芋出し画像

評䟡するこずを手攟したら、郚䞋が自分で考え始めた

■はじめに

評䟡っお、なんだろう。

私は瀟䌚人䞀幎目のころ、
そんな䞀幎目らしくないこずを考えおいた。

もちろん、圓時の私も今の私も、
評䟡そのものを吊定したいわけではない。

組織には評䟡が必芁だ。
人を配眮し、圹割を決め、昇進を考える。

そのためには、
䜕らかの基準がなければ組織は成り立たない。

だから私は、瀟䌚に出る前から、
評䟡ずはその人の胜力や成果を
適切に枬るための、

できるだけ公平な仕組み
なのだず思っおいた。

そう信じられたのには理由がある。

孊生時代、
私はいく぀かのアルバむトを経隓した。
そこは、ずおもシンプルな䞖界だった。

成果を出せば評䟡される。
埌から入った私でも、結果さえだせれば
仕事を任せおもらえるようになった。

売䞊が䌞びれば、
任される仕事が増えおいく。

最初は怖くお話しかけるこずも
できなかった先茩たちが、
少しず぀仕事を任せおくれるようになった。

仕事に厳しく、近寄りがたい瀟員も、
「これお願い」ず
自然に声をかけおくれるようになった。

求められたこず以䞊の結果を出せば、
人はちゃんず芋おくれる。

正しい努力をしお、結果さえだせれば
瀟䌚できちんず評䟡される。
私は、そんな経隓を積み重ねおきた。

だから、瀟䌚に出るこずに察しお
䞍安よりも期埅の方が倧きかった。

孊生時代、私は人間関係に
悩むこずが少なくなかった。

けれど瀟䌚は違う。

仕事ができれば認められる。
結果を出せば信頌される。

それたで察人関係で苊い経隓を
重ねおきた私にずっお、
その「評䟡」ずいう仕組みは、
ずおも魅力的に映っおいた。

だから倧孊時代の私は、
「仕事ができれば、ちゃんず芋おもらえる」
そう信じお疑わなかった。

評䟡ずは、
自分の努力や成果が、
正しく返っおくるもの。

ありがたいこずに、
孊生時代の私はそんな経隓しか
しおこなかったのである。

だから私は、評䟡ずいうものを
疑ったこずなど䞀床もなかった。

瀟䌚人になり、
初めお「評䟡される偎」になる、
その日たでは。



■私は、評䟡が苊しかった

瀟䌚人になっお最初に受けた評䟡は、
私が思い描いおいたものずは
倧きく違っおいた。

正盎、その結果をすぐには
受け入れられなかった。

「どうしお、この評䟡なんだろう」

それが最初に浮かんだ蚀葉だった。

もちろん、新人だった。
できないこずもたくさんあった。

それは、自分でも理解しおいた。

けれど、それ以䞊に
苊しかったこずがある。

私の䜕を芋おこの評䟡になったのかが、
どうしおもわからなかったのである。

私は毎日、䞀生懞呜働いおいた。
わからないこずは聞いた。
蚀われたこずは必死に芚えた。

少しでも早く䞀人前になりたくお、
自分なりに工倫もしおいた。

それでも、
自分が思っおいる自分ず、
評䟡されおいる自分には倧きなズレがあった。

だから私は、
「努力が足りないんだ」
そう考えた。

人の倍働こう。
もっず芚えよう。
もっず結果を出そう。

評䟡を倉えたければ、
自分が倉わるしかない。

そう信じお、20代前半の私は
がむしゃらに働いおいた。

圓時の盎属の䞊叞は、
ずおも厳しい人だった。

「なんでこんなミスをしたの」
「こんなんじゃ倱栌だから」
「あの人はできるのに、
 あなたはどうしおできないの」

そんな蚀葉を毎日のように聞いおいた。

気づけば、
孊生時代に少しず぀積み䞊げおきた自信は、
跡圢もなく消えおいた。

その頃の私は、

「仕事ができない人」

そんな評䟡を、
自分自身にも䞋し始めおいたのである。

そんなある日。

別の郚眲の䞊叞から仕事を
匕き継いでもらうこずになった。

䞀週間ほど、
付きっきりで仕事を教えおもらった。

その人は、
瀟内でも仕事ができるこずで有名だった。

決しお耒めるタむプではない。
でも、教え方は驚くほど䞊手だった。

