たかがゴミ箱、されどゴミ動線の話|動線リノベ [32]
“動線”を整えることで、暮らしはもっとラクになります。
一級建築士として、毎日の暮らしをラクにする「動線の考え方」をお伝えしています。
ゴミ動線を見直すと暮らしはラクになる
家の中で、毎日必ず発生するものがあります。
それは、「ゴミ」です。
でも不思議なことに、家づくりの打ち合わせで、ゴミの話になることは意外と多くありません。
間取り。
収納。
キッチン。
照明。
これらは時間をかけて打ち合わせをします。
しかし、毎日必ず行う
「ゴミを捨てる」
「ゴミを出す」
という動作については、あまり話題にならないのです。
みなさんのお家では、
ゴミの日の朝、
どのようにゴミを出していますか?
キッチンのゴミ箱から袋を取り出し、
各部屋を回りながらゴミを回収した後に、
玄関や勝手口を通り、
ゴミ集積場まで運ぶ。
多くの方が当たり前に行っていることだと思います。
しかし私は住宅設計の仕事をする中で、
この「ゴミ出し動線」が
暮らしやすさに大きく影響していると感じています。
ゴミ動線は終わらない
私は、
ゴミ箱にゴミを捨てた時点で、
ゴミ動線は終わらないと思っています。
ゴミが家の外へ出るまで。
そこまで含めて、
本当の意味での
「ゴミ動線」
だと考えています
例えば、
・ゴミ箱から玄関までが遠い
・途中に扉が多い
・何度も往復する
・段差がある
・ゴミを仮置きする場所がない
こうした小さな不便は、
毎週少しずつ積み重なっていきます。
一つひとつは小さなことでも、
何年も続けば、
暮らしやすさに大きな差が生まれるのです。
ゴミ箱が遠いと片付かなくなる
人は、
「面倒だな」
と感じた行動ほど、
後回しにする傾向があります。
逆に、
手の届く場所にあるものは自然に使います。
これは行動心理学でも知られている考え方です。
例えば、
ゴミ箱が遠いと、
人は「あとで捨てよう」と考えます。
そして、
テーブルの上やカウンターの上に一時置きを始めます。
本来なら捨てるはずのものが、
仮置きされていくのです。
(チラシやプリント等の紙類等)
片付かない原因は、
性格ではなく、
ゴミ箱の位置にあることも少なくありません。
ゴミ動線が乱れると起こること
ゴミ動線の話というと、
「ゴミ箱の位置のこと?」
と思われるかもしれません。
しかし実際には、
もっと大きな影響があります。
例えば、
キッチンでペットボトルが空いた時。
ゴミ箱が遠い。
または捨てにくい。
すると、
人はこう考えます。
「あとで捨てよう」
その結果、
ペットボトルはカウンターの上へ。
その横に郵便物が置かれる。
さらに買い物袋が置かれる。
最初は、
たった一本のペットボトルだったはずなのに、
気付くとモノが集まる場所になってしまいます。
「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」
という考え方
例えば、自転車のカゴに誰かがチラシを1枚入れる。
↓
「少しくらいならいいか」と別の人もチラシを入れる。
↓
やがて空き缶やゴミまで入れられるようになる。
このように、最初の小さな乱れが、さらに大きな乱れを呼んでしまうという考え方です。
実は、
ダイニングテーブルやキッチンカウンターでも、
同じことが起こります。
最初は一枚のチラシだったものが、
気が付けば、
さまざまなモノが積み重なる場所になってしまうのです。
散らかる原因はモノの量だけではない
私はこれまで、
多くのお住まいを見てきました。
その中で感じるのは、
散らかる原因は、
モノの量だけではないということです。
動線が途中で止まる。
その小さな積み重ねが、
散らかった状態をつくっていることも少なくありません。
だからこそ、
ゴミ箱は単なる箱ではなく、
暮らしの流れをつくる設備なのだと思います。
各部屋にゴミ箱は
必要ですか?
