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【小説】最終章 カッコウの子を巣に還す時 16 最終回【遠い銃声】


過去作の時系列・設定など

「遠い銃声」シリーズ用語集

カッコウの子を巣に還す時 1~10まとめ

カッコウの子を巣に還す時 11
カッコウの子を巣に還す時 12
カッコウの子を巣に還す時 13
カッコウの子を巣に還す時 14
カッコウの子を巣に還す時 15

カッコウの子を巣に還す時 1~15のあらすじ

高村逮捕から5年後
総帥の子供だったとわかった北斗は小野田ホールディングス創業者一族に戻ることもなく あいかわらず、北斗として生活をしていた。
青竜は末期のガンになり、ホスピスに入ることを決意したが、入院の日に現れず逃亡する。
再会はできたものの、彼は総帥に「北斗を殺せ」と命令されて拒否していたことを告白し、再び逃亡する。
青竜は「カッコウの生態」を調べると言いながら、北斗の出生関係の情報を知ると思われる『田園調布レディースクリニック』の元産婦人科医水本を探し出し、問い詰め、過去の北斗(昴)の誘拐に総帥も関わっていたことを知る。
 壁ひとつ隔てた北斗の目の前で青竜と総帥は対峙し、青竜が持っていた手りゅう弾の暴発により二人は亡くなった。
 二人の姿をまのあたりにして、自我が崩壊してしまった北斗は白夜に看病され、自分が昴だと思い込むようになるが、また記憶がもどり、マックスと再会する。


16(最終回)あのライブハウスで


 「マックスさん、俺たち同じ顔だったのに、どうして、白髪の方が北斗とわかったの?」

三人は北斗の部屋に入って話していて、不意にリアムが聞いてきた。

マックスは笑った。

「わかるさ、北斗は小さな頃からずっと接してきた。俺の息子みたいなものだからな」

「へえ、北斗の親代わりだったんだ」

 リアムは理解した。

「マックス、ごめんなさい、しばらく姿を消して」

 北斗は再び謝った。

「青竜と総帥が死んだあの爆発事故で、怪我してたんだろ、俺も怪我してたから、お前を探すのが遅れてしまった、歩き回れないから一日一回、一時間だけここの部屋にきて、お前を待ってた、家賃も払っておいたぞ」

「あ…ごめんなさい…」

 北斗はマックスの足を見る。

「青竜に折られた骨はついたぞ。今は杖なしでも歩ける、まだ走れないがな」

 マックスは右足を揺らした。

「ところで……この数か月はどこ行ってたんだ、この同じ顔した子はなんなんだ」

 北斗はマックスの顔を見て言った。

「あの事故は、白夜様と俺の目の前で起こった。その後の様子が覚えてないんだけど、俺がどうも記憶が混濁したり、精神が不安定になって、白夜様が病院に入れた…その時、昴の名前で生活していたんだ…」

