【AIマンガ】小さな茶碗

食器棚を整理していた陽菜の手が、奥のほうで止まった。
出てきたのは、小さな茶碗だった。うさぎの絵が描かれた、子供用のもの。縁が少しだけ欠けている。
「うわ、これまだあったんだ」
いつ頃まで使っていたのか、もう思い出せない。ただ、この絵柄は覚えている。ごはんを食べ終えると底のうさぎが顔を出すのが嬉しくて、毎回きれいに食べていた。そんな時期が、確かにあった。
台所で洗い物をしていた父に、陽菜は声をかけた。
「これ、もう使わないよね。捨てとく?」
慎一が振り返る。
「……ああ」
返事が、ほんの一拍だけ遅かった。陽菜はその間に気づかないまま、ゴミ袋の口を開けた。
そして翌朝。
食器棚を開けた陽菜は、そこで固まった。
「……戻ってる」
捨てたはずの小さな茶碗が、いつもの位置に収まっていた。しかも、きれいに洗われて。
その朝の食卓で、陽菜は何も言わずにその茶碗を手に取った。ごはんをよそって、いつも通りに食べる。
「……ちょっと少ないけど、まあいいや」
「……そうか」
新聞の陰から、短い返事が聞こえた。父はこちらを見ていない。ただ、明らかに気にしている。
捨てられなかったのは、たぶん茶碗じゃない。
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