第三者評価を「受ける」から、「使う」へ−やらされる評価から、自ら使いこなす評価へ
保育園にとって、第三者評価の受審は決して簡単な仕事ではありません。
自己評価を行い、資料を準備し、訪問調査の日程に合わせて勤務体制を整える。当日には、園長や主任、職員がそれぞれ時間を割いて、評価者からの質問に答えます。
受審費用もかかります。
それだけの時間と労力を使う第三者評価が、「数年に一度やってくる義務」として終わってしまうのは、あまりにもったいないことだと思います。
それは、第三者評価は、評価者に園の良し悪しを判定されるものでも、まして、園の欠点を指摘されるためのものでもないからです。
もちろん、安全管理や法令遵守など、改善が必要なものがあれば、早急に対策を考え、対応することも大切です。
ただ、第三者評価の価値は、その先にあるのではないでしょうか。
第三者という外部の視点を使いながら、自分たちが何を大切にしてきたのかを確かめること。
自分たちでは当たり前になっている実践の意味を、もう一度言葉にすること。
そして、これからどこに向かいたいのかを考えること。
第三者評価は、そういったことのために使うことのできる機会です。
1 第三者評価の目的を、もう一度考えてみる
東京都福祉サービス第三者評価には、大きく二つの目的があります。
・利用者への情報提供です。
・サービスの質の向上に向けた事業者の取組を促すことです。
この「質の向上」への取組を、外から指摘された問題点を直すことだけだと考えると、第三者評価はどうしても受け身のものになります。
・評価者から何を言われるのか。
・どこを指摘されるのか。
・何が不足していると言われるのか。
そうしたことが不安になっている園は数多くあります。
しかし、質の向上として、もう一つの方向性を大切にしたいものです。
それは、自分たちがすでに持っている価値を知ることです。
日々の保育の中で、職員が当たり前のように行っている配慮があります。長い時間をかけて受け継がれてきた行事の進め方があります。保護者との関わり方、職員同士の話し合い方、子どもへの言葉のかけ方にも、その園らしさが表れています。
しかし、自分たちの中では、それが当たり前になりすぎていて、価値として認識されていないことも珍しくありません。
第三者評価を機会に、「これは、この園の強みなのではないか」、「この取組には、こういう意味があるのではないか」などの、自分たちの実践を改めて理解し、言葉にできるようになる。
自分たちの実践の価値を、組織内で共有することも、第三者評価によって開く、サービスの質の向上への取組だと、私は考えています。
2 受審準備を「対話のきっかけ」にする
第三者評価の準備というと、どうしても資料集めが中心になりがちです。評価機関から予め資料の準備が伝えられている場合もあると思います。
会議録、マニュアル、計画書、記録類等です。
もちろん、これらは必要です。
ただ、資料を揃えることだけが準備になってしまうと、受審そのものが事務作業になります。ふと行政による指導検査が頭をよぎるのではないでしょうか。基準を満たしている証を示す資料を準備する様子です。
それではもったいないので、せっかくなら、この準備の時間を、自分たちが歩んできた道を振り返る時間にしてはどうでしょうか。
自己評価を、対話のきっかけにする
組織の自己評価票は、合議をもって作成することになっていますが、人員不足や、労働時間の厳守など、時間をやりくりすることが難しい現場にとって、第三者評価の資料を「話し合いながら」作成することは、簡単なことではありません。やむを得ず、一人の担当者が書類を見ながら埋めて終わりにすることもあるでしょう。
しかし、そこを一歩踏み込んで、
評価の仕組みが示す、それぞれの分野の標準項目について、
・「私たちは、なぜこの方法を選んでいるのだろう」
・「昔はどうしていたのだろう」
・「何を変えて、何を残してきたのだろう」
・「この取組で、何を大切にしているのだろう」
と職員同士で話してみる。
同じ取組についても、職員によって見えている意味が違うことがあります。
ベテラン職員は、その取組が始まった経緯を知っているかもしれません。
若い職員は、現在の子どもたちの姿から、新しい意味を感じているかもしれません。
その対話そのものが、園の実践を理解する機会になります。
自己評価は、単に「できている」「できていない」を確認する作業ではなく、自分たちの保育や運営を言葉にする時間として使うことができます。
3 資料を「園の足跡」として捉える視点を持つ。
第三者評価では、多くの資料を確認します。
議事録、計画書、マニュアル、研修記録、個別の記録など、その種類はさまざまです。
こうした資料を、単なる証拠書類として準備するだけでは、準備は苦しい作業になります。
しかし、見方を変えてみましょう。それらは園が歩いてきた足跡ではありませんか?