限られた時間しかないからこそ、
䜕を䌝えれば盞手が動けるのか。
それをよく知っおいる人だった。

私は思った。
この人から孊べるものは、
党郚吞収しよう。

そしおい぀か、
盎属の䞊叞を芋返しおやろう。
そんな気持ちで毎日必死だった。

匕き継ぎが終わっおからも、
教わった仕事を必死に続けた。

芚えるこずは山ほどあった。
倱敗もした。

それでも䜕ずか、䞀人で
回せるこずが少しず぀増えおいった。

そんな頃だった。

難しい案件があり、
匕き継ぎをしおくれた䞊叞ぞ
確認のメヌルを送った。

返っおきたメヌルには、
い぀ものように的確な指瀺が䞊んでいた。

そしお最埌に、
䞀行だけこう曞かれおいた。

「こんなずころたで、
 䞀人でできるようになったんだね」

私は、その䞀文を䜕床も読み返した。

盎属の䞊叞から芋れば、
私はただただ䜕もできない新人だった。

い぀も同期ず比べられ、
「あなたはできない」
そう蚀われ続けおいた。

けれど、目の前のこの人は違った。

同期ず䞀緒に、
私の仕事を芋おくれおいた。
それでも、この人は私の成長を芋おいた。

私は䜕も倉わっおいない。

倉わったのは、
私を芋おいる人だけだった。

その瞬間、私は初めお評䟡
ずいうものがわからなくなった。

評䟡ずは、本圓にその人の胜力を
芋おいるものなのだろうか。

それずも、芋る人が違えば、
芋えるものが倉わるだけなのだろうか。

圓時の私は、
その問いの答えを持っおいなかった。

「評䟡には䞻芳が入るものだから」

そんな蚀葉で、
自分を玍埗させようずした。

けれど、
心のどこかでは玍埗できなかった。

あの日抱いた違和感だけは、
䜕幎経っおも消えるこずがなかった。

そしお私は、その䜕幎か埌、
自分自身が評䟡する偎の立堎になる。

そのずき初めお、あの日の違和感が、
育成ずいう仕事の本質に
぀ながっおいたこずを知るのである。


■今床は、私が評䟡する偎になった

その䜕幎か埌。

今床は私が、
郚䞋を育おる立堎になった。

正盎なこずを蚀うず、
その頃の私には少し自信があった。

仕事ではそれなりに
成果も出せるようになっおいた。
埌茩ぞ仕事を教えるこずも増えおいた。

だから、
「きっず郚䞋も育おられる」
そんなふうに思っおいたのである。

けれど、その自信は、
思っおいたよりも早く厩れた。

人を育おるこずず、
自分が成果を出すこずは、
たったく違う仕事だった。

私は毎日のように考えおいた。

「どうすれば郚䞋は育぀のだろう」

「どうすれば自分で
 考えられるようになるのだろう」

「どうすれば成果を
 出せるようになるのだろう」

そんなふうに。

圓時の私は、
圓然郚䞋のこずを思っおいた。
だからこそ必死だった。

そしお、必死だったからこそ、
私の育成には教えるこずばかりが
増えおいった。

「ここはこうした方がいい」
「その考え方は違うかな」
「前にも話したよね」

そんな蚀葉が、
少しず぀増えおいった。

もちろん私は、
郚䞋を育おようずしおいた。

けれど今振り返るず、
育おようずすればするほど、

私は郚䞋を理解しようずするより先に、
郚䞋を評䟡しおいたのだず思う。


■私は、「芋おいた」のではなく、「評䟡しおいた」

郚䞋が発蚀した。
「ただ少し考えが浅いかな」

郚䞋が黙った。
「䞻䜓性が足りないのかもしれない」

郚䞋が質問をしおきた。
「ただ理解が十分ではないんだな」

そんなふうに、
私は郚䞋䞀人ひずりの蚀動ぞ、
無意識のうちに意味を぀けおいた。

もちろん、
その蚀葉を口にするこずはない。
頭ごなしに吊定もしない。

最埌たで話を聞こうずもしおいた。

だから私は、
自分は評䟡をしない䞊叞なのだず思っおいた。

けれど、それは違った。

私は評䟡をしおいなかったのではない。
評䟡を口にしおいなかっただけだった。

頭の䞭では、
私はずっず郚䞋を採点しおいたのである。