「……それを…あのぼっちゃんが黙っていて、行方が知れなかったんだな、だが、なぜ」

 北斗は寂しそうな顔をした。

「白夜様は………総帥を失ったことで独りぼっちになったのが怖くて…俺を昴にすることで、その孤独を埋めたかったみたいなんだ」

「そうか……だが、家族が亡くなったことは同情できるが、北斗が記憶が混濁したことを利用して、彼を昴にしてしまおうとすることは違う。同情はできない」

 マックスはきっぱりと言った。

 北斗はリアムを見る。

「彼はリアム、俺の双子の兄弟。彼のかあさんが、代理母として、総帥と他の女性の遺伝子で、俺とリアムを産んだんだ、来日していて、一緒に行動していた」

「……よく似てるが雰囲気が違うな、リアムの方が明るい」

「俺、純日本人だけど、アメリカ育ちだからな」

 リアムは笑った。

 しばらく会話をした後、リアムは白夜の元に行くと言って、白夜にiPhoneでメッセージを送った後、帰る支度をした。

「ああ、こっちのアパートに戻るって、白夜に伝えておいたよ」

「ごめんなさい、ありがとう」

 リアムはあ、と言って北斗を見た。

「iPhone持ってただろ、番号教えてくれよ、またメッセージを送るから。会えなかったぶん、お互い知らなかったぶん取り戻して、これから交流していこうぜ…」

 北斗はiPhoneを取り出して、リアムと番号を交換した。

「じゃあな、北斗、ピコチュウありがとう」 

「じゃあな、リアム」

 射的の景品の入ったレジ袋を大切にさげてリアムはタクシーに乗り込み帰っていった。

 北斗はiPhoneを改めて覗き込んだ。青竜の所有だったものだった。

「iPhone持ってたのか、それだったら連絡…」

「違う…ごめん、マックス、きちんと俺が北斗と自覚したのは今日だったんだ……。それと…このiPhone……ボスの所有物だった」

「………青のか…」

「これを預かったまま、知らないふりをしていれば、記憶が戻るのが遅くなって、俺と一緒にいられる時間が長くなれたはずなのに、白夜様、これをあっさりと俺に渡してくれたんだ…俺を昴にしようとしていたけど、一時的に兄弟のようにしたかっただけで、長く俺をとどめておこうとは思ってなかったんだと思う……」
 
 iPhoneのクラウドストレージのアプリをたちあげた。青竜が北斗のために何かを残したと言っていたものだ。 

 北斗は手渡された時のことを思い出して、パスワードを入れる。自分の名前のローマ字表記と生年月日、ログインが完了して、クラウドストレージが開いた。

「開いた」

 ストレージに保管されていたものは、いくつかのテキストファイル、画像ファイル、そして音声ファイルだった。

 画像を何枚か開いたが、北斗とは関係のない画像だった。テキストデータには海外の暗号資産の口座に入っている暗号資産のことについて書かれてあり、送金した後、日本円に交換する方法が記録されていた。

「ボス……家族がいないから、俺に残してくれたんだ……」

 音声ファイルのひとつは、北斗も以前聞いたことのある、元田園調布レディースクリニックの医師、水本の北斗が生まれる前から誘拐されるまでの告白が入っていた。

 あの事故が起きる前の日付で残されていた音声データを北斗は見た。

 タイトルは「hokuto」

 北斗は、そのmp3ファイルをタップした。日付を読み上げる青竜の声が聞こえてきた。

『このファイルは毎日更新している……今の私の声を、未来の北斗が聞いていたとしたら…多分、読み上げた日付の翌日が私の命日となるんだな……』

「あ……」

 マックスが止めようとしたが、北斗はその手をつかんだ。

「聞く…だから…止めないでマックス」

 『明日、また更新できるといいのだが……自分のカンで…今日が最後のような感じがする……北斗……』

 まだ本題にも入ってないのにもかかわらず、北斗の瞳から涙がつたってきた。

 『北斗……今、何してる?小野田に残っているか?それとも逃亡の途中か……、金で解決できることがあったら、少ししか残っていないがこの暗号資産を役立ててほしい』

 後で、海外の青竜の口座にアクセスして確かめた暗号資産は日本円に換算してみると、北斗が何も働かなくても数か月生活できるほどのかなりの金額だった。

『……ここから先は、お前が覚えていても忘れてしまってもいい…ただ、私が消えてしまったら、消えてしまう話だから、お前に覚えておいてほしいと思って話す。たいした話ではない。忘れてしまってもかまわない』

 テーブルの上に置かれたiPhoneをマックスが食い入るように見た。北斗も姿勢をただした。

『はたちの頃、私は小野田家の警備と運転手の仕事をしていた。白夜様の母親であるひすい様の運転手をしていることが多かった。彼女は病弱で、少し心が不安定だった。毎日、自分の体調をみて動けそうだと思うと、私に言って車を出させた。そして、街中を走り、車窓から、子供……昴様を探した。生まれてからすぐに誘拐された子だ、今どのような顔になっているかもわからない。だが、ひすい様は必死で、車窓から、時には車から降りて、雨の日も、風の日も探し続けた、だが、見つからなくて、がっかりして、後部座席に座り、涙を流すのが毎日の日課のようになっていた。彼女は私より、ひとまわり歳上だったが、私は彼女がとても美しい悲劇の少女に見えた、そして、いつの間にか彼女を愛するようになっていた』

 北斗の頭の中に、赤信号で停車した車内、後部シートに座るひすいと呼ばれる白夜の母をバックミラーごしに心配そうに見る若い青竜の姿がうかんだ。

『その気持ちは、黙っていたが、彼女にも伝わったようで、昴様を探していた最後の何回かは恋人のようになっていた。だが、触れたわけではない。愛の言葉を交わしあったわけでもない。これは許されないことだ。だから、お互い隠しあい、他人には気づかれぬように黙って雰囲気やしぐさで語り合った。お前には信じられないだろうが、私にもこういった清い時代はあったのだよ』

