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「ままならなさ」と「静かな恐怖」|今週の【インプット】振り返り

【インプット】振り返り|10月19日~25日

女性の友情、宇宙の密室、静かな恐怖──
濃密な物語に包まれた一週間だった。

🎧 10月19日(日)

『ままならないから私とあなた』朝井リョウ(2016年/Amazon Audible)

天才少女と呼ばれ、成長するにつれて無駄を切り捨てていく薫と、無駄にこそ人のあたたかみが宿ると考える雪子。

価値観が対立する女性の友情と人生の行方を描く物語。
どちらが正しいということではなく、すれ違いから生まれる“ままならなさ”が、たまらなく切ない。女性の内面を、女性が読んでも違和感なく描ききる朝井リョウの凄みを堪能した。

🎧 10月20日(月)

『星くずの殺人』桃野 雑派(2023年/Amazon Audible)読んでいる間じゅう息苦しかった。空気も水もない宇宙で過ごすこと。

果てしなく広いのに、開放感はいっさいない“究極の密室”で、次々と起こる殺人事件。

登場人物はいずれも一癖ある乗客……ではあるのだが、もう一ひねりほしいかも。
たとえば、無料宇宙旅行に当選した高校生・真田周がとても魅力的。
彼女、もっと活躍してもよかったのでは? と思ったら、続編『蠟燭は燃えているか』にも登場しているらしい。
ムム、読まねば。

📘 10月21日(火)

『白昼の死角』高木彬光(1959年/Kindle Unlimited)

60年以上前のピカレスクロマンだが、令和の今読み返すと『仁義なき戦い』の知能犯罪版という印象。
戦争・兵役を経験した戦中派にとって、敗戦は国家の裏切りにも等しい。
戦争責任者を自国ではなくアメリカによって裁かれるという敗者の現実。
その空気が物語の底に沈殿している。

📽 10月22日(水)

「94歳のゲイ」監督:吉川元基(2024年/Amazon Prime Video)

大阪・西成で一人暮らしを続ける94歳の長谷忠さんを追うMBSのドキュメンタリー。
ゲイであることを隠し続け、「いない者」として扱われながら孤独に生きてきた長谷さん。
彼の人生を支えたのが詩作だ。「現代詩手帖賞」を受賞した詩人としての矜持が、孤独を支えてきたに違いない。
性的指向にかかわらず、後期高齢者が一人で自立して暮らすこと自体が、どれほどチャレンジングかを思う。

🎧 10月23日(木)

『月の裏側』恩田陸(2000年/Amazon Audible)

人がいつのまにか“人間もどき”と入れ替わっている世界。
美しい水郷の影に隠された秘密とは?

探偵役の塚崎多聞が、ズルいくらい魅力的。
そして、彼の恩師である元大学教授・協一郎も高齢ながら実にカッコいい。
翻訳家の柴田元幸さんをイメージしながら読んだ。
多聞を演じるキャラクターは……思い浮かばない。
誰がいいだろう?

恩田陸の文体のうまさに打ち震える。
物語展開もさることながら、仮にストーリーがどう転んでも、多聞と協一郎、協一郎の娘・藍子の会話や、飼い猫・白雨の動向を眺めているだけで満足できる。
そんな恩田陸ならではの小説。

🎧 10月24日(金)
『ノスタルジア』島本理生(2025年/Amazon Audible)

Audible独占配信。
『月の裏側』とは別種の怖さ。

前者が外界から侵食される恐怖だとすれば、『ノスタルジア』は内面の深部から死や狂気に誘われる恐怖。

島本理生のきめ細やかな文体が、静かに“こちら側”を侵食して、死へと誘うというか……。
トラウマを抱える登場人物たちの心理が、極限まで繊細に描かれるから、フィクションでありながら手触りがある。

「呪いと祝いとでは、呪いの方が強い」
この一節に背筋が冷えた。
ベッドで聴いていたが、「これは明るい時間に聴こう」と途中でスマホを閉じた。
だからといって、決しておどろおどろしい物語ではない。
むしろ物語の肌触りは上質な絹織物のようで、快楽的である。

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