見出し画像

マイノリティにあぐらをかかない。アップデートを忘れない

6月に入ってから、プライド月間に寄せていくつか書いてきたけど、今のところこれで今年は最後にしたい。

2025年も同じようにマイノリティ当事者としての経験や信条を書いた。でも、それらは今年の6月に入ってこっそり無料公開を取りやめている。そこに何か有益なものが書かれているわけではないし、読まれてマズいものが記されているということもない。ただインターネットの海に誰でも見られる状態で置いておくのは1年限定にしようと思った。

なぜなら、世の中の価値観のアップデートが目まぐるしすぎるから。そうした変化のスピードと、インターネットに文章を記すことはちょっと相性が悪い。世の中の炎上事案をみると、10年前20年前に書かれた内容が、その人の現在進行形の思想信条のように捉えられてしまうケースがあるからだ。今の若者にとっては最新のヒット曲もサブスクで見つける80年代のアイドル曲やシティポップも、どちらも「今」であるように。

そして、僕にとってジェンダーやセクシャリティに関する話題は、自分のアイデンティティに深く関わっているからこそ、分かったつもりになりやすい。時流を読まないと足元を救われる。それに気づかず、いつの間にか時代遅れになった文章を放置していると、知らないうちに誰かを傷つけてしまうかもしれない。散々傷つけられた自分だからこそ、人を傷つけることには敏感でありたい。そのために今年も書いた、自分をアップデートするために。

 *

このテーマに関する発信にちょっと慎重になっているのは、自分が仕事で扱ってきたテーマでもあるからだ。良くも悪くもちょっと前までは許容されていた表現が、今ではハラスメントのリスクになったり、冗談でも言っちゃいけないNGワードになっている。

また、最近では逆のことも起きていて、2024年に米大統領選でトランプさんが勝利して以降、外資系企業や日系のグローバル企業ではDEI推進活動への逆風が顕著になっている。どことは言わないが、僕が付き合いのある企業でも「DEI」「多様性」という表現をオフィシャルな文書で使わないという“言葉狩り”が起きたところがある。

個人的には色んな感情が渦巻いている。ある部分では歓迎しているし、ある部分では残念。ただ、個人的な賛否とは関係なく、時流を正しく読める人でありたいとは思う。それは仕事を干されないための僕なりの生存戦略であることも否定しないけど、それ以上にプライドの火を絶やさないため。

上述の企業では、意思決定をした経営陣の判断はともかくとして、中で実際の推進活動を担ってこられた社員の方々は、案外虎視眈々とやっているんだと話を聞く。言葉は狩られているし、活動も縮小させられたけど、また必ず風向きが変わるときが来ると信じて、あの手この手で生き延びようとしているんだと。こうやって書くとなんだか戦前~戦時下のような物騒さを感じるけれど、世界は今、それくらいの緊張感があるのだと自覚しておきたい。

社会は、振り子のように伝統と革新を行きつ戻りつしながら、それでも少しつずつ進化していくものなんだと思う。そして今は、僕がゲイとして腹を決めて以降、おそらくはじめて振り子が逆向きに動いているように見える。たしかに今この瞬間を見たら悲観的なことが多いかもしれない。けれど、必ずまた局面が変わるときがくると信じて、ことさらに嘆かず分断を煽らず、僕は僕のやるべきことを今日も明日も淡々と続けていきたい。


プライド月間に合わせたシリーズ一覧

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集