#59✈️「シノワ!」と呼ぶ子供に、私が怒らず「名前」を教えた理由|「個人」を見せる勇気・見る敬意
「エ!シノワ!」(おい!中国人!)
アジア人を見れば、中国人だと思うらしい。
「エ!ブラン!」(おい!白人!)
白人じゃなくても、自分たちと肌の色が違えば「白人」と呼ぶ。
アフリカのある国の人口数万人の首都から離れた都市に住み始めたころ、
子どもたちによく声をかけられることがあった。
たいてい遠くから叫ぶだけで、その後笑いながら隠れたり、走って逃げたりする。
ただのいたずらの裏側に潜むもの
知らん顔すればいいレベルの、小学生のただのイタズラかもしれない。
それでも、私は素通りしたくなかった。
「ジャポネ!」(日本人!)と言われても、きっと同じようにしたと思う。
面白がられるのも嫌だけれど、それ以上に、勝手にラベルを貼られ、距離を取られることが嫌だった。
私もそこの住人だから。
ラベルだけを見るということは、その人を『個人』として見ていないということ。
無意識にその人を知るという選択肢を除外しているようなものだと思うから。
見えないものを一緒に考える
だから私は、そう言われるたびに声をかける。
「ねぇ、ちょっとこっちに来て!」
たいていの子はびっくりして、その場で固まる。
怒られると思うのだろう。
でも、待っていると、ちゃんと来てくれる。
素直なのもそうだが、大人を敬う文化で育っているのも関係しているのだと思う。
呼んで何をするかというと、
挨拶をして、自己紹介をして、名前を聞く。
それだけ。
それだけで、感情や生活がある『知っている人』になる。
「さっきの、失礼やと思わへん?」と聞くと、
ちゃんと「ごめん」と言う。
次の日からは、
私のところまで駆け寄ってきたり、
遠くからでも大きな声で名前を呼んで、挨拶してくれるようになる。
小さい子供は、抱きついてきたりもする。
本当に、簡単なこと。
相手が大人でも一方的なラベルで呼ばれれば、同じことをする。
もっとも、相手が危険のなさそうな人だと判断できればだが、
呼びはせず、自分から近付いていく。
さすがに大人は逃げたり隠れたりはしない。
少し世間話をして、私にも心があり名前があることを知ってもらうだけ。
大人も子供も、こういう小さなことの積み重ねで、差別や偏見は、少しずつ減っていくのだと思う。
世界がほんの少し変わる
「ラベルを剥がす」という行為が、そのうち目に見えるようになった。
ある日、一緒に歩いていた現地の人が、
いろんなところから名前を呼ばれる私に、大きな声で笑いながら『スターやん』と言った。
本当に笑ってしまうぐらい呼ばれる。
でも私は、ただ隣人や友人として認めてもらえたんだと感じた。
名前を呼ばれ、挨拶を交わすたびに、その土地で「個人」として認められた実感が湧いてくる。
それは、そのコミュニティに属していると認めてもらったような小さな幸せのひとつ。
やり方はひとつじゃない
やみくもに近所に知り合いを増やすのは危ない、
そう言う人もいた。
でも私は、知らない土地だからこそ、知り合いが増えたほうが安全だと思う。
大きくはない街では、黙っていても、気をつけていても住んでる場所までばれるくらい目立つのだから。
私にアドバイスをくれた人の”防犯のために壁を作る”、それもひとつのやり方かもしれないが、
私にとっては、「顔の見える関係」を”御守”にし、”信頼”に変えることでコミュニティに溶け込むことが、防犯そのものだった。
もちろん、どんな環境にも当てはまる話ではない。
これは、私の経験した環境での一例であって、
防犯やコミュニケーションの取り方は、治安や文化などに大きく依存し、
それに合わせるのが不可欠なのは理解している。
距離を保つのが最優先となる地域があるのも事実である。
知らん顔する時もある
昔、ベルギーの宿で、朝食を食べていたときのこと。
後ろから、同年代くらいの人に声をかけられた。
「おい、日本人!」
振り返る気もしなかった。
呆れた、というほうが近い。
日本人かを確認したいなら「おはよう」って言えばいいのに。
声の主は、明らかに日本人だった。
少し話したが、残念ながら良い想い出にはならなかった。
こちらは子どもではなかったから、たちが悪い。
というか、私から歩み寄る意味も気力も見出せなかった。
自分の「色」はどんな色だろうか
話しかけ方には、その人が最初に相手を見るときの「色」が出る。
「他者をどう呼ぶか」には、その人が世界をどう捉えているかが表れる。
人は、誰かを「人」として見たときに、ようやくコミュニケーションが始まるのかもしれない。
それはきっと、今の毎日に地続きのはなし。
私は、勝手な「ラベル」を貼らないように気を付けている。
正直、常に出来ているとは言えないのだろうが。
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⬇️ラベルについて考えた
