「三体」全篇トリセツ⋯超いいよ!でもダメなら「ヘイルメアリー」を読めばいいじゃない
中国発のSF大ベストセラー「三体」の三部作を、遂に読み終えた。そこで今日はその良さや手強さをまとめてみようと思う。
・ネタバレは嫌だけど、ざっくりどんな感じ?
・S F初心者でも読めるかな?
・「三体ゼロ」とどっちを先に読めばいいの?
そんな疑問に答えつつ、ただ「良いよ!オススメ!」だけではないリアルな魅力を伝えたい。
つまり。気にはなってるけどちょっと敷居が高くて未読という、数週間前までの「わたし」のような「あなた」に向けての背中押し記事である。
では今回もネタバレなしでVamos!(3333字)
1.劉慈欣著「三体」シリーズ
概要
人類が初めて地球外生命体と遭遇し、種の存続をかけて戦う物語
◉ネタバレすれすれ概要◉
20世紀に書かれたレイ・ブラッドベリの「火星年代記」を、時空的にめちゃくちゃ拡大して21世紀版にしたみたい。これが私の第一印象。つまり叙事詩的、哲学的でシュール。ネタバレぎりぎりで言うなら希望と破滅のミルフィーユ。楽しい!爽快っ!というハリウッド的エンタメものでは決してない。ただ2作品とも間違いなく世紀を代表する傑作である。美術界で「モナリザ」をとりあえず観る?だったらこのSF界の「モナリザ」も絶対見逃すな!と声を大にして言いたい。
「火星年代記」はSFでもファンタジーよりな感じだが、こちらはハードSF(SFジャンルの中でも科学性が強く、本格的な作品)。そこで理数系な話がてんこ盛りであるが、古今東西の名著の引用も多く文学好きのツボも全編にわたって押してくれる。さらに三体Ⅲでは「千夜一夜物語」を彷彿とさせる「作中作」もあり、真に知的に「面白い」小説である。
シリーズ作品のボリューム
・「三体」(448ページ・Audible17時間31分)
・「三体II 黒暗森林」上(480P/13時間57分)
下(512P/14時間22分)
・「三体III 死神永生」上 (608P/17時間19分)
下(624P/17時間51分)
関連図書
・「三体0 球状閃電」(608P/16時間45分)
独立した前日譚的な話。「三体」でも登場するキャラクターが活躍する
・「三体X 観想之宙」
劉慈欣を敬愛する中国新世代のSF作家・宝樹によって書かれた公式スピンオフ
うわっ、こんなにあるの!
そう思ってしまったあなたへ。
読む順番のおすすめは以下の通りだ。
2.タイプ別・読む順番のオススメ
A)劉慈欣作品のビギナーさん
この作品。三部作で全5巻もある。
とは言っても「三体2」とかは続編でしょ。最初の一冊・単体だけでも楽しめるのでは?……甘い!1冊目の「三体」だけだと「序章」止まり。居酒屋に入ってお通しだけで退店するようなものだ。超絶もったいない。
でもいきなり大長編はな⋯と、その長さで手を出しかねている人へ。「三体」の前日譚ともいうべき「三体ゼロ」から読むのがオススメ。こちらは一冊で完結している。こちらで作者の作風に慣れ、イケる!となったら本編へ突入するといいと思う。
実際私はこれから手を出して正解だった。
短さは最大の魅力とはいえ、欠点もある。
これ、物理法則を中心に話が進むのでSF初心者さんや理数系アレルギー持ちさんにはちょっと辛いかも。そんな場合はこちら。
B)科学理論がガッツリ苦手な文系さん
「ゼロ」を読まずに本編「三体」から入ろう。なぜなら本編は中国「文化大革命」の真っ只中から話が始まるのだ。
こういう歴史的要素は文系のツボだ。ここで興味を持って読み進めればスケールのデカい話の展開にいつの間にか巻き込まれ、多少の科学的難解さはスルーできるだろう。昨今のラノベのような世界観もあるので全てが難解なわけではない。
文系なら多少の長編にもへこたれない読書筋もあるはず。さらに大河小説好きだったら好物でしかない。SF叙事詩なんて言われているのも納得。ホメロスの「オデッセイア」も真っ青の壮大な物語に圧倒されること請け合いである。
こちらでより詳しく文系のツボを語っているので、よかったら参考にしてほしい。
C )SF大好きガチ勢さん
「ゼロ」からでも「1」からでもドッチからでもドーゾなんだが、ドーセなら作者の執筆順である「ゼロ」からがオススメ。
別に読まなくても本編観賞に影響はないが、「ゼロ」でのエピソードが本編でチョロリと現れる際に脳内に快感物質が生まれ、プチ満足を得られるという小さなご褒美がある。