以前はうまくいかなかったこと。
話し合いながら変えてきたこと。
今も試行錯誤していること。
一見すると無機質な記録の中にも、その園が何を考え、どのように選択してきたのかが残っています。
資料を整えることは、評価者に見せるためだけの作業ではありません。
自分たちがどのように歩んできたのかを、自分たち自身が確かめる作業にもなります。
4 訪問調査を「質問に答える場」で終わらせない
訪問調査当日、評価者から多くの質問がなされ、園側の担当者は一つずつ答えていきます。
もちろん、それで調査は進みます。
ただ、「聞かれたことに答える」だけでは、園が大切にしていることが十分に伝わらないこともあると思います。うまく伝わらなかった経験をした方もいるのではないでしょうか。
例えば、ある行事を行っているとします。
「毎年、この行事では、こんなことを行っています」
という説明だけでは、実施している事実しか伝わりません。
しかし、
・なぜその行事を大切にしているのか。
・子どもに何を経験してほしいと考えているのか。
・これまでどのように形を変えてきたのか。
・現在の子どもの姿を見ながら、どんな工夫をしているのか。
そこまで語ることができれば、訪問調査は、園が一方的に評価されるだけの場にはなりません。その取組が持つ意味や、理念などの何を大切にしているかが見えてくるからです。
評価者との対話を通して、自分たちの実践を言葉にする場となれば、評価は基準の達成・未達成を確認する場ではなく、実践を確かめ、言語化する場にもなります。資料は歩んできた物語を支える大切なエピソードになります。
5 評価結果を「通知表」にしない
第三者評価が終わると、報告書が作成されます。
そこには、評価者からの見方が示されます。
この結果を見て、「良い評価だった」「思ったより評価されなかった」と一喜一憂することもあると思います。
しかし、第三者評価の結果は、通知表ではありません。評価結果には、第三者から見た一つの視点が示されているだけです。
大切なのは、その視点をどう使うかです。
・自分たちが強みだと思っていたことは、どのように伝わったのか。
・自分たちでは気づいていなかった価値が、どこに見つかったのか。
・指摘された点は、本当に自分たちの課題なのか。
・それとも、伝え方が十分ではなかったのか。
・なぜ評価者は、その点に着目したのか。
結果を受け取って終わるのではなく、自分たちでもう一度解釈することが大切です。
6 「改善点」は、同じではない
第三者評価で示される改善点については、私は大きく二つの視点で考える必要があると思っています。
一つは、安全管理や法令遵守などリスクに関わる「改善点」です。
これらは、園の理念や方針にかかわらず、必要な対応を行わなければならないものです。不足があれば確認し、速やかに整える必要があります。
もう一つは、保育実践や園運営の質に関するものです。
こちらは、単純に「欠点」と捉える必要はありません。園が目指している姿に近づくために、何が必要なのか。すでにある強みを、さらに活かすために何ができるのか、など、これからの園を考えるための材料として捉えることができる、「改善点」です。
例えば、ある取組が不足していると指摘されたとします。
そのとき、「ないから作る」で終わるのではなく、「なぜ自園にとって必要なのか」、「それによってが実現するのか」まで考える。
そうしなければ、改善しようと、即時の対応を繰り返す度に、そのための新しい書類やルールが増えていくことになります。
7 評価で得た気づきを、次の取組につなげる
第三者評価で得た気づきは、報告書をファイルにしまった瞬間に終わってしまっては意味がありません。内容を職員間で共有したいものです。
ただ、必ずしも、すべての改善課題に取り組む必要はありません。現場の改善につながるような、気になったことを一つ選び、小さく試してみる。「ちょいPのすすめ」(よねだ保育園サポート コラム「ちょいp」サイクルのすすめ 参照
しばらく続けてみる。その後、職員同士で振り返る。必要なら修正する。それくらいの小さな動きでもよいと思います。大切なのは、職員が園の状態を理解し、当事者意識をもって、主体的に取り組むことです。
一方、評価結果を中長期計画のテーマなど、法人や園の運営に関わるような課題設定に反映することもできます。
・評価を通して見えた課題を、次年度の計画に位置づける。
・取組方法を見直したのであれば、マニュアルにも反映する。
・研修が必要であれば、園内研修のテーマにする。
つまり、第三者評価だけを独立した、数年に一度のイベントにせず、日常の園運営や改善につなげていく。そうすることで、第三者評価が園の成長の一部になります。
8 第三者評価を「使う」のは、園自身
第三者評価は、どの評価機関に依頼しても、同じ結果になるものではありません。
評価機関が評価において大切にしていること、評価者が持つ専門性や経験による視点などが異なるからです。
だからこそ、評価の主導権は、あくまで「保育園」側が握ることが重要ではないでしょうか。
園自身が、何を目指し、何を行っているのかを伝える。自分たちのどこを見てほしいのかを伝える。受審後はその結果をどのように使うかを考える。そして実践と振り返りをくり返していく。
「第三者評価を受けるのではなく、使う。」
評価されるのではなく、第三者の視点を借りる。そのように向き合うことができれば、第三者評価は、単なる義務ではなくなります。
自分たちの現在地を確かめ、自分たちが大切にしてきたことを見つめ直し、次の一歩を考える機会になります。
https://note.com/yonedataro/n/n9cb3768cafdc?sub_rt=share_pw
第三者評価をどう活かすか。
その主導権は、いつも園側にあります。
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