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【WAIS】「処理速度が遅い」僕は"潜水艦"タイプ?――"高速船"に憧れるのをやめ、深い思考の強みを活かす方法

「もうちょっとレスポンスよくできないかなあ」

会議室の、重い沈黙。
上司から投げかけられた想定外の質問に、僕の頭は完全にフリーズしていた。「えーっと…」と言葉を濁す僕を、いぶかしむような視線が突き刺さる。結局、気の利いた答えなど何一つ出てこないまま、別の誰かが快活な声で議論をかっさらっていった。

まただ。また、タイムアップ負けだ。

子供の頃から、僕はいつもそうだった。議論のテンポについていけない。気の利いた切り返しができない。みんなが笑っているジョークの意味が、数分遅れて分かったりする。

その長年の謎が解けたのは、心理検査(WAIS-IV)を受けた日のことだった。言語理解や知覚推理といった他の指標に比べて、「処理速度」の数値だけが、がくんと谷底のように落ち込んでいたのだ。僕の「反応の遅さ」は、気のせいでも、努力不足でもなく、脳の仕様だった。

そうだったのか……と絶望しかけた僕に、心理士の先生はこう言った。

あなたの脳は、水上を駆け抜ける“高速船”じゃなく、きっと、静かに深海を探査する“潜水艦”なんです。潜るのには、時間がかかるんです」

社会は「高速船」を褒め称え、僕ら「潜水艦」は存在を疑われる

心理士の先生の言葉を借りるなら、現代社会、特にビジネスの現場は「高速船」の性能を高く評価する。反応が速いこと、次々とタスクをこなすこと、会話のラリーを軽快に続けること。水面に見える華やかな水しぶきこそが、「優秀さ」の証だとされる。

一方で、僕たち「潜水艦」は、水面からはその存在すら見えない。一つの情報を深く、多角的に吟味するために、ゆっくりと深海へ潜っていく。その沈黙の時間を、社会は「何もしていない」「考えていない」と判断する。

問題は、能力の優劣ではない。得意な領域が、「水上」「深海」 か、というだけの違いなのだ。それなのに、僕たちは「なぜ自分は高速船のように走れないんだ」と、存在しないはずのエンジンを無理やり回そうとして、心をすり減らしていく。

nattou, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons

「潜水艦」の艦長として、深海のポテンシャルを活かす5つの戦術

とは言え、僕たちは一生、深海に隠れているわけにもいかない。高速船たちと協働し、港(ゴール)を目指さなければならない。ならば、高速船になろうとするのではなく、「潜水艦のプロ」として立ち回るべきだ。

以下は、僕が「潜水艦の艦長」として、日々の業務(航海)で実践している5つの戦術だ。

1. 事前に「航路図(アジェンダ)」を入手する

潜水艦は、やみくもに潜らない。目的地も分からず潜航すれば、座礁するだけだ。会議や打ち合わせという航海に出る前には、必ずその「航路図」、つまりアジェンダや資料を事前に入手する。どこへ向かうのかが分かっていれば、僕たちは誰よりも深く、的確な潜航準備ができる。

2. 「一度、潜ります」と宣言する(持ち帰り検討)

会議で即答を求められた時が、一番危険な場面だ。焦って浅い答えを出すのは、潜水艦が無理に水面を走ろうとするようなもの。そんな時は、勇気を持ってこう宣言する。「しっかり検討したいので、少し時間をいただけますか」と。これは「考えていません」という白旗ではなく、「これから深海探査に入ります」という、プロとしての応答なのだ。

3. 「探査ログ(テキスト)」で勝負する

口頭でのリアルタイムな議論は、高速船の独壇場だ。僕たち潜水艦の主戦場は、非同期のテキストコミュニケーションにある。Slackのスレッド、議事録のコメント、企画書のレビュー。じっくりと時間をかけて思考を練り上げ、完璧な文章という名の「探査ログ」として提出する。そこには、高速船ではたどり着けない深さの洞察が記されているはずだ。

潜水艦の通信事情:
深く潜った潜水艦には地上の電波が届かないため、外部との通信方法は極端に限られる。基本的には、潜航中の潜水艦には地上から(数単語の)ごく短い命令が一方的に届くだけで、潜水艦から返信することはできない。
​詳細な報告が必要な時は、海面に浮上してアンテナを出すしかないのだ。潜水艦の任務はリアルタイムで応答することではなく、静かな深海で思考し、分析することにある。

4. 「単独潜航(一人での作業)」の時間を確保する

潜水艦が最もその性能を発揮するのは、静かな深海に単独でいる時だ。僕たちの脳も同じ。誰にも邪魔されない「単独潜航」の時間を、一日のうちに意識的に確保する。この時間こそが、僕たちの価値が生まれる源泉だ。

5. 「ソナー」で事前に関係値を築く(根回し)

艦隊(チーム)での大規模な作戦(重要な会議)の前には、ソナーを使って個別に通信を行うように、キーパーソンと1対1で話しておく。これにより、相手の考えを事前にゆっくりと咀嚼でき、会議というリアルタイムの場で慌てずに済む。これもまた、潜水艦ならではの重要な戦術だ。

もちろん、このやり方では、高速船たちが楽しんでいるような、雑談交じりの華やかなブレストの輪には入れないかもしれない。だが、それでいい。僕たちの任務は、水面のきらめきではなく、深海の真実を探し出すことなのだから。

高速船になるな、最高の艦長になれ

「処理速度が遅い」という評価に、もう傷つく必要はない。それは欠陥ではなく、あなたが「潜水艦」であることの証明だ。

水上を滑る高速船を羨むのはやめよう。僕たちは、自分の艦の特性を誰よりも理解し、そのポテンシャルを最大限に引き出す、最高の艦長になるべきなのだ。

あなたの“潜水艦”は、どんな時に最も深く、快適に潜ることができるだろうか?
あなたが使っている「深海探査術」があれば、ぜひコメントで教えてほしい。


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