 だるそうだが、少し嬉しそうな声で青竜は語っていた。

『そして、その時に約束したんだ。彼女は停車した車の中でつぶやいた『お願い、私が亡くなった後に昴が見つかったら、彼の一番の味方になってほしい、守ってほしいの』と言った。私は正直、昴はもう亡くなっていると思っていたから、その話しは頷きながらも半分聞いていたような感じだった。彼女はその時、初めて私の手に触れ、自分の小指を私の小指にからませて『指切り……約束よ……』って軽く揺らしたんだ』

 青竜はため息をついた。

『総帥から彼女を奪おうと思った、今ならたやすく奪うことができる、と。だが、それをしたら、全てが終わる。私は耐えた、もしその一歩を踏み出していたら、私の人生も変わっていたかもしれないな、まあ、いい思い出だ』

 思い出を語った青竜の声のトーンが変わった。

『だから、2年前、北斗、お前があの時、誘拐されていた赤ん坊だったと知った時は驚いた。そして迷った。愛していた女性の遺言にしたがって、お前の味方になるべきなのか、守るべきなのか……。だってお前はあの時誘拐された赤子だったが、厳密に言うと、ひすい様が探していた(昴)ではなかったからな。受精のミスで謝って授かってしまった命…。ひすい様の遺伝子を継いでいないお前をどう扱えばいいか迷った……。お前がすでに守るとかいう対象になる年齢でもなかったしな………。だが、それは突然総帥に言われたお前の殺害命令で変わった…お前を守ることにした。だが、それはお前に気づかれてはいけない…ひすい様の遺言であったことを気づかれてはいけない』

 北斗は震えながら小さく言った。

「ボス…バレてたよ、俺を必死に守ってくれていたじゃないか………俺、わかってたんだよ…でも、ひすい様との約束だったってことは知らなかったよ」

『明日結果が出る。たぶん行動次第では私は命を失う。なに、もう先は長くなかったから、一日くらい短くなってもかまわない。ただ私の行動で、北斗がどうなってしまうのか、最後まで見届けることができないのは残念だ…この音声データにたどり着いたということは、お前がまだ生きてるってことだな…それだけは安心している……どんな状態になっているのか、どこにいるのか、私にはわからないが、強く生きて欲しい…』

 少し呼吸が乱れた後、ゆっくりと青竜は言った。

『総帥はお前を殺そうとしたが、白夜様も如月様もそしてマックスも、お前の味方だ。時には彼らを頼れ、総帥をうまくかわして逃げ回れ。無事であることを祈るよ』

 静かに…静かに…彼は締めた。

『さようなら 北斗』

 あの爆発事故の直前、振り向かずに手を振って去っていった青竜の姿を思い出して。北斗は小さく泣いた。

「ずるいやあ…ボス…そうやってカッコつけて…いいとこ取りして…」

 そして、その時の青竜の言葉を鮮明に思いだした。

『あとでお前が(とっても美しくて賢くて尊いボスがやってくれたんだ、ありがとう)と瞳をキラキラさせて回想させるための仕込みだ。お前の心情なんか全く考慮していない、私の自己満足だよ、自己満足でやってんだよ 』

「その通りになったよ、ボス…ずるい、ずるいよ」

「北斗…」

 マックスは北斗を泣きそうになりながら見ていた。

「ありがとう…ボス…災いは去ったんだ…俺は北斗に戻って…元気だよ……」

 北斗は小さく言って微笑んだ。
 

 ………それから7年後………………

 「ここで…いいんだよな…」

 大迫聖は都内のビルのテナントの看板を見る。

「あった、『パンジャンドラム』…そうか、あの時のビル、昭和の建設で古かったものな、新しく建てなおしたんだ…、リニューアルオープンだけど、地下店舗だから、あまり変化がないのかな……」

 聖は大学生だった12年前、ここでアルバイトをしていたことがあった。

 店に通じるエレベーターがある一階のホールには、祝リニューアルオープンのスタンドの盛り花がいくつも飾られていた。中には有名なミュージシャン名義のものもあった。

「え、あの大御所歌手がここの出身だったんだ…新鮮……」
 
 数日前、懐かしい女性からLINEが来た。このライブハウスの出演者だった如月からだった。

「やっほう、聖くん、元気かな?今何してるの?聖くんが学生時代アルバイトしていた『パンジャンドラム』が3年の休業を経て、3日後、リニューアルオープンすることになったの。

