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55歳、「まだ選ばれる」と思って会社を辞めた私

55歳でも、仕事なんてすぐ決まる。

会社を辞める前の私は、本気でそう思っていました。

接客は長い。

パソコンも使える。

WEBの勉強も始めた。

今より私を必要としてくれる会社は、きっとある。

そんな気持ちが、どこかにありました。

でも、辞めてみると違いました。

WEB関係の求人を見るたびに、

「ここに55歳の私が入るのは違うよね」

誰にも断られていないのに、自分で応募をやめる。

面接も受けていないのに、もう疲れる。

私は、自分の年齢を置き忘れたまま会社を辞めたようです。


先日、ハローワークの帰りに、昔から知っている人がいる店へ寄りました。

近くまで行くと、

「今日はいるかな」

と、つい店先を見てしまいます。

その日も少し待っていると、後ろから突然、下の名前を呼ばれました。

振り返ると、その人が立っていました。

私はもう、満面の笑みです。

昔、かなり好きだった人なので、仕方ありません。

久しぶりなのに、店にも入らず、その場でベラベラしゃべる。

何年も会っていなかったはずなのに、不思議なくらい時間を感じませんでした。

そのまま店で昼食を食べていると、

「今、何してるの?」

と聞かれました。

会社を辞めたこと。

ハローワークへ通っていること。

WEBの仕事は思ったようにはいかなかったこと。

そんな話をすると、すぐに言われました。

「だったら、うちで働けばいい」

正直、うれしかったです。

55歳になっても、

「うちに来ればいい」

と言ってくれる人がいる。

少し救われました。

でも私の返事は、

「遠いから無理です」

でした。

我ながら、かわいげがありません。

車はありません。

毎日通うには遠い。

うれしいことと、働けることは別です。

すると今度は、私が通えそうな場所まで考え始めました。

私は横で、

「休みは?」

「給料は?」

と聞いていました。

昔好きだった人に仕事へ誘われても、まず気になるのは通勤と給料。

55歳の現実です。


店を出たあと、暑い中を歩きながら考えました。

前の私は、

「もっと評価されてもいい。」

「もっと条件のいい仕事がある。」

そんなことばかり考えていました。

今でも給料も休みも気になります。

急に謙虚になったわけではありません。

ただ、

「働けばいい」と言ってくれる人がいることは、当たり前じゃなかった。

それだけは、辞めて初めて分かりました。

これから面接を受ける会社もあります。

近さを選ぶかもしれない。

条件を選ぶかもしれない。

やっぱり、この人のところへ行くかもしれない。

まだ決められません。

ただ、もう新しい求人を増やすのはやめます。

増えたのは、選択肢より迷いでした。

少し縁起でもないけれど、

私は、この人のお葬式には行きたい。

ふと、そう思いました。

仕事は、まだ決まっていません。

明日になれば、

「やっぱり、もう少し条件のいいところがいい」

と言っているかもしれません。

それでも、久しぶりに下の名前を呼ばれたその日は、

悪くない一日でした。


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