人生が壊れかけた62歳、家族のために僕が選んだ生き方 第2章
その弌
警備員という仕事が教えてくれたこと 2
第2話 本業を続けるための条件
面接に向かう時も、私の気持ちは変わっていなかった。
「話だけ聞いてみよう。」
それだけだった。
警備員になりたいわけではない。
本業を辞めるつもりもない。
ただ、生活を守る方法を探していた。
だから、面接で最初に伝えたことがある。
「本業を優先したい。」
これだけは譲れなかった。
私は職人としての仕事を続けたかった。
本業がある日に警備を休めないのであれば、この話は受けられないと思っていた。
すると、会社から返ってきた言葉は意外なものだった。
「本業優先で大丈夫です。」
本業の仕事が入れば、そちらを優先してください。
交代できる勤務なら、他の方と相談して勤務を交代しても構いません。
その言葉を聞いた時、不安が少し軽くなった。
副業のために本業を失う。
収入面でも、それでは本末転倒である。
そんな心配をしなくてもいい。
この会社は、今の私の働き方を理解しようとしてくれている。
そう感じた。
勤務日数も無理のない範囲だった。
およそ月に十日前後。
シフトによって勤務時間は変わる。
巡回や駐輪場の整理、施設内での立哨などの日は五〜六時間。
ゲート監視や窓口対応の日は八時間。
休業日は十時間勤務になることもある。
無理に毎日働く契約ではない。
本業と両立できる働き方だった。
収入は勤務日数によって変わるが、およそ月六万円台後半から八万八千円ほど。
決して大きな金額ではない。
それでも、私にとっては生活を支える大切な収入になる。
この面接で感じたことが一つある。
会社は、人を採用しようとしていた。
でも私は、それ以上に、自分の生活を理解してくれる会社かどうかを見ていた。
条件だけではない。
人として向き合ってくれるか。
本業を大切にしてもいいと言ってくれるか。
その答えが、この会社にはあった。
だから私は、この仕事を始めてみようと思えた。
振り返れば、契約書に書かれていた条件よりも、相手が口にした一言の方が心に残っている。
「本業を優先してください。」
その言葉は、働くことへの安心だけではなく、人として尊重されているという安心でもあった。
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今回の一言
安心して働ける職場は、条件よりも、人への理解から生まれる。