 オーナーは私、前のオーナーが亡くなって、店長も辞めて閉店寸前だったところを私が引き継いだのよ。亡くなったオーナーは私の叔父で、従弟が相続したの。ビルの建て替えにともなって、『パンジャンドラム』も客席数を増やして、でも、あの時のレトロな雰囲気を残しつつ、いい感じの店になって、かつてのここの店のアルバイトや出演してたミュージシャン達を呼んでうちうちにお披露目をするということになったの、是非来て、あの頃とあまり変わってない『パンジャンドラム』を楽しむことができるわ」

 懐かしくて、ついつい、会社帰りに立ち寄ってしまった。

「ずいぶん変わったんだなあ…」

 真新しいエレベーターの内装を眺めてしみじみと聖は思った。

 地下階におりて、『パンジャンドラム』の看板を見た。

「あ、ここだ、看板かわっていないなあ…」

 木製の盤面に昔のイギリス軍の兵器だった『パンジャンドラム』が描かれている、昭和のレトロを感じさせる看板が飾ってあった。

「昔のをそのまま持ってきた感じかなあ…」

 真新しいビルの塗装の香りがほのかに残る。まだピカピカしているドアノブに手を伸ばして開けて中に入った。

 「いらっしゃい、あ、聖くーーーん、うわーー懐かしい」

 あの頃、ライブハウスで歌も歌っていた如月が聖を見つけて近寄ってくる。

 長い髪を美しくセットして、落ち着いたシックなカクテルドレスを着て、微笑んでいた。

 30人ほど入ればいっぱいだったライブハウスは、広くなり、100人ほど収容できそうだった。ステージも広くなっていた。そしてステージの背後には巨大モニターが設置されていて、北欧の美しい森林の画像や、地中海のリゾートの風景がランダムに映し出されていた。

「すごいな、モニター入れたんだ。これなら、クラブ風のライブもできるな」

振り向くと、客席の後ろの方に木製で落ち着いたカウンターがあり、かつてこのライブハウスを足掛かりにしてメジャーになった歌手たちのレコードやCDがその壁に飾ってあり、その一角だけ、昭和レトロな雰囲気がただよっていた。

「あ、ここは昔のパンジャンの雰囲気を再現したんだ」

「すごいでしょ、私がプロデュースしたの。ここはいとこが相続した物件だったけど、固定資産税が払うことがなかなか難しくて、小野田建設が買い取ってビル建て替えしたの」

「如月さんは、小野田ホールディングス創業者一族の人でしたね、小野田建設ってその系列か…」

「うん、それでね、私、ビル建て替えした時にここの地下を借り上げて『パンジャンドラム』を復活させたの。でも、都内の一等地でしょ、ここで利益を出すには小規模では難しいから、利益が出せるギリギリのキャパに増やして、なるべく施設をフルで回せるようにしたの。だから、昼間はこの近所に住む、小金もちのおじいちゃま、おばあちゃまのカラオケの憩いの場所にもなる予定…」

 あの頃に比べると年齢相応の落ち着いた女性になった如月は実業家の瞳をして、楽しそうに語っている。

「如月さんがオーナーか、すごいなあ」

「でも、私、これ専業じゃないから、役員してて、他の会社の経営にも首つっこんでるから、店長雇ってお願いしてるの。てんちょーーー。北斗くーーーん、ほら、懐かしい、聖君来たよ!」
「え……」

 如月が手を上げると、祝いの花を持ってきた花屋と話していた灰色の髪をした青年が顔をあげた。

「北斗てんちょーーー、お客様よ、来てえ」

「わかったよ、如月さん」

 オリーブ色のシャツを着た青年が近づいてきた。年齢は20代後半くらい。聖は彼の顔を見て微笑んだ。

「懐かしい、北斗くん」

「懐かしいね、何年ぶりかなあ、10年じゃ足りないよね、聖さん、俺…あの時、高卒18歳で……今30だから、ああ、12年もたったのかあ…聖さん、社会人だから、さすがに金髪じゃないよね…」

