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UAE戦争から脱出するまで、最大の難関は日本だった。【前編】



今回の一連の出来事で、書きたいことが本当にたくさんある。多すぎて、ちゃんと整理して書けるか少し不安なくらい。


UAEについてはもう書いた


今回私たち家族が本当に振り回されたのは、日本側の手続きと対応。

そしてそれは、単に「少し遅い」とか「少し不便」とか、そういうレベルの話ではない。長くヘビーな話、ほぼ愚痴になるので興味のある人だけ読んでほしい。

そもそも最初からギリギリだった


今回、戦争が始まる前から領事館とやり取りしていた。双子が生まれたばかりだったからだ。



まず最初に詰みかけていたのが、UAEの「出生後120日以内にビザを取得しなければならない」というルール。

UAEの期限が短い訳ではない。4ヶ月ある。問題は日本側の手続きが遅すぎること。

日本の手続きは原本主義でとにかく時間がかかる。

流れはこう。

  1. 海外の領事館に出生届を提出
  2. 原本を日本へ郵送
  3. 外務省から各自治体へバケツリレー
  4.     役所で戸籍に反映
  5. パスポート作成
  6.    パスポートを各国へ郵送

戸籍までで2ヶ月程度かかるのに、今年からパスポートは偽造防止の新技術導入で作成に1ヶ月以上。


全部合わせると約3ヶ月。しかも私たちは双子でさらに時間がかかると言われた。UAE側でもラマダンが重なり、出生証明取得にも時間がかかり一つでも間違えば120日超過ほぼ確定。

進捗は自分で毎日電話して確認


さらにやばいのがここ。
戸籍が反映されたかどうかは通知できないらしい。

「その頃になったらご自身で日本の役所に国際電話して確認してください」

「急いでる場合は毎日電話するんですか?」

「そうなります」

いや、そっちが通知した方が早くない?

毎日国際電話して事情説明して調べてもらうって絶対役所も仕事増える。

ちなみに他の国も調べてみたら、だいたいこんな感じだった。

アメリカ・中国
→ 領事館に権限あり
→ 面談すればその場で戸籍反映

韓国など多くの国
→ 領事館で原本確認
→ 本国へオンライン反映


そりゃそうだよね、という感じ。

ドイツやイギリスは日本同様原本主義で、時間はかかるらしい。が、毎日役所に電話で聞くような事はしていなかった。(オンラインで進捗確認可)


しかも遅い国もパスポート取得前の緊急旅券の運用は柔軟。日本だけが遅い上に逃げ道がない。

120日を超えたら国外へ出ろ


もともと120日を超えた場合、UAEで罰金があることは知っていた。一日数千円。

ところが「120日を超える場合は必ず国外に出てください」

え?罰金だけじゃないの?

領事曰く罰金+国外に出ろと。

その後、自分で再度調べ直した。

UAEは120日超過した場合、罰金しか取っていない。国外に出ろなんて一言も言っていない。

その方が納得する。これだけ子供に優しいUAEがそんな無茶な事言うはずがない。

罰金で済むとしても、日本領事としては赤ちゃんと言えども日本国民がビザ無しで滞在というグレーゾーンに居られるのが嫌なだけ。領事の立場も分かるが、生後間もない双子を連れて国外に出ろはハードすぎない?

この時点で、信頼は揺らぎかけていた。

そして戦争が始まった


出生届を提出後、UAEが戦争に巻き込まれた。


私たちもすぐに退避を考えたが、まだ双子はパスポートどころか戸籍もない。

今でもUAEに残る選択をしている人もたくさんいるので、即脱出する必要があったのか?と思われるかもしれないが、『今はまだ出ない』と自分で選択するのと、『出たくても出られない』は全く違う。

何かあった時にパスポートさえあれば地続きでオマーンでもエジプトでもどこでもその日に逃げられる。

どこにも逃げられないとなると、一気に怖さは増す。


出せるのは「日本行きのみ」


領事館に相談すると「仮渡航証なら発行できます」と。

仮渡航証には条件がある。


【日本行きのみ】

UAEは、はじめこそ完全にフライト停止したが、3日目以降、近距離便から徐々に再開された。しかし、日本は遠い上に需要も低いため便が無かった。


「日本便がない状況で、日本行きのみはおかしくないですか?大使館からは、日本以外の国も視野に入れて退避してくださいというメールが来ています。」

でも返ってくるのは、「規則です」のみ。

納得できず、外務省に電話した


外務省はわりとあっさり「緊急時ですし、最終的に日本に帰るなら、とりあえず他の国や、車で隣国に行ってから退避していいですよ」と。

できるじゃん。

即、領事館に確認した。


返ってきたのは、「乗り継ぎでも最終地点=日本とはじめから明記されているチケットのみ。一旦第三国に行ってから次のチケットを取るのはダメ。隣国に行くのももちろんダメ」


今は最小限のフライトしか再開しておらず、乗り継ぎありきでも日本行きのチケットが売っていない。だからこそ、まずは近場の国まで出て、そこで改めて日本行きを取ると話しているのに、「認められない」の一点張りだった。

