やってみよう、慈悲の瞑想(初期仏教)
お釈迦様が息子に直接指導した大切な瞑想
釈尊が息子であるラーフラ尊者に対して慈悲(メッター)を深めるよう説かれた際、その効果についてこのようにおっしゃいました。
「ラーフラよ、慈(メッター)の瞑想を深めなさい。そうすればどんな怒りも消えてしまう…
ラーフラよ、悲(カルナー)の瞑想を深めなさい。そうすればどんな残虐性も消えてしまう…
ラーフラよ、喜(ムディター)の瞑想を深めなさい。喜の瞑想を修習すれば、どんな不満(嫉妬)も消えてしまう…
ラーフラよ、捨(ウペッカー)の瞑想を深めなさい。捨の瞑想を修習すれば、どんな怒り(傲慢・慢心による反発)も消えてしまう…」
※『大ラーフラ経』Mahārāhulovāda-suttaより抜粋、現代語訳。
(パーリ仏典経蔵中部・第62経)に収録されているお経です。
慈悲の瞑想のやり方
テーラワーダ仏教(スリランカ上座仏教)における「慈悲の瞑想(メッタ・ヴァーヴァナ)」は、自分自身、そしてすべての生きとし生けるものに対して、純粋な慈しみ(幸福を願う心)を育む非常に重要な実践法です。
慈悲の瞑想は、
「言葉の感覚を心で感じること」
「慈しみの感覚を感じること」
「その波長・波動を広げていくこと」
