡れた指先で愛おしそうに撫でた。
「もっと……見せて……」
誰に届くともない甘い乞いのような呟きが、密やかな部屋の中に落ちていった。
涎で濡れた指先を乳首に這わせると、先ほどとは違う感触が全身を襲い、つま先から頭の頂点にまで痺れが走った。
「んっ……あっ、ん」
と声とも言えないもの、葵の鳴き声が喉の奥から漏れた。
ひんやりとした自身の唾液と、カチカチに硬く熱を帯びた先端との温度差。それが触れ合った瞬間、背骨を鋭い電流が駆け抜けるような強い快感が襲いかかる。
濡れた二本の指でコリコリと小さく捏ね回すたび、全身の肌が泡立ち、下腹部の奥がキュンと甘く締め付けられた。
(ひどい……こんなの、手だけなのに……全然ちがう……)

葵は理性が働かず……下着の中へ指先を這わせてしまう。
まだ触れてはいない秘部は、熱くはなっていたが表面的には濡れてはいなかった。
自ら閉じられた唇を裂いてみると……自分でする時とは全く違うほどの水量で溢れ、触れただけで全身に力が入り硬直してしまうのだった。
「あっ、そこ、ダメ……あん。」
指先で蜜を掬い上げるようにしながら、葵は小さく固くなった花芯を重点的に、やさしく撫でさすった。
これまでの人生で、葵は自分の内側へと指を深く挿し入れた経験など一度もなかった。いつも独りの夜に触れるのは、この愛おしく疼く小さな突起だけだったのだ。
「あっ……んぅ……そこっ、ダメぇ……っ」
指腹で花芯をころころと転がし、軽く圧をかけて擦り上げるたび、つま先までピンと伸び切ってしまうほどの痺れが脳天を突き抜ける。
指を挿入しないからこそ、表面の極小の突起へと全ての神経と興奮が集約されていく。すでに溢れ出た溢れんばかりの蜜が滑らかな潤滑油となり、指先を滑らせるたびにじゅち、と甘く卑猥な音を立てて花芯を叩いた。
(ダメ……おかしくなっちゃう。欲しいよ……中に、中を満たして……。)
自分の身体が反応し、中を犯す指先を熱くて柔らかい壁が包み込むのが判る。それは腫れているようで指に絡みつき、まるで来たものを離さないように締め付けていた。
「んああっ……! あ、ダメぇっ……きつくて、入らない……っ!」
狭く熱い壁を押し広げながら指先を少しずつ進めるたび、熱くうねる壁が押し込まれた指先をギチギチと過剰に締め付けてくる。
自分の指でここまで押し入れたことのない強い圧迫感と、擦れ合う粘膜の快感だけで、葵の背中はアーチ状にしなり、喉からは隠しようもない嬌声が何度も漏れ出していた。
間もなく終焉を迎える事を自覚した葵は、再度男たちのものをスマホの画面越しに確認し、
(きて、もっと奥まで……私の中で出して、汚して)
そのまま身体全体が浮き上がり、
「あっ……あぁ……ダ、メ……。」
と叫ぶような切ない声を上げて果てていった。
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