身動きが取れない中、SNSで「隣国のオマーンから脱出しました!」とか「とりあえず今出てる便でアゼルバイジャンにきました!」とか自由自在に移動できる人たちを横目で見る日々。

再度外務省にSOSを出した


半ばSOSのようにもう一度外務省に電話した。

すると、電話口の担当はなんとも歯切れの悪い言い方で、「まぁそれが領事の考えですかね。僕なら緊急時ならそうしてもいいんじゃないかと思いますけどね。」

何それ。

こっちは雑談をしているんじゃない。できるのかできないのかハッキリして欲しい。

「お名前を伺ってもいいですか?領事に伝えたいので。」

すると

「団体として個人名はお伝えしない決まりなんです。あとは領事に従って下さい。」


完全に脱力した。


完全に他人事。立派に『べき論』は語るけど名前さえ出さない。

緊急時なのだから、
「今回は私が許可します。」とか、
せめて「上に掛け合ってみます」とか。

頭に浮かんだのは半沢直樹のような姿。
あれはやはりフィクション。あんな人は居ない。 

しかし冷静に考えてそんなに難しい事か?とも思う。
戦争が始まって危険レベル3になった国から、生まれたばかりの乳児を簡易手続きで退避させる。
後から誰が責任を追求する?
経由した国でも、この手続きをした日本の責任者は誰だ!って絶対ならない。

緊急時でも一歩も規則から踏み出せないがんじがらめさには違和感しかない。

緊急旅券という手段 

ちなみに戸籍さえ反映されれば、緊急旅券という普通のパスポートと変わらず使える1年期限の旅券が発行できる。

原本は領事が確認したのだから、緊急で戸籍反映をしてくれとまた違った角度で交渉したが、お決まりの「規則です」

「じゃあ原本はいまどこですか?あとどのくらいかかりますか?」と聞くと

恐ろしい答え

「出生届はまだここにあります。」

え・・・
出したのもう戦争が始まる3週間前なんですけど。



出生届の原本はまだ日本にすら送られていなかった。
戸籍反映どころの話ではない。スタート地点にすら立っていない。

そしてここで、致命的な欠陥が一気に見えた。

原本主義だから、物理的に紙が動かないと何も始まらない。でも緊急事態が起きれば、政府便も止まる。


つまりその時点で、収束するまで永遠に戸籍が反映されることはない。


それは最悪仕方ないとして、そうなった場合でも規則通りにしか動けない。


地獄である。


ただ、皮肉なことに、その時点で原本がまだ領事館に残っていたおかげで、取り下げは可能になった。
もし中途半端にもう送られていたら、それはそれでまた面倒だっただろう。

最終手段:母を日本へ送る



そこでウルトラCを使った。

たまたま運良く(いや、運悪く)ドバイにいた母に出生届を日本で直接出してもらうことにしたのだ。

本当は、双子と3歳児を連れてのフライトが控えているなら、母には残って手伝ってもらいたかった。
でも、そうも言っていられない。

母にはとにかく一刻も早く日本へ帰れる便を


母に即、帰ってもらった。短距離便しかないので、乗り継ぎに乗り継ぎ、なんとか最短で日本へ帰ってもらう、そして家にも帰らず直接役所に出生届を提出しに行ってもらった。ハードなスケジュールをこなしてくれて感謝している。それでもまるまる2日たった。

母には区役所で事情を説明し「とにかく急いでください」と頼み込んでもらった。

結果


「急いで1週間で反映します」


1週間。



役所の説明はこう。

「1日3件ずつしか処理できない」
「双子なので時間がかかる」

急ぎますと言って1週間。


しかも、このルートを取った場合、ドバイ側では「出生届を出していない状態」になるため、その間は仮渡航証すら発行できない。


つまり完全にUAEに軟禁状態。


詰み。

さすがに焦った。領事館に、「このまま何も対策してもらえない間にUAEに危険が迫ったら、最悪の場合息子を守るため双子だけUAEに残すこともあり得る。」とあり得ない脅しのような事も言った。

それでも「規則なのでどうにもできない」の一点張り。


この時点で私はもう絶望していた。
今の自分の状況にも、日本にも。

誰も責任を取らない

窓口の人を責めたい訳ではない。
領事館の窓口の方は、むしろ親身だった。
本当に感じのいい人で、できる限り対応しようとしてくれ、泣きそうな声で「私も小さい子供がいるので痛いほど気持ちがわかる」と言っていた。
それぞれ働いている人たちは大変な中、働いてくれていて感謝している。

でも、親身であることと、解決できることは別。

その方には何の裁量もない。
毎回「領事に確認します」と奥へ聞きに行く。

しかし、領事本人が出ることはなくすべて間接対応。
まさにこういった緊急時に対応するために領事が居るんじゃないのか。


完全に絶望している中、事は急変した。

NEXT→ 【後編】突如現れた政府チャーター便


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