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中華食堂のむすめ|1.チャーハン

私の実家は、中華食堂を営んでいた。
カンカンカンと中華鍋にお玉が当たるリズミカルな金属音、熱い油に野菜が飛び込んだ瞬間の急雨のような轟き、そして鍋肌にジリっと焦げる醤油の香ばしさ。そんな、おいしい音とにおいとが絶え間なく流れこんでくる家で、私はおとなになっていきました。

これまでの人生で一番作ってきた中華メニューといったら、それは間違いなく「チャーハン」である。
高校から自分でお弁当を作り始めて、母が取り分けておいてくれた夕飯のおかずに朝卵焼きだけ焼いて詰めることもあったし、一から自分で作るとなればチャーハンが多くなった。材料少なく、時間短く、おいしさは間違いなし。他におかずも必要なし。

店でもチャーハンは単品、セットともに人気で、お昼時には絶えず中華鍋を振り強火でチャーハンをあおる両親と、運ばれてきたそばからレンゲを差し込み大きくすくい取ったチャーハンを黙々と口いっぱいに頬張るお客さんの姿が日常風景だった。

お弁当作りを始めたきっかけというのが、中学生のときに母が持たせてくれていた弁当が、大きく四角い透明蓋のタッパー型弁当箱に白ごはんと茶色いおかずをギチギチに詰め込んだデカ弁で、豚のしょうが焼きに敷かれたレタスやごはんの上の梅干しがせめて色を添えてくれてはいたものの、隣の席の女子の小さくて彩りもよいお弁当と様子があまりに違っており気恥ずかしさを感じてきたことから。

当然、母にはせめて「もっと小さいお弁当箱にしてほしい!」と繰り返し訴えはしたものの「だって。学校でお腹が空いたら、大変じゃない」と、まるで聞き入れてもらえず。だから高校生になったらその日から「自分の好きな弁当箱に自分で作る」と強く心に決めていた。

チャーハンは、自分で選んだ赤の丸い弁当箱ならそれだけをぎっちり詰めてもデカ弁風にならず、それでもごはんがメインだからそれなりに腹持ちもよく大変心強かった。とはいえ、文句を言いながらも母のデカ弁を毎日きっちり食べ切ってきた私なのだ。「足りるか、足りないか」ギリギリの線でヒヤヒヤしながら、それでもなお弁当における“自分なり”の女子っぽさを堅持することが、多感な頃の私に何より重要だったと言える。

料理人でもある親に特に教わったということもなかったけれど、見様見真似で作ってみるうちに段々それらしくなるもので、朝起き抜けの女子高生のやることだから、火力MAXで一心不乱に鍋を振ることまでしなくても、ほどほどの火加減で、日々自分で感じるコツを押さえながら繰り返せば、毎日お昼が近付くのが楽しみになるくらいにはおいしくなっていった。

材料はごはん卵に、ハム、ねぎのみじん切りだけとごくシンプル、こしょう多めが私の好み。時々母がチャーシューのヘタを取っておいてくれたのを冷蔵庫に見つけたら、ハムに代えるとまた印象が変わり、同じ料理も楽しみは意外に尽きることがないというもの。
当時は鉄の北京鍋(取っ手が一つの片手鍋型の中華鍋)で作っていたから、焦げ付かせないために鍋肌に馴染ませる油の量が多くなるのはやむを得ず。カロリーは気になるが、こればかりは自分の好みと関係のない「鍋のせい」と割り切って、控えることなく必要な分をしっかり使えばうまくいく。

そして結果、その油こそがチャーハンをおいしくするとはっきり気付いたコツの一つでもあったので、コーティングがされたフライパンで作ることが増えた今でも、油はちょっと多めを良しとしています。

・ごはん...250g
・卵...1個
・ハム...2枚、5mm角に切る
・長ねぎ...5cm、みじん切り
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・サラダ油...大さじ1~1.5
・塩...ひとつまみ
・鶏ガラスープの素...小さじ1/2
・醤油...小さじ1/2
・こしょう(パウダー)...適量、多め推奨

1.フライパンにサラダ油(大さじ1目安)を中火でよく温めて、卵を入れ木べらでぐるぐるっと混ぜます。半生のうちに上からごはんを加え、行き渡らせるつもりでごはんを切るように混ぜながら炒めます。
2.ハム、塩、鶏ガラスープの素を加えて炒め合わせます。中央をドーナツ状に開けてそこへ長ネギとサラダ油少々を足し、長ネギがしっかり熱くなったら、全体にこしょうを振って炒め合わせます。
仕上げに少し火を強めて鍋肌から醤油を加え、炒め合わせてできあがりです。

卵は溶かずに割ったまま入れて炒め始めると、白身と黄身の特徴がそれぞれ立ってシンプルな中に奥行きが出ます。長ネギは、火が当たりやすい鍋の中央で熱してから混ぜ込むことで、香りが出て水分が飛びごはんがベタつかないので、パラパラ派におすすめの方法です。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

写真:おとな料理制作室

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美窪たえ|おとな料理制作室 お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。