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夏の陽射しと、夕立の匂い

夏の思い出というものは、不思議です。

何か特別な出来事を覚えているわけでもないのに、

強い陽射し。

アスファルトから立ちのぼる熱。

遠くで鳴いている蝉。

そして突然やってくる、夕立。

そんなものに触れた瞬間、

何十年も開けていなかった心の引き出しが、
ふっと開くことがあります。

「あれ……この感じ、知ってる」

そう思ったときにはもう、
僕たちは少しだけ、昔の夏へ戻っているのかもしれません。

夏の陽射しは、昔のほうが眩しかった

子どもの頃の夏は、
どうしてあんなに長かったのでしょう。

朝起きた瞬間から、外はもう明るい。

カーテンの隙間から差し込む陽射しを見ただけで、

「今日は何しよう」

それだけでワクワクした。

外へ飛び出せば、
容赦なく照りつける太陽。

帽子をかぶっていても暑い。

首筋には汗が流れ、
Tシャツはすぐに背中へ張りつく。

それでも、

「暑いから外に出たくない」

なんて、あまり思わなかった気がします。

自転車を漕いで、

友達の家へ行って、

公園へ行って、

虫を追いかけて、

意味もなく遠くまで冒険して。

冷房の効いた部屋よりも、
その先に何があるのかわからない外の世界のほうが魅力的だった。

今思えば、
大したことなんてしていません。

だけど、あの頃の僕らにとっては、

家から少し離れた場所へ行くだけでも、
立派な「冒険」だったんですよね。

空が急に暗くなる

そんな夏の日。

午後になると、
さっきまであれほど青かった空に、
大きな雲が浮かんでくる。

白かった雲が、
だんだん灰色になって、

風の匂いまで変わっていく。

木の葉がザワザワ揺れ始めると、

「あ、雨くるぞ!」

誰かが言う。

遠くから、

ゴロゴロ……

雷の音。

だけど子どもの頃って、
なぜかあの瞬間まで楽しかった。

「やばい!降る!」

「帰れ帰れ!」

自転車に飛び乗って、
必死にペダルを漕ぐ。

ポツ。

ポツ。

最初は大粒の雨が、
道路に黒い点をつくる。

そして次の瞬間、

ザァァァァァァッ!!

まるで空がひっくり返ったような雨。

「うわぁぁぁ!」

叫びながら笑って、

もう濡れてしまったら、
なぜかどうでもよくなる。

屋根のある場所へ逃げ込む子もいれば、

諦めてそのまま走る子もいる。

びしょ濡れになったTシャツ。

顔を流れる雨。

水たまりを跳ねる自転車のタイヤ。

家に帰れば、

「こんなに濡れて!」

なんて怒られるのに。

それすら、
どこか楽しかった。

雨が止んだあとの匂い

そして夕立は、
あれほど激しく降ったくせに、

突然、静かになります。

さっきまでの雨音が嘘だったように、
ポタ……ポタ……と、
軒先から水滴が落ちる。

雲の隙間から、
また陽射しが差し込んでくる。

濡れた道路がキラキラ光って、

草木についた水滴も輝いている。

そして漂ってくる、

あの匂い。

雨に濡れた土。

熱を持ったアスファルト。

湿った草。

少しだけ涼しくなった風。

名前なんて知らなかった。

ただ、

「雨上がりの匂い」

それだけだった。

でも今でも、
あの匂いを嗅ぐと、

胸の奥が少しだけ、
きゅっとなることがあります。

あの頃には、もう戻れないけれど

大人になると、
夕立は少し厄介なものになりました。

「洗濯物、大丈夫かな」

「傘持ってないな」

「電車止まらないかな」

「明日の天気は?」

空を見上げるより先に、
スマホで雨雲レーダーを見る。

雨が降る時間までわかる。

便利になりました。

本当に便利です。

だけど、

空が暗くなって、

「雨くるぞ!」

と慌てて走ったあの頃のような、
小さなドキドキは減ったのかもしれません。

知らないから、楽しかった。

予定通りにならないから、面白かった。

びしょ濡れになることさえ、
思い出になった。

子どもの頃は、

「今日」という一日を、
ずいぶん贅沢に使っていたんですね。

夏は、記憶を連れてくる

今年もまた、
強い陽射しが降り注いでいます。

蝉が鳴き、

青い空に入道雲が浮かび、

夕方になれば、
遠くで雷が鳴る日もあるでしょう。

そんなとき、

ほんの少しだけ、
昔を思い出してみてください。

夏休みに遊んだ友達。

帰り道。

自転車。

水たまり。

家から聞こえてきた夕飯の支度の音。

「早く帰っておいで」

そんな誰かの声。

もう会えなくなった人もいるかもしれない。

名前さえ思い出せない友達もいるかもしれない。

昔住んでいた町も、
すっかり変わってしまったかもしれません。

それでも、

記憶の中の夏は変わらない。

あの日の空は青いまま。

あの日の蝉は、
今も鳴いている。

そして、

あの日の自分は今も、
夕立の中をびしょ濡れになって走っている。

だからでしょうか。

夏の夕立が通り過ぎたあと、

少し涼しくなった風が頬を撫でると、

なんとなく懐かしくなるのは。

きっとあの風の中には、

雨の匂いだけではなく、

僕たちがどこかへ置いてきた
「昔の夏」も混ざっているのでしょう。

今日もし夕立が降ったなら、

雨宿りしながら、
少しだけ空を眺めてみませんか。

スマホをしまって、

雨の音を聞いて、

雨上がりの匂いを吸い込んでみる。

もしかすると、

ずっと忘れていた夏の日が、

「まだ覚えてる?」

と、

心の奥からひょっこり顔を出してくれるかもしれません。

あなたの記憶に残っている、

「夏の夕立の思い出」

はありますか?

びしょ濡れになって帰った日。

誰かと雨宿りした日。

雷が怖くて泣いた日。

雨上がりに虹を見つけた日。

よかったらコメントで、
あなたの「昔の夏」を聞かせてください。

誰かの思い出を読むことで、
また別の誰かの忘れていた夏が、
そっと目を覚ますかもしれませんから。☀️🌧️🌿

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