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「そっか、あの時も」第2話 テレビ編成マン(後編)

11月。
年末年始に放送する特番が決まった。

番組名や出演者などの情報をまとめた。
そして、役員会の資料として提出した。

そのまま資料は上に上がり、
役員会が開かれた。

しばらくして、呼ばれた。

  「名前、間違ってるぞ」

何のことなのか。
最初は分からなかった。

資料の内容が間違っているのか。

普通なら、
そこで確認すればいい。

謝って、
もう一度調べればいい。

でも。

「何が間違ってるんですか?」

食い下がった。

  「『五』じゃなくて『伍』。」
  「にんべんが抜けてるやろ」

出演者の名前にある「伍」の字。
私は「五」と書いていたらしい。

それでも、謝らなかった。
むしろ、自信満々に答えた。

「だって、それ、ちゃんとインターネットに書いてましたから」

なんであんなことを言ったんだろう。
今なら絶対に言わない。

間違っていたのは、事実なのに。

そして言われた。

  「テレビマンなら、タレント名鑑で確認しろ」

「インターネットにそう書いてありました。」
「確かめましたよ。」

その時の私。
同じ言葉を何度も繰り返した。

間違っていない。
正しいことをした。

謙虚であれ。
よく先輩に言われていた言葉。

自分は正しい。
自分はできる。

  「テレビマンがインターネットを信じるな。」

その言葉だけが、ずっと残った。

インターネットに書いてある。
だから正しい。

私の資料に間違いはない。
だって、調べたから。

いつからそんなに調子に乗り始めたのだろう。

英語ができる自分。
カッコいいと言われた自分。

英語以外もできる自分。
特番を乗り越えた自分。



――そして今。



また、同じ場面にいた。

今度は分かっている。
タレント名鑑を開いた。

「伍」。
にんべんを忘れない。

間違えない。

役員会が終わる。
呼び出されない。

怒られない。

よし。
これでいい。

……でも。
また、何も起きなかった。

恥をかかなかった。
怒られなかった。

ただ、それだけだった。
一度目と同じだ。

自分の失敗を消した。
でも、何かが生まれるわけではない。

こんなことなら。

昔の自分をやり直す。
失敗を消す。

こんなことに意味はあるのか。

そう思った瞬間。
また、意識が遠くなった。


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