私は、
各部屋にゴミ箱をたくさん置くことをあまりおすすめしていません。
理由はシンプルです。
ゴミの日になると、
家中のゴミ箱を回収しなければならないからです。
(特に二階建以上の戸建の場合は大変です)
ゴミ箱が増えるほど、
ゴミ出し動線は複雑になります。
もちろん、
洗面所やワークスペースなど、
必要な場所もあります。
ただ、
本当に必要な場所だけに絞ることで、
管理はずっとラクになります。
家の中のゴミ箱を最小限にする。
という考え方
以前、リノベーション設計のご依頼をいただいた、
(マンションにお住まいの)お客様で、
家の中にゴミ箱を
一つしか置かない。
という方がいらっしゃいました。
ゴミが出たらその都度、
キッチンのゴミ箱へ持って行く。
そのため、
ゴミの日に家中を回収して歩く必要がありません。
そして、その方式に変えて以降、
ゴミの量が圧倒的に減った。
とのことです。
私は最初驚きましたが、
とても合理的な考え方だと思いました。
もちろん、
すべてのご家庭に向く方法ではありません。
しかし、
ゴミ箱は多ければ便利というものではない。
そんな気づきをいただいた出来事でした。
※以下、補足です。
実際には、
燃える、燃えないゴミはキッチンに集約。
ペットボトルや空き缶、空き瓶、その他かさばるものについてはパルコニーに大きめのコンテナを置き、
都度、そこに捨てにいく。
方式をとられていました。
(マンションの場合は、バルコニーが共用スペースとなっており避難経路になっていることが多いため、設置を検討する際には管理組合などにご確認ください)
ご家族が多いため、
かさばるゴミがすぐに溜まってしまう問題を解決するための方法がこの方法で解決されていました。

忘れがちなキッチンのゴミ箱
キッチンを計画する際に、
シンクや収納は細かく検討しても、
ゴミ箱の置き場所は後回しになってしまうことがあります。
以前、
「リノベで後悔しない設計」のシリーズでも、
キッチンのゴミ箱スペースについてお話ししました。
ゴミ箱についてお困りの方は、
ぜひそちらもご覧ください。
ゴミ出ししやすい家とは
暮らしやすい家は、
ゴミ出し動線も整っています。
・キッチンから玄関までの距離
・勝手口の有無
・ゴミ集積場へのルート
・雨の日でも運びやすいか(24時間ゴミ出し可能なマンションを除く)
・将来、重いゴミを持って歩く負担はないか
こうした視点で見てみると、
家の見え方が少し変わります。
私は設計の打ち合わせでも、
「ゴミ箱をどこに置きますか?」
「段ボールなどのかさばるゴミは多い方ですか?」
をお聞きします。
さらに
「ゴミの日のゴミ出しどのように、どのようなルートで運んでいらっしゃいますか?」
「ゴミ出しで困っていることはありませんか?」
ということもお聞きしています。
なぜなら、
ゴミは今日だけではありません。
来週も、
来月も、
10年後も出続けます。
だからこそ、
ゴミ出しが少しでもラクになるよう、
最初に考えておくことが大切だと思っています。
ゴミ動線は家事動線の出発点
洗濯動線。
帰宅動線。
キッチン動線。
これまでさまざまな動線のお話をしてきました。
しかし、
どれだけ動線を整えても、
ゴミが途中で止まってしまえば、
暮らしは整いません。
ゴミは毎日発生します。
だからこそ、
ゴミ動線は家事動線の土台とも言える存在です。
✅捨てる場所が決まっている。
→ゴミ出しまでの場所を決める
✅迷わず捨てられる。
→分別しやすいゴミ箱になっているか?
✅家の外へスムーズに出せる。
→動線が遠い場合、近くにできないか検討してみる
その流れが整うことで、
暮らし全体の流れも整っていきます。
※おすすめのゴミ箱(ダストボックス)については、
「リノベで後悔しない設計」シリーズにてご紹介予定です。
まとめ
たかがゴミ。
されどゴミ。
そして、
たかがゴミ出し。
されどゴミ出しです。
その流れを少し整えるだけで、
暮らしは驚くほどラクになります。
もし今、
家の中にモノが集まりやすいと感じているなら、
ゴミ箱の位置ではなく、
「ゴミが家の外へ出るまでの流れ」
を一度見直してみてください。
ゴミ箱は、
ただゴミを捨てるための箱ではありません。
暮らしの流れをつくる、
大切な設備です。
たかがゴミ箱。
されどゴミ動線。
その小さな工夫が、
毎日の暮らしを少しずつラクにしてくれると思います。
* * *
毎日の暮らしが、少しでもラクになるきっかけになれば嬉しいです。
👉はじめての方はこちら
💁♀️動線リノベとは
関 美和|一級建築士
▼プロフィール・活動はこちら
