免疫でがんを治療する免疫チェックポイント阻害薬
前回はがんと制御性T細胞についての記事を書きました。
その中で免疫チェックポイント阻害薬やPD-1についても記述しました。
免疫チェックポイント阻害薬の開発とPD-1の発見をしたのが、本庶佑(ほんじょたすく)氏です。
(PD-1というのはT細胞のブレーキとなる免疫チェックポイント分子)
坂口志文氏と同じく本庶氏もT細胞の研究をして、免疫でがんを治療する研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したのです。
今回はその免疫チェックポイント阻害薬について解説しましょう。
免疫でがんを治療する免疫チェックポイント阻害薬→A
本庶佑氏のYouTube動画がありましたので、紹介します。→B
とても分かりやすい免疫チェックポイント阻害薬の解説動画がありましたので、こちらも→C
興味のあるところだけでもご覧ください。
A.免疫でがんを治療する免疫チェックポイント阻害薬
1.従来のがん治療との違い
従来のがん治療は3つの方法で、がん細胞そのものを直接攻撃するものでした。
手術
放射線
抗がん剤
これに対し免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞を直接攻撃するのではなく、患者自身の免疫力を回復させる治療法です。
つまり、免疫に再び戦ってもらう治療なのです。
2.PD-1の発見
本庶氏は1992年にPD-1(Programmed cell death-1)という免疫チェックポイント分子を発見しました。
PD-1はT細胞の表面に現れる受容体です。
当初は細胞死に関わる分子と考えられていましたが、研究が進むにつれ、T細胞の働きを抑えるブレーキ分子であることが分かりました。
PD-1が働くと、T細胞の増殖やサイトカイン(情報伝達タンパク質)産生が抑制されます。
これは自己免疫を防ぐために重要な仕組みです。
3.がんによる悪用
がん細胞はPD-1の仕組みを悪用します。
がん細胞はPD-L1という分子を作り、T細胞のPD-1に結合します。
するとT細胞は攻撃を中止する信号を受け取り、がん細胞の攻撃を中止します。
つまり、がんは免疫のブレーキを踏ませることで生き延びているのです。
4.免疫チェックポイント阻害薬の原理
そこで開発されたのが、PD-1やPD-L1を標的とする抗体医薬です。
これらの薬は、PD-1とPD-L1の結合を遮断します。
その結果、T細胞は再び活性化し、がん細胞を攻撃できるようになります。代表的な薬剤にはニボルマブ(商品名オプジーボ)などがあります。
この治療法は、進行がんでも長期生存をもたらす例が報告され、がん治療の概念を大きく変えました。
5.画期的だった理由
この研究が画期的だった理由は3つあります。
がん治療を「免疫の再活性化」という発想に転換したこと
一部の患者で劇的かつ持続的な効果が得られたこと
複数のがん種に応用可能であったこと
従来治療が効きにくかった悪性黒色腫や肺がんなどで顕著な成果が示されました。
6.限界と課題
一方で、すべての患者に効くわけではありません。
また、免疫を強めすぎることで自己免疫性の副作用が起こる場合もあります。
そのため現在は、どの患者に有効かを見極めるバイオマーカー研究や他の治療法との併用療法が進められています。
7.まとめ
免疫チェックポイント阻害薬は、「がんを直接攻撃する薬」ではなく、「免疫のブレーキを外す薬」です。
本庶佑氏のPD-1発見は、がんが免疫を抑える仕組みを解明し、それを逆転させる治療法へとつながりました。
この発見は、がん治療のパラダイムを変えたとして高く評価され、ノーベル賞受賞につながったのです。
B.本庶佑氏のYouTube動画
本庶佑氏は本庶先生のランチョンセミナーというYouTube動画で、7本の動画を上げています。
本庶先生のランチョンセミナー
1回目
私の記事よりもノーベル賞受賞者本人の解説動画の方が分かりやすいと思います。
本庶先生は一般教養の著書も書かれています。
C.免疫チェックポイント阻害薬のYouTube動画
他にも免疫チェックポイント阻害薬について分かりやすく解説したYouTube動画がありましたので、紹介します。
薬剤師試験用でかなり専門的ですが、何件か免疫チェックポイント阻害薬のメカニズムの動画を見た中では個人的に最も分かりやすかったです。
本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合は、医師等の専門家にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は3月9日(月)午前10時です。
免疫チェックポイント阻害薬と制御性T細胞との関係についての記事です。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。
