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「そっか、あの時も」第5話 個別指導塾の講師(前編)

また、意識が遠くなっていく。

もう、いいよ。

人生のやり直しでも、走馬灯でも。
もう、どっちでもいい。

ただ恥をかかなかった、だけ。
言いたいことが言えた、だけ。

もう十分。
満足した。

人の2倍生きた気がして疲れた。
もうやり直したいことなんて。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

2025年7月。

大阪にある、個別指導塾。
ここで働きはじめたのが最後だった。

自分のためだけに。
自分がカッコよくあるためだけに。

そんなことを考えずに向き合った子。
そこで出会うことができた。

受験生であるその子、
入社後すぐから知っている子だった。

ただ、私が担当し始めたのは、
中学3年生の1月だった。

2026年1月25日

私立高校の受験まで、
あと3週間。

公立高校の受験まで、
あと1か月と少し。

最初に担当したあの日。

どこがわからないか、ではなく、
何がわからないか、ではなく。

わからないことだらけだった。

『be動詞』『一般動詞』『三単現』『現在進行形』
『一般動詞の過去形』『be動詞の過去形』『未来』
『単語』『語順』

一つずつ、最初からやり直したい。
でも、そんな時間はない。

問題を解かせる。
止まる。

説明する。
もう一度やる。

また別のところで止まる。
そのたびに、必要なものを紙にまとめた。

説明を書く。
例文を作る。
問題を付ける。

次の授業で使う。
うまくいかなければ、また作り直す。

受験までの時間はどんどん減っていく。
教えたいことは、まだまだ残っている。

それから17日間、
1日も無駄にすることなく、一緒に戦った。

その子は私立高校に合格。

そして。
第1志望の公立高校にも合格した。

よかった。
彼女は頑張った。

1月からでは無理かもと思っていた。

あんなに詰め込ませてごめん。
あんなに厳しくしてごめん。

それでも、無事に合格した。
だから、それでよかった。

ただ。
もう一度だけ。

お願い。


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