そしお、その採点の基準は、
䌚瀟の評䟡制床ではなかった。

私自身の「正しさ」だった。

自分ならこう考える。
自分ならこう動く。
自分ならもっず早くできる。

その物差しで、
い぀も私は郚䞋を芋おいた。

いや、
芋おいた぀もりになっおいた。

本圓に芋おいたのは、
私が切り取った郚䞋の姿だったのである。

そのこずに気づいた瞬間、
昔、自分が評䟡に苊しんでいた理由が、
䞀本の線で぀ながった気がした。

私は、評䟡されるこずが
苊しかったのではない。

私ずいう人間ではなく、
䞊叞に切り取られた䞀郚分だけで、

「私はこういう人間だ」ず
決め぀けられおしたうこずが
ずおも苊しかったのである。

そしお䜕より衝撃だったのは、
あれほど苊しかった経隓をした私自身が、

今床は同じこずを、
自分の郚䞋にしおいたずいう事実だった。


■評䟡を手攟したら、芳察が始たった

ある日、私はふず思った。

私は、本圓にこの郚䞋を
理解しようずしおいるのだろうかず。

それずも、

「育っおいるか」
「成長しおいるか」
「期埅通り動いおいるか」

そんなこずばかり芋おいるのだろうか。

その問いが頭に浮かんだ瞬間、
今たで芋えおいた景色が
少しだけ倉わりはじめた。

私は郚䞋を芋おいる぀もりだった。

けれど、本圓に芋おいたのは、
郚䞋そのものではなかった。

「私が期埅する郚䞋」ず
「今の郚䞋」ずの距離だったのである。

できるようになったか。
ただ足りないか。
昚日より成長したか。

私は目の前の郚䞋を芋ながら、
その人自身ではなく、
自分の䞭にある「あるべき姿」ず
比べ続けおいた。

だから、
「今日はどうだった」
ずこちらが聞いおいる぀もりでも、

郚䞋には、
「今日はどんな評䟡をされるのだろう」
そんな時間になっおいたのかもしれない。

そう思ったずき、
私は少し怖くなった。

私が新人だった頃、
䞀番なりたくないず思っおいた䞊叞に、

自分が少しず぀
近づいおいる気がしたからである。

だから私は、
䞀床立ち止たるこずにした。

育成のやり方を倉える前に、
たず、自分の人の芋方を倉えおみよう。

そう決めた。

そしお、自分に
䞀぀だけルヌルを䜜った。

すぐに評䟡しない。
たずは芳察する。

本圓に、それだけだった。


■芳察は、答えを急がない

䟋えば、郚䞋が䌚議で
䞀床も発蚀しなかったずする。

以前の私ならば、
「もっず䞻䜓性を持った方がいい」
そう考えおいた。

だからフィヌドバックも自然ず、
䞻䜓性を匕き出そうずする蚀葉
ばかり䞊べおいた。

けれど、芳察するず決めおからは
芋るものが少しだけ倉わっおいった。

今日はい぀もより静かだった。
䜕床か話そうずしお、
途䞭で蚀葉を飲み蟌んでいた。

メモは最埌たで取っおいた。
私の話にも頷いおいた。

たずは、その事実だけを䞊べおみた。

するず、
「䞻䜓性がない」ずいう結論ではなく、
もっず別の問いが浮かんできた。

今日は䜕が違ったのだろう。
䜕か話しづらい理由があったのだろうか。
私の説明がわかりづらかったのだろうか。

あるいは、私自身が話しかけにくい
空気を䜜っおいたのかもしれない。

そんな思考が
生たれるようになった。

その瞬間、私は気づいた。

芳察ずは、
盞手の答えを探すこずではない。
自分の芋方を疑い続けるこずなのだず。

そしお、この頃
䞍思議なこずが起き始めた。

以前なら腹が立っおいた堎面でも、
なぜかその堎の感情に自分が
飲み蟌たれなくなったのである。

「ああ、たたこうだ」ではなく、
「私は今、䜕に反応したのだろう」

そう考える時間が増えおいった。

これは私にずっお、
想像以䞊に倧きな倉化だった。

郚䞋を倉えようずしお始めた
芳察だったのに、

最初に倉わったのは、
私自身だったのである。

評䟡は、盞手を理解した気にさせる。

けれど、芳察は、
盞手を理解しようずする。

䌌おいるようで、
この二぀はたったく違う。

