部下に仕事を任せられない「抱え込み管理職」だった私が、AIを使い始めてから変わったこと
「確認させてください」と言いながら、結局自分で直していた。
3年前の私の口癖だった。部下が作った資料を受け取り、修正点を伝えるより自分で手を動かす方が早い、という判断をいつも選んでいた。説明する時間、修正が戻ってくるまで待つ時間、それをまた確認する時間
—全部合わせると、自分でやった方がコストが低いと計算していた。少なくとも、そう信じていた。

任せられなかった理由は3つに整理できる。一つは品質への不安。自分の頭の中にある「完成イメージ」を、言語化して伝えることが難しかった。二つ目は説明コストの高さ。背景情報を含めて渡すと、それだけで30分かかる。三つ目は修正サイクルの読めなさ。「1回で戻ってくる」ことは少なく、何度かやり取りが発生する。このサイクルが読めないことで、スケジュールに組み込めなかった。
結果として、重要な仕事は全部自分に集まった。部下は「この人はどうせ直す」とわかっているから、ある意味で安心して粗い仕事を出すようになった。悪循環だとわかっていたが、抜け出し方がわからなかった。
転機は、AIに仕事を任せ始めたことだった。
最初は単純な文章生成から始めた。「この内容で議事録を書いてほしい」とAIに渡すとき、私は自然と「背景情報」と「完成イメージ」を言語化する必要に迫られた。
AIには空気が読めない。何を書いてほしいか、どのくらいの長さで、誰が読む想定で——これを全部明示しないと、望む結果が返ってこない。最初は面倒だった。だがその「明示する作業」自体が、自分の頭の中にある曖昧なイメージを構造化する練習になっていた。
次に、チェックリストとドキュメントを整備するようになった。AIに作業を任せるとき、私は「やること」「やらないこと」「判断基準」を毎回セットで渡す。これが習慣になると、同じ構造で部下への依頼もできるようになってきた。「この資料を作ってほしい。目的はX、読む相手はY、含めたい要素はZ、NGはW」AIへの指示と同じフォーマットで依頼すると、戻ってくるものの質が上がった。
また、AIを「先に確認させる」使い方も始めた。部下に渡す前に、まずAIに同じ作業を試させてみる。AIが出したアウトプットを見ることで、「完成イメージ」を自分の中で明確にできる。部下への説明が具体的になるのと同時に、「ここまでできていれば合格」という基準が言語化される。
気づいたのは、AIへの任せ方と人への任せ方の構造が同じだということだ。どちらも「何を期待しているか」を明示することが先決で、それが曖昧なまま渡すと、双方にとって無駄なサイクルが生まれる。AIは「察してくれない」ので、これを痛感せざるを得なかった。
「副業と本業を両立するためにやめたこと」という記事で「仕事を削る話」を書いた。
任せることはその根幹にある。任せられなければ、何も削れない。AIに任せる練習をしたことで、人へのそれが変わった。

今でも完璧ではない。難しい仕事は手を出したくなる衝動がある。だが「任せ方の設計」を先にやることで、その衝動に乗らずに済む場面が増えた。任せることは能力の問題ではなく、設計の問題だとわかったのは、AIを使い始めてからだ。
あなたの「任せられない理由」は、何から来ていますか。
和泉澤 裕(いずみさわ ひろし)
40代・都内IT企業の中間管理職。
「テック×ライフ」をテーマに、忙しさの中でも人生の時間を取り戻すために、思考・判断・生活をどう削るかを、実体験ベースで書いています。
