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あるOL彼女④〜What's Contest?〜君は天然色 【前編】


「無理無理、絶〜っ対ムリ!」

手渡された服をみて、彼女は大きく右手のひらを振った。
無理もない「手渡された服」とは、女性たちの「良きも悪きも」学生時代を思い出させる制服、『セーラー服』だった。

彼女の県立高校の指定服は「ブレザースタイル」だったから余計、拒絶したのかも知れない。

そもそも「なぜ、社会人にもなって、セーラー服を着るのか?」だった。

先だって行われた「この研修を振り返って、あなたは何を学びましたか?」という、「レポートの発表会」だってそうだ。どこか『昭和レトロ』感が漂う会社行事に彼女は困惑していた。

なのにまた、しかも今度は「〇〇(親会社)グループ主催 コスプレコンテスト」という、現代社会のコンプライアンスに『大いに抵触』するような催事をしようとしているのだから。

まぁ、そこを何とか。入賞者には金一封と温泉旅行がつくんだよ。ね?頼まれて?

依頼主とは他でもない、あの「おかず泥棒にして、レポート発表会の時の影の立役者の彼女」なのだ。

(会社も何を考えてるんだか…グループを挙げてのコスプレコンテストなんて…セクハラとかいう言葉は当社には無いのかな…?)

私が出ても『コスプレになんない』からさ。エントリーだけでも、ね?

エントリーって?エントリーシートが必要なの?入社時のような?アレみたいな?

そ、偽装防止だって

「(そこまでしてするか…)」彼女はうつむきながら考えた。「…ちょっと、考えてもいいかな?」

エントリー締切は明後日だから、明日には返事ちょうだいね。じゃ。良い返事待ってるよ〜

そう言い残すと、依頼主はさっさとロッカールームを後にした。

残された彼女は「手渡された服」を紙袋に入れて、そのままアパートに持ち帰った。


次の日の昼休み、「依頼主」は満面の笑みを浮かべて、彼女の返事を聞きに来た。

ね?考えまとまった?引き受けてくれるよね?

(まだOKともなんとも、言ってないんだけど…)」彼女は、持っていたランチBOXを置き、意を決したように言った。

…わかった。今日、定時にベンダーステーションに着替えていけばいいのね?

サンキュ!きっと似合うと思うから、あ、イヤリングとネックレスは外しておいてね

「(そこまで喜ぶなら、自分が着て出ればいいのに…)」残りのお弁当を麦茶で流し込んで、足早にテラスを後にした。


(ふぅん、セーラー服ってこんなになっているんだ。でもなんで世のオジサマ方が喜ぶんだろう?)

彼女らの世代には『ブルセラ』なる言葉があった事すら知らない。ただ、コンビニで買い物をすることが多いので、そういった書籍が目につくので、一応は知っていた。

彼女は、ベンダーステーションに着くまでカーディガンを羽織っていった。社内とは言え、いや、会社内だからこそ「セーラー服のまま社内をうろつく」などとは、こっけい以外、何者でもなかった。

待った〜?お、似合ってそうじゃん?悪魔のような微笑みを浮かべ、依頼主が現れた

コレって、学生時代に着てたものなの?」そう言いながら、彼女は羽織っていたカーディガンを取り、膝下に置いた。何しろ膝下がやけに短い。会社の制服のプリーツスカートも結構短いが、それの上をいくほど更に短い。

おぉ!スッゴイ、似合ってんじゃん」そういいながら、早速、スマホで写真を撮る依頼主。

(エントリーシート用の証明写真だけで、そんなに数が必要なのかな?)」不思議そうにスマホを覗く彼女に対し、依頼主は冷静だった。

「うたぐった顔してるよ。ほら、サービス・サービス!」

カシャカシャと無機質な音が幾度となくベンダーステーションをこだました。ここには彼女含め数人が、休憩していた。

依頼主は近寄ってみたり、角度を変えたりと、まるでグラビア撮影のカメラマンのようだった。

十数枚(!)撮り終えて「おごりの」お茶を飲みながら、彼女と依頼主は撮影した画像をタブレット端末で確認していた。

これもいいなぁ、あコレも。意外と制服映えするんじゃない?」依頼主は意味不明な事を言う。

「(制服映えって言葉初めて聞くけど…。しかも意外って、褒め言葉…ん〜、でも昨日、試着した時とはちょっと感じが違うなぁ)」紙コップを手にしながら画像を見る彼女。

慣れた手つきで、画像をスワイプしたりピンチして見せてくれる依頼人、うち数枚が依頼主の眼に止まった。

コレなんか自然な感じで良いんじゃない?初々しくて、最近まで着てましたって感じがするよ

(また勝手なことを…)確かに半年前まで学生だったけど、セーラー服は初めてなんだよね、しかもこんなに短い丈のスカートは」と、つぶやき、『戸惑いながらも、怖いもの見たさ』な感じで、自分のセーラー服画像を眺めていた。

オフホワイトの生地に紺色の襟、三本の白いラインは角を丸く刺繍してあつらえてあった。濃い水色のスカーフは胸元をひときわ目立たせるアクセサリーだった。

人生初のセーラー服

よし、コレでいこう!」依頼主がピックアップした画像は、

紙コップを手にし、少しはにかむ表情をしたセーラー服の彼女』だった。

「(……これがわたし?ハタから見ると妙な感じね。他人にはこんな風に映るんだ…)」

かくして「エントリーシート」は出来上がり、依頼主は嬉々ききとしてそれを「エントリーボックス」に投函していった。

彼女は「バカげたセーラー服」から「普段の通勤スーツ」に着替えると、服をきれいに畳んで紙袋に詰め入れ、帰路についた。


アパートに着いて、彼女はなぜかしら、もう一度、紙袋の服に袖を通してみたい衝動に駆られた

襟を立てスカーフを三角に折り、胸のスカーフ留めに通す。脇のファスナーを閉め、『短いだろ』とひとりツッコミを入れながらプリーツスカートを履いていく。社会人になってから、久しくつけなかった白いクルー丈のソックスを履いた。

母校とは違う制服


ドレッサーのミラー越しに現れた彼女は、依頼人の言うように「制服映え」した「もうひとりの彼女」だった

(後編に続く)


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