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体力のない55歳、介護施設を見学して「半分はお風呂です」と言われた

「一番大変なお仕事って、何ですか?」

私が聞くと、

「今の時期は、やっぱりお風呂ですかね。暑いので」

と言われた。

そのあと、未経験のパートが担当する仕事についても聞いてみた。

「私がパートで入るとしたら、どんな仕事が多いですか?」

「そうですね。半分くらいは、お風呂になると思います」

あ、無理かもしれない。

私は一瞬、そう思った。

少し前、福祉の仕事のセミナーと就職フェアに参加した。

55歳、介護未経験の私でも歓迎してもらい、

「今からでもキャリアアップできますよ」

と言われた。

その気になりやすい私は、かなり気分よく帰った。

介護は、その時点で私の中の選択肢の70%くらいまで上がっていた。

もう介護に決めたというほどではない。

でも、長く働ける仕事を考えたとき、かなり前の方に出てきていた。

そんなとき、ハローワークで介護事業所見学会のチラシをもらった。

私は、実際の現場を見てみたかった。

施設に入ったとき、自分がどんな感覚になるのか。

施設のにおいや雰囲気に、自分がなじめるのか。

利用者さんと接したとき、自然に関われそうか。

それとも、やはり自分には難しいと感じるのか。

求人票を見ながら考えていても、自分の直感までは分からない。

私は、自分の肌感覚を確かめたかった。

見学会には、私を含めて3人が参加する予定だった。

私は少し早めに着き、ハローワークの方と一緒に、あとの2人を待った。

時間になっても、あとの2人は来なかった。
連絡もつかなかったらしい。

結局、参加者は私一人になった。

施設側は、プロジェクターまで準備してくださっていた。

前には、施設長らしき方や看護師さんなどが3人ほど。

後ろには、ハローワークの方が2人。

真ん中には、私一人。

すべての説明が、私に向かって話される。

見学に来ただけなのに、こんなにしてもらっていいのだろうか。

少し気まずかったけれど、結果的には、かなり特別な見学会になった。

私のペースで施設内を回れたし、聞きたいことも聞けた。

中に入ると、広く開けた空間に、たくさんの利用者さんが集まっていた。

一日に60人ほどが利用する、にぎやかな施設だった。

私はもともと、おじいちゃんやおばあちゃんが嫌いではない。

むしろ、これまでどんな人生を歩いてきたのか、話を聞いてみたいと思う。

人の経験を聞いて、自分の中に取り込むことが好きなのだと思う。

だから、高齢者と関わる仕事には、今もどこかでひかれている。

施設の雰囲気も、それほど嫌ではなかった。

入った瞬間に、

「ここは無理」

とは思わなかった。

ただ、仕事内容を聞くと、話は少し変わった。

一番大変な仕事は、暑い時期の入浴介助。

そして、未経験でパートとして働く場合、その半分はお風呂だという。

残りは配膳などと言われた。

でも、配膳は一日の中の限られた時間だろう。

実際には、かなりの割合で入浴介助をするのではないだろうか。

私は、体力がある方ではない。

自分でも、それは分かっている。

最初から、一番大変だと言われた仕事を多く担当して、続けられるのだろうか。

介護をやってみたいと思って入ったのに、入浴介助で体力を使い果たし、

「介護はもう無理」

で終わってしまわないだろうか。

家でも、少し引っかかることがあった。

最近、同居している彼が体調を崩し、身の回りのことを手伝うことがあった。

排泄物の処理をしたとき、私は、においに抵抗を感じた。

一緒に暮らしている、好きなはずの彼のことでも、

「うっ」

と思ってしまった。

彼からも言われた。

「俺のでそんなことを言っているなら、介護の仕事は無理じゃないか」

そうなのかもしれない。

でも、仕事なら割り切れるのかもしれない。

お金をもらってする仕事として考えたら、できるのかもしれない。

それとも、身近な人でも抵抗があることは、仕事でもやはり無理なのか。

そこは、まだ分からない。

高齢者と話したい気持ちはある。

その人の人生を知りたいとも思う。

でも、その気持ちと、介護の仕事を続けられるかどうかは、同じではなかった。

介護を絶対にしないと決めたわけではない。

施設によって、仕事内容も違うだろう。

働いてみないと分からないことも多いと思う。

それでも、見学に行ったことで、求人票からは見えなかったものが見えた。

歓迎されたうれしさだけでは、仕事は選べない。

介護を70%くらい考えていた私の気持ちは、現場を見て少し落ち着いた。

でも、家で考え続けているだけでは、この変化すら分からなかったと思う。

私はどうやら、答えを出してから動くのではなく、動いてから自分の気持ちを知る人らしい。

今はまた、販売や接客の求人も見ながら、自分が続けられそうな場所を探している。


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