【小説】Lv5 容赦なきキックオフ|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第1章 冒険への誘い 編
【これまでのお話】
Lv5 容赦なきキックオフ
新しい4年4組の生活が
始まって何日か経ち、
僕たちは、少しずつ新しい環境にも
慣れてきていた。
先生との距離が、
日に日に縮まっていく。
そして、すぐに気がついた。
先生は、教壇の上だけでなく、
『遊び』のフィールド
においても、圧倒的な
強キャラだということに。
僕たちが、
何よりも楽しみにしていた時間。
それは、給食が終わったあとの、
『昼休み』だった。
給食を食べ終わるのと同時に、
に校庭へ飛び出し、
みんなで夢中になって
サッカーボールを追いかける。
それが、
僕たちの4年4組の日課だった。
あの日も、いつも通り校庭の片隅で
激しいミニゲームが繰り広げられていた。
そこへ…
1人の長身の影が
まぶしい笑顔で現れたんだ。
「おーい! おれも混ぜて!」
すでに先生の底知れない魅力に
取り憑かれていた僕たちは、
一瞬で大喜びした。
「イェーイ!! 」
「先生、
こっちのチームに入ってよ!」
「いや、ずるい!
僕たちのチームだよ!」
当然、想定通りの大争奪戦が始まる。
誰もが、最強の勇者を自分のパーティーに
引き入れたくて必死だった。
けれど、ゲームが始まった瞬間に、
僕たちは思い知ることになる。
「……えっ? うそだろ?」
ピッチに立った先生の目は、
完全に
『戦闘モード』
だった。
速い!
とにかく、走る速度が僕たちとは次元が違う。
うまい!!
軽快なドリブルで、
子どもたちのディフェンスを
軽々と置き去りにしていく。
強い!!!
束になってぶつかりにいっても、
岩のようにビクともしない。
ボールが、取れない。

「いくぞーーーーー!!!」
叫び声とともに放たれたのは、
大人の本気のシュート。
バサッッッッ!!
大気を切り裂くような強烈なシュートが、
容赦なくゴールネットに突き刺さった。
手加減。
そんな軟弱な言葉は、
この勇者の辞書には存在しなかった。
10歳の子どもたちを相手に、
24歳の青年が、
100%の本気で牙を剥いてくる。
「これが……
これが、勇者の力かよ……」
圧倒された。
ただの『昼休みの楽しい遊び』の
つもりだったこのサッカーは、
僕たちにとって、
『容赦なきキックオフ』
だったんだ。
ずるい。
大人げない。
大人なんだから、
僕たちより強いに決まってるじゃん。
当時は、心のどこかで、
そんな風に悔しがっていた。
でも、10歳の僕にはまだ、
その本当の意味がわかっていなかったんだ。
先生は、ただサッカーの
勝ち負けを競っていたんじゃない。
勉強だけじゃなく、
遊びだって、
人生のすべてにおいて
いつでも、
100%本気でやるんだ
という生き様を、
その背中で、
その強烈なシュートで、
僕たちに教えてくれていたんだ。
教師という勇者のステータスにおいて、
『母性』と『父性』
をバランスよく持ち合わせることが大切だ、
という話はよく耳にする。
けれどあの日、
僕たちは先生から
『もう一つの全く新しいステータス』
を受け取っていた。
それは、
大人になっても子どもの心を忘れない、
『子性(こせい)』
という名の、∞(無限)の力。
子どもと同じ目線まで降りて、
同じ熱量で泥だらけになり、
本気でぶつかり合うことができる力。
それを受け取ったからこそ、
僕たちの胸の奥にある
『∞の可能性』のスイッチが、
カチリと音を立てて入ったんだ。
大人が本気で遊んでくれる。
それが、
これほどまでに嬉しくて、
これほどまでに悔しくて、
これほどまでに
僕たちを熱くさせるなんて、
知らなかった。
4年4組が校庭で、
泥だらけになりながら勇者と交わした
『容赦なきキックオフ』
小さい体での、
あの短いパス回しの記憶は、
30年という長い時間を経て…
大人になった今の僕の中でも、
色褪せない宝物として激しく生き続けている。
ユーチは『子性の種』
を手に入れた!
Lv5:容赦なきキックオフ 完 / Lv6へ続く
