見出し画像

Appleですら値段を決められない。iPhoneが安くならない本当の構造

あのAppleが、仕入れ先に頭を下げる時代になりました!

半導体、特にメモリ半導体と言われる業界は今値引きどころではない。

多少高くても数量をください、の世界が到来。それがAppleのコストアップに直撃しています。

半導体材料業界に10年以上携わる現場から、今日はこの話をします。

この記事でわかること

第1章|Appleが「禁じ手」に踏み込んだ日

7月1日、米Bloombergが驚きのニュースを報じました。

Appleが、中国のメーカー2社からメモリー半導体を調達する方向で協議している、というのです。

メモリーとは、スマホやパソコンの中でデータを覚えておく役割を持つ半導体のこと。iPhoneにもMacにも必ず入っている、心臓部の一つです。

相手は中国のCXMT(長鑫存儲技術)とYMTC(長江存儲科技)という2社。

  • CXMT → 作業中のデータを一時的に覚える「DRAM」が得意

  • YMTC → 写真やアプリを長期保存する「NAND」が得意

ここで重要なのは、この2社が米国防総省の警戒リストに載っている企業だということ!
中国軍とのつながりが疑われる企業として、米国政府がマークしている相手なんです。

しかもAppleには「前例」があります。

2022年にもYMTCからの調達を計画し、米議会の猛反発を受けて断念しているんです!

一度あきらめた禁じ手に、もう一度踏み込もうとしている。
政治的なリスクを承知の上で、です。

なぜそこまでするのか?? 答えはシンプルです。
それだけAppleが追い込まれているからです。

第2章|数字で話します。Appleを追い込んだ「ぼろもうけ」の実態

数字で話します。

米Micron(マイクロン)という、Appleにメモリーを供給している大手メーカーがあります。

この会社のスマホ向け事業の粗利率(売上から原価を引いて残る利益の割合)が、こうなりました。

  • 2025年3〜5月期:24%

  • 2026年3〜5月期:87%

たった1年で63ポイントの上昇です。驚異の87%!!
100円売ったら87円が粗利。日本経済新聞が「ぼろもうけ」と表現するレベルの、異常な利益率です。

そして、そのしわ寄せは最終製品に来ています。

Appleは6月25日、MacやiPadなどを世界で値上げ発表。

日本でも最低価格が2〜3割の引き上げです。

Apple自身がこう認めています。
「部品価格がこれほど短期間に大きく上昇したことはなかった」

あのAppleが、です。

世界で最も強い交渉力を持つと言われてきた会社が、値上がりを吸収しきれず、お客さんへの値上げに踏み切った。

買い手が値段を決める時代は、終わりました。

今は、売り手が値段を決めています。

第3章|「Appleは最強の買い手」は、もう古い

「Appleといえば、取引先を買い叩く最強の買い手」

そんなイメージ、ありませんか?

かつては実際そうでした。

なぜか?

iPhoneに採用されるかどうかで会社の命運が決まるので、供給側はAppleの言い値に近い条件でも受けてきたんです。

でも実態は、完全に逆転しています。

理由はAIです。

ChatGPTやGeminiのようなAIサービスは、巨大なデータセンターで動いています。

そしてこのデータセンター向けに、HBMという超高性能なメモリーが爆発的に売れています。HBMとは、AIの計算役であるGPUのすぐ隣に置かれる、超高速のメモリーのことです。

メモリーメーカーからすれば、高く売れるHBMに工場の能力を集中させるのは当然の判断。

その結果、スマホやパソコン向けの普通のメモリーが品薄になり、価格が急騰しました。

流れを整理すると、こうです。

  1. AIデータセンターがメモリー需要を一気に飲み込む 

  2. スマホ・PC向けメモリーが品薄になる 

  3. メモリー価格が急激に上がる 

  4. Appleですらコスト吸収できない

  5. Apple製品値上げ

Appleが中国2社のメモリーメーカーに接近しているのは、この構造から抜け出すためです。調達先を増やせば、既存メーカーに「値下げ圧力」をかけるカードにもなりますから。

第4章|現場から見えていること

私は半導体材料業界に10年以上携わっていて、営業として3年、メモリーメーカーを含むお客様と日々やり取りしています。

現場の空気を、率直にお伝えします。

メモリーメーカー各社がこれだけ利益が出ていることは周知の事実。

ホルムズ海峡問題や原材料高騰の影響もあり、今はどのサプライヤーも値上げをお願いしている状況です

そして何より印象的なのが、お客様の判断基準の変化です。

以前は「1円でも安く」の世界でした。

今は「多少高くても、歩留まりが上がるなら採用します」

歩留まりとは、作った製品のうち良品がとれる割合のこと。

つまり、値段よりも「たくさん、確実に作れること」が最優先になっているんです。それだけ供給が足りていません。

もう一つ、肌で感じているのが中国メーカーの実力です。

半導体材料の業界でもそうです。材料調達のコンペで、中国メーカーが競合として出てくる場面が明らかに増えました。
メモリー業界でも、HBMのようなAI向け最先端品はまだ難しい。でも、今回Appleが検討している汎用のDRAMやNANDなら、十分に戦えるレベルまでキャッチアップしています。

コロナ禍の半導体不足のときは「モノが足りない」だけでした。

今回は違います。

力関係そのものが逆転している。 ここが、現場にいて一番大きな変化だと感じるところです。

第5章|これ、遠い話ではありません

「Appleと中国の話でしょ?自分には関係ないよ」

そう思った方にこそ、お伝えしたいです。

7月2日、このニュース一本で世界の株式市場が揺れました。

  • 米Micron株 → 5%安

  • 米SanDisk株 → 14%安

  • 韓国SK Hynix株 → 15%安

  • 韓国Samsung株 → 9%安

  • 日本のキオクシア株 → 13%安

  • 韓国の株価指数は8%安

  • 日経平均も2%安

「Appleが中国から買うかも」という観測報道だけで、これです。

正直に言えば、直近の株価は上がりすぎていた面があると思います。1本のニュースで15%も下がるのは、それだけ期待が高すぎた証拠

ただし、株価の調整と実需は別の話です。

AIがメモリーを必要とする流れは止まりません。メモリーという市場のパイ自体は、これからも大きくなり続けます。そこに中国メーカーがどこまで食い込んでくるか。今後の勝負はその点にかかっていると、私は見ています。

つまり、こういうことです。

  • メモリーの値段は当面、高止まりしやすい

  • iPhoneもPCもゲーム機も、値下がりする理由が見当たらない

  • Appleの中国調達が実現すれば、価格を下げさせる圧力になるかも

  • 実現しなければ、高値がそのまま製品価格に乗り続ける

あなたが次にスマホを買い替えるとき。 その値札には、この力関係の行方が反映されています。

第6章|今日はここだけ分かればOK

今日、ここだけ持ち帰ってください。

「メモリーの値段は、いま買い手ではなく作り手が決めている。だからスマホもPCも安くなりにくい」

これだけ頭に入っていれば、AppleのニュースもiPhoneの値札も、見え方が変わってくるはず。

焦って動くことと、情報を持って動くことは違います。買い替えのタイミングは、あなたの生活に合わせて決めればいい。

ただ、知らないまま「そのうち安くなるだろう」と待ち続けるのは、根拠のない期待です。下がる理由が、今のところ一つもないのですから。

世界一の買い手ですら、頭を下げて調達先を探しに行く時代。 その変化を知っているかどうかで、これからの買い物の納得感は大きく変わると思います。

もしこの記事が面白いなと感じてくださったら、ぜひ私のアカウントをフォローしてください👇 @Kohei127_

こちらの記事もぜひご覧ください!👇