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Vol.42 健診を1年飛ばした、その1年で何かが起きていた。

健診を1年飛ばすと、体の中では何が起きるのか。

Vol.41 「症状がないから大丈夫」が、いちばん危ない。無症状で進む病気の話。|ドクターO で「症状が出る前に動く」予防医学の話を書きました。続編として、もう少し具体的な臨床現場の話をします。

先日、また一人、患者さんと向き合いました。
50代。働き盛り。これまで大きな病気はなし。健診も毎年欠かさず受けていた。ただ、昨年だけ忙しさにかまけて受けなかった。「1年くらい大丈夫だろう」という気持ちは、誰でも持つものだと思います。
今年受けた健診で、がんが見つかりました。無症状でした。でも、見つかった段階ですでに進行期。予後は厳しいものでした。

このようなケースを、私はこれまで何度も見てきました。健診で偶然見つかった、無症状のがんが、気づいた時にはすでに進行していた——というのは、決して珍しい話ではありません。

「1年飛ばしたから」とは言い切れません。前年の健診でも見えていなかった可能性もある。でも、こういう話を聞くたびに、「受け続けること」の意味を改めて感じます。

私がここで伝えたいのは、健診を怠るなという単純な話ではありません。
人生は、突然転機が訪れます。

長い闘病の末に少しずつ覚悟していく時間がある病気もあります。でも、ある日突然、それも無症状のまま、余命を告知されるというケースが確かにある。そしてそれは、健診を受け続けていれば早期に見つかっていたかもしれないケースと重なることがあるのです。

「いつ人生が終わってもおかしくない」という感覚を、怖いものとしてではなく、今をどう生きるかの羅針盤として持っておくこと——これは、医師として患者さんと向き合い続けてきた私が、繰り返し感じることです。
1年の間に、実際に何が起きうるか。がんは種類によって異なりますが、進行が速いタイプではステージが数ヶ月単位で進行することがあります。肺がん、膵がん、胆のうがん、急性転化を起こす血液がんなどがそれにあたります。一方、ゆっくり進む前立腺がんや甲状腺乳頭がんでは、1年での変化が乏しいケースもあります。「1年でどれだけ進むか」はがん種ごとに大きく違うのです。

がん以外でも、高血圧が1年間放置されれば血管壁への負荷は蓄積し続けます。HbA1c 6.0〜6.4%の境界型と判定された方は、無介入だと一定割合で糖尿病へ進行することが知られています。

「1年飛ばすだけ」と思っていた健診が、後になってみると「あの1年が分岐点だった」となることは医療現場では珍しくありません。忙しいのはよくわかります。でも健診にかかる時間は半日。その半日の投資が、数年後の生活の質を大きく左右する可能性があります。「今年は忙しいから来年」を繰り返さないでほしいと思います。

健診は「1年に1度のリセットポイント」として捉えてください。その日の数値が全てではなく、毎年の変化のトレンドを見ることに本当の価値があります。Vol.16 Vol.16 「健診」と「人間ドック」は何が違うのか。|ドクターO でも触れたように、対策型健診と人間ドックでは設計思想が違いますが、どちらも「変化を追う」という視点で活用するのが基本です。
数値を手帳やスマホにメモしておくだけで、毎年の変化が見えてきます。健診結果の経年変化を意識する習慣を、この機会にぜひ。

参考:
国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/index.html
日本人間ドック・予防医療学会「人間ドックの意義」https://www.ningen-dock.jp/public/dock

*noteの記事の内容は筆者の個人としての見解です。筆者所属の医療機関の見解とは一切関係ありません。内容の正確性には細心の注意を払っておりますが、万が一不適切な内容がございましたらご指摘いただけましたら幸いです。

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