会議中に思考停止でallowを押し続けたら、判断できない管理職になる予感がした
会議中、画面の隅でAIエージェントが求めてくる「allow」か「deny」かの確認通知。議論を止めないまま指先だけでそっとallowを押した瞬間、ふと背筋が冷えた。このまま考えずに押し続けたら、自分はいずれ「判断する人」ではなく「ハンコを押すだけの管理職」になるんじゃないか。

きっかけは、複数のAIを並行で動かすようになったことだった。
最初は単純に便利だと思っていた。
資料の下調べをAIにやらせながら会議に出れば、時間が二重に使える。
そう考えて、会議中でも遠慮なくAIを走らせるようになった。
気づけば、1つの会議の裏で3つも4つもAIが並行で動いている状態が当たり前になっていた。
ところが実際にやってみると、思っていたのと少し違う感覚がある。
人の話を聞きながら、頭の片隅では常にAIの進捗が気になっている。
スマホがちらっと光ってallow/denyの通知が来ると、会話への相槌を打ちながら反射で画面を見て押す。
「ここで止めたらもったいない」という思考が、いつの間にか体に染み付いていた。
正直、仕事の進み方はかなり変わった。
以前、AIエージェント時代に管理職スキルが武器になる理由について書いたことがあるが、あの時感じた手応えは日に日に強くなっている気がする。
資料作成もリサーチも、会議の裏側で同時進行できる時代になった。
一方で、ふと立ち止まると「AIに使われてる感」も否めない。
自律的に動かしているつもりでも、結局は誰かがallowを押さないと先に進まない場面が必ずある。
そこで足が止まるたびに、「もったいない」と感じてしまう自分がいる。
これが積み重なると、自分は判断する人ではなく、ただ承認スタンプを押すだけの存在になっていくのではないか、という怖さが少しよぎる瞬間がある。
部下に仕事を任せられない抱え込み管理職だった頃の話を書いたことがある。
あのときのテーマは人への委任だったが、今向き合っているのはAIへの委任だ。
構造は驚くほど似ている。
「ここだけは絶対にNG」と先に決めておかないと、主導権はするりとAI側へ流れていく。
例えば、外部に送るメッセージや、お金が絡む操作は必ず自分の目を通す、といったラインだ。
ただ人間の部下と違って、AIは空気を読んで手加減してくれるわけではない。
決めたルールの外側で、平気で判断を仰いでくる。
そう分かってはいても、想定していなかった場面でallowを求められることがある。
先日も、任せたつもりの作業の途中で急に確認が来て、思わず「そこは聞かなくていいのに」と笑ってしまった。
そのたびに、なぜここで止まったのかを考え直し、また判断を挟み直すところからやり直している。
厄介なのは、この癖が会議の外にもじわじわ広がっていることだ。
家で妻と話している最中にも、スマホが光ると無意識に手が伸びる。
一瞬のつもりが、気づけば会話の流れを止めてしまっていることもある。
仕事のために取り戻したかったはずの時間が、また別の形で溶けていく感覚がある。
時間を取り戻すためにAIを使い始めたのに、気づけば時間の主導権をまた別のものに渡していた、という笑えない話だ。
AIに振り回される人の特徴について以前触れたことがあるが、境目は「任せているか」「流されているか」の一点にある気がしてきた。
全部を手放すことも、全部を自分で判断することも、たぶんどちらも違う。
どこに自分の判断を残すかを、あらかじめ意識して設計する。
それが今の自分に必要な調整なんだと思う。
allowを押す指を止めて、一度「これは本当に自分が決めていいことか」と聞き直す。
その一手間が、任せると流されるを分ける境界線になる気がしている。

みなさんは、AIに「任せてる」つもりで、実は「流されてる」瞬間、ありませんか?
和泉澤 裕(いずみさわ ひろし)
40代・都内IT企業の中間管理職。
「テック×ライフ」をテーマに、忙しさの中でも人生の時間を取り戻すために、思考・判断・生活をどう削るかを、実体験ベースで書いています。