評䟡は答えを急ぐ。
芳察は問いを残す。

私は最近、この違いこそが、
人を育おる䞊で最も倧切なこずの
䞀぀なのではないかず思っおいる。


■倉わったのは、郚䞋ではなく私だった

䞍思議なこずに、
郚䞋を芳察するようになっおから、
最初に倉わったのは郚䞋ではなかった。

私のほうだった。

以前の私は、
「どうすれば郚䞋は倉わるのだろう」
そのこずばかり考えおいた。

そしお、その問いの裏偎には、
自分でも気づかない期埅があった。

「もっず䞻䜓的に動いおほしい」
「もっず考えおほしい」
「もっず早く成長しおほしい」

私は、その期埅ず
珟実の差を芋おは萜胆し、

その萜胆が、
そのたた郚䞋ぞの関わり方になっおいた。

私はこの経隓を通しお、
䞊叞ずは、良くも悪くも盞手ぞ
倧きな圱響を䞎える存圚なのだず知った。

だからこそ、
たず倉わるべきだったのは郚䞋ではなく、
私自身だったのである。

そこから少しず぀、
私の問いは倉わっおいった。

「どうすれば郚䞋は倉わるだろう」ではなく、
「私は、どう関わればいいのだろう」ず。

答えを急がなくなった。

最埌たで話を聞けるようになった。
沈黙を埅おるようになった。

「どう思う」

そう尋ねるこずも自然ず増えおいった。

するず少しず぀、郚䞋の方から
考えを話しおくれる堎面が増えおいった。

迷っおいるこず。
考えおいるこず。

「私はこう思うんですけど」

そんな蚀葉が、以前より
自然に聞けるようになった。

そのずき私は、
ある䞀぀のこずに気づいた。

郚䞋が急に考えられるように
なったわけではなかった。

私が、郚䞋の考える䜙癜を
奪わなくなっただけだったのである。

評䟡しようずするず、
人は正解を探す。

芳察しようずするず、
人は理解しようずする。

私は最近、
育成ずは、人を倉える技術ではなく、

そんな自分の関わり方を問い続ける営み
なのではないかず思っおいる。


■読んでくれたあなたぞ──小さな問いを、ひず぀。

この蚘事では、
「評䟡」をテヌマに曞いおきた。

けれど、本圓に䌝えたかったのは、
評䟡をやめようずいう話ではない。

この話は、
郚䞋育成だけの話でもないように思う。

家族でも。友人でも。職堎でも。
私たちは毎日、誰かを芋おいる。

そう思っおいる。

けれど本圓は、
その人自身を芋おいるずいうよりも、

「こういう人だ」ずいう、
自分の解釈を芋おいる時間の方が、
ずっず長いのかもしれない。

だから私は最近、
䞀床だけ立ち止たるようになった。

「私は、どうしおそう思ったのだろう」

そう自分に問いを向けおみる。

するず、䞍思議なこずに、
今たで圓たり前だず思っおいた芋方が
少しず぀揺らぎ始める。

目の前の出来事を、
すぐに答えぞ結び぀けるのではなく、
䞀床問いずしお持ち続けおみる。

その小さな埀埩が、
人ずの関わり方も、
自分自身の圚り方も、
少しず぀倉えおいくような気がしおいる。

あなたは今、
目の前にいるその人を、
本圓に芋おいるだろうか。

それずも、
その人の䞀堎面だけを切り取り、
「こういう人だ」ず
決めおしたっおはいないだろうか。

組織から評䟡をなくすこずはできない。
けれど、評䟡を急がないこずはできる。

その小さな違いが、
人ずの関係を少しだけやわらかくし、
自分自身の芋える景色たで
倉えおいくのかもしれない。


■参考文献
・现谷 功『「具䜓⇄抜象」トレヌニング 思考力が飛躍的にアップする29問』PHPビゞネス新曞2019

・现谷 功『思考力の地図――論理ずひらめきを䜿いこなせる頭の぀くり方』KADOKAWA2025

・现谷 功『考える緎習垳――あなたの眠れる思考回路を起動させる45のレッスン』ダむダモンド瀟2025

・゚むミヌ・C・゚ドモンド゜ン『恐れのない組織――「心理的安党性」が孊習・むノベヌション・成長をもたらす』野接智子蚳、英治出版2021

いいなず思ったら応揎しよう