 聖はああ、と小さく言った。

「金髪はね、学生の時だけだった、北斗君は染めてるの?」

 白い髪の毛にやや黒髪が混ざった。聖は染めているのかと思った。

「あ、これね、前に一回事故で白髪になってから、少し黒髪復活したんだけど、もう完全には黒髪には戻らないみたい…まだ若いんだけど、じいさんみたいだろ」

 カウンターのところでまた別の業者が「すみませーん」と店長の北斗を呼んだ。

「ごめんなさい、また後で」

 入口が開いて、また誰か客が入ってきた。20代後半の男性だった。会社帰りのようでスーツを着ていた。

「ああ、いらっしゃい、白夜、忙しいのに来てくれてありがとう、北斗くん、てんちょーー、弟が来たよ」

 灰色の髪をした店長がスーツ姿の青年に近づいていた。

「お久しぶり、北斗兄さん、開店おめでとう…」

 にこりと青年は笑った。

「久しぶりだね、白夜、来てくれてありがとう」

「まさかオノダトランスポートのトラック運転手辞めてライブハウスの店長やるとはおもわなかったよ、北斗兄さん」

 北斗も微笑んだ。

「俺も、お前があれから小野田建設の不動産事業部でのし上がってくとは思わなかったよ」

「あれはね、お父様の遺産の不動産を処分ついでに不動産関係の勉強してで…俺の実力ではないよ…」

 如月がやってきた。

「あら、珍しく二人そろったのね。何年ぶり?北斗くん、そろそろ開店よ、一番最初の出演アーティストが歌うから、スタッフを持ち場にスタンバイさせてくれるかな」

「じゃあ、北斗兄さん、後で」

「ああ、後でな、白夜」

 そうしている間に、バイオリンとピアノの二人組の若いアーティストたちが歌い始めた。

「なんか久しぶりだけど、生の歌もいいよね」

 聖は学生時代のことを思い出して懐かしくなった。

 ふと、目の前のテーブルにビールが置かれた。

「あ……」

 北斗が微笑みながら持ってきた。

「1ドリンクオーダー制だけどね、今日はプレオープンだから、サービスです」

「懐かしいよね、二人で、音楽聴いた…」

 北斗もうなずいた。

「たくさん曲聴いた…二人いたあの時、多分俺、一生分に近い曲聴いたんじゃないかな」

「そうなの?それほどでもないとおもうけど」

 聖は返した。

「前はトラックの運転手してたのか?北斗?」

「トラックの運転手をしていたこともあったし、アメリカをぶらぶら旅していたこともあったし、群馬の山寺でにわか僧侶してたこともあったし、奥多摩で猟友会のハンターの仕事もしてたこともあったよ」

 聖は驚いた。

「え、すごいなあ……ところで、あの時、別れる時は社長のボディガードやってたけど、どうしてそんな風になっちゃったのかい?その髪の毛が白くなる事故が起こったのがきっかけなのかい?それとも……」

 北斗は俯いた。そして数秒、ステージにあがったアーティストのバイオリンを聞き入り、そしてまた再び顔をあげ、聖を見た。

「この12年間…色々あったんだ…色々………そのことを…また聖さんに話したい」

 聖は北斗の顔に、今すぐには語りつくせないほどのものがあることを知って頷いた。

「いいよ、また別の日にゆっくり会って聞きたいな」

 北斗は微笑んだ、そのほほえみは12年前見せたものと全く変わりはなかった。

                         

「遠い銃声」おわり

さて、アンケートの方もいよいよ最後です。
よろしかったらお願いします。


皆さま、私の小説を読んでいただきありがとうございました。
「遠い銃声」シリーズ物語が終了しました。
この後に短編小説スピンオフを一作公開する予定です。
もしスピンオフを書くとしたら、どのキャラクターの物語を読みたいでしょうか?
よろしければアンケートにご参加ください。(回答は20秒くらいです。)↓


ちなみにアンケート中間投票2票はいりまして(入れてくださり、ありがとうございました)、如月と青竜の均衡です。



フォームが面倒な方はコメント欄でも大丈夫です。
皆さまの投票でスピンオフの主人公が決まるかもです。
 
回答期限(最終章 最終話が公開されてから1日後予定)


ドイツ人とおちゃんが最後のお願いに来たようです。


彼らといったんお別れは寂しいなあ。


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