てか、ガチ勢ならとっくに読んでいて釈迦に説法かも。
D)途中挫折しちゃった&しちゃいそうさん
ただ、この作者。読み手を選ぶのもホント。ディケンズだのトルストイだのといった古典翻訳本に触れたことがない人には難易度が高く、さらに普段あまり本を読まない人には難易度MAXかと思う。
そんなあなたにおすすめなのはこちら。
こちらはS Fに馴染みのない人どころか普段本を読んでいない人にもお勧めである。
・上下巻あるものの三体よりは短い
・科学的な説明もあるが話自体はシンプル
・登場人物も圧倒的に少なく混乱しない
・よりエンタメ的で明るいトーンの語り口
イメージとしては「三体」が短調で暗いのに対し、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は長調で明るい。これが「中国」と「アメリカ」という作者の出自によるものなのか、作者自身の性質によるものなのかは重要でないし、優劣の問題でもない。単なる好みの問題であり、「長調」の後者の方が耳馴染みがいいので万人受けだ、というだけのことである。
さて。このヘイルメアリー。オーディブルで聞くなら急いだほうがいい。

どうやらオーディブルの聴き放題での視聴期限が今年いっぱいで切れてしまうようなのだ!(2026/1/8追記:視聴期限が解除され現在も視聴可能になっている。めでたしめでたし)
ついでに言えば来年2026年春にはライアン・ゴズリング主演の映画も公開される。まさに読むなら「今!」である。
(2026/3/28追記)
※公開された映画レビュー
3.「三体」映像作品について
ヘイルメアリーが映画化されるなら「三体」はどうなのか。
こちらは中国版(テンセント版・アマゾンプライムで視聴可)とNetflix版(当然ネトフリで視聴可)の二種類が既に存在する。
中国版は全30話で基本的に原書に忠実。
ネトフリ版は全8話でかなりの改変アリだそうだ。
私は友人から「ネトフリ版は見るな」と言われ、きちんと言いつけを守り現時点で見ていない(と言っても中国版も見てない)が、本も読み終わったことだし機会があれば2つとも見てみたいと思う。
もし本のハードルが高いようなら、こちらでこの作品を味わってみるのも一つの手かもしれない。
4.「三体」コミック版について
※ここだけ2026/1/10追記分
全3巻フルカラー。最後の3が2025年12月発行なので出たばかりだ。全冊500ページ越えの辞書のような厚さ。3冊買うと27000円と結構りっぱな金額になることと、「三体Ⅱ」「三体Ⅲ」のコミックス化・日本販売はまだ未定という懸案事項はあるが、ビジュアル派の方にはいいかも。
(追記おわり)
まとめ
・間違いなく21世紀のS F一大叙事詩として世紀を超えて残る名著
・ハードS Fで哲学的なため難解な表現があり、また中国名も覚えにくいため、かなり負荷がかかる読書体験ではあるが、読む順番を工夫して作品世界に慣れていけば、必ずや知的興奮世界に耽溺できる。
・とはいえこの作品が合わない人は、SF嫌いになる前にほぼ同じ時期に世界でブレイクした「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読もう(オーディブルの聴き放題視聴期限が2025/12/31のようである)。
SFって一周まわったら神話なんだなあ。
「火の鳥」の手塚治虫氏を改めて神と崇め、この記事を終えよう。
SFを楽しもう!素敵な読書体験を!
劉 慈欣 著
・「三体」 ハードカバー – 2019/7/4
・「三体Ⅱ 黒暗森林 上」 単行本 – 2020/6/18
「三体II 黒暗森林 下 」単行本 – 2020/6/18
・「三体III 死神永生 上」 単行本 – 2021/5/25
「三体III 死神永生 下 」単行本 – 2021/5/25
オーディブル・ナレーター(全作品) 祐仙 勇
※中国名や地名、一般名詞の同音異義語が音声だと区別がつかず別記事では目での読書を推奨したが、この方の見事な演じ分けで逆に名前は覚えられなくても声質でキャラ把握ができる良さがある。
お読みくださりありがとうございました。
Hasta pronto! またお会いできますように
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