家族会にとっての高次脳機能障害者支援法施行の意義〜「高次脳機能障害者支援法をいかに活用するか」座談会の補足〜 Part 3
Part 2からの続きです。
何を要求するのか
では私達は何を要求するのか?家族は行政や医療福祉の専門家ではない。現在の高次脳機能障害を取り巻く環境について客観的なデータや研究成果を分析して施策をたてられるわけでもない(いや実際には家族会という団体としては色々やってきているけどね)。
専門家としての当事者家族
一方で家族(会)は、当事者としての、家族としての、「専門家」であるわけです。行政や医療福祉には捉えきれない知見を豊富に持っているともいえるでしょう。常日頃、日常生活の中で感じていること、こんなことで困ったよ、こんなふうだったらいいんだけどなあ、たくさんありますよね。ちょっとしたことかもしれない。その場で、そのまま、意識から消えてしまうようなことかもしれない。でも、日常の実感として意識化された事柄ですよね。このような、ささいなことかもしれないけれど、日頃感じている不便や違和感、あるいは、希望を訴えていけば良いと思います。
声の集約
このような素朴な要望、生の声を集めてアピールする、それが家族会が法制化という武器を使って権利を行使することだと思います。集めた”声”はそのまま、行政に対して要求しても良いし、それらを集約して施策の形にして要望するのもいいでしょう。もちろん、施策の形にするのは支援者であり行政でありなのですが、要求するのは家族会です。
家族会として要求する
要求する主体は家族会です。冒頭の話にあった権利の主体です。これは法の概念の話として、家族会が主体となるという意味ですが、それだけではありません。もう少し現実的な、泥臭い話でもあります。
筆者は高次脳機能障害支援に20年ほど関わってきましたが、その年月の半分は、いわば行政の末端の末端のポジション(支援業務を行政から委託される立場)にいました。その際、痛感したのは、行政機構は(あるいは組織一般は、かもしれないけど)、その内部の声には耳を傾けないってことです。逆に外部の声には耳を傾けやすい、というより過敏、過剰に反応することすらあるように見えます。
たとえ要望の集約・施策化・理論化などは支援者などの専門家によるとしても(2026年6月13日の法制化講習会でも、期せずして、尾関氏、石渡氏二名のパネリストがともに”伝え方”の重要性を指摘しておられましたね)、行政への要求自体は家族会が実行することが有効なのです。いいかえると、圧力団体としての家族会の側面を活かそうというわけです。
権利行使の主体としての当事者意識
圧力団体云々はともかく、大事なことは私達が”主体”であること。私達が権利の”主体”として動くこと。別の言い方をすれば、私達当事者・家族(あるいは家族会という言い方でも同じだけど)が、法に基づく権利を行使する、まさにその”当事者”として、当事者意識を持てるか否か、という課題です。
すでに述べたように法律そのものは空虚な器でしかない。今までの経緯からして、行政が積極的に内容を盛ってくれることは期待し難いのではないか。つまり待っていても、誰かが中身を作ってくれるわけではない。であれば、自ら動く、すなわち、私達自身が中身を作っていくしかない。
白馬の王子様を待つのでなく
ある心理学者の言葉です。「私達の心の中には、白馬の王子様が助けに来てくれるのを待つプリンセスがいる。」。人は誰しも、問題を誰かが解決してくれるのを待ってしまいがち、それが人間というものだというわけです。
であれば、私達は、待つことをやめて、自ら動くことを意識化する必要がありますよね。待っていたところで、白馬の王子様は来てくれないことが明白なのですから。今どき、ハリウッドの映画にだって、白馬の王子様がプリンセスを助けるなんて陳腐なプロットはありませんよね。50年近く前の「エイリアン」ですら、剣をとりドラゴンに立ち向かい退治するのは、プリンセス自らだったのですから。
*2025年の「スーパーマン(ジェームズ・ガン監督作品)」に至っては、クライマックスでスーパーマンは現れない、自分たちで戦うプロットを採用していました。
望ましい社会の実現に向けて
何を要求していくのか、私達当事者家族自らが考え行動すること、自ら、主体的に、自らの権利を行使していくこと、それが法制化という武器を手にした私達がとるべき行動ではないでしょうか。
それができて初めて、お仕着せではない、私達が望む支援、施策が実現できるだろうと思います。私達が望む社会の実現は私達自身の手にかかっていると言えるでしょう。その意味で、高次脳機能障害者支援法の成立を機に、私達当事者家族会の役割は今まで以上に大きくなったと言えるかと思います。
Part 4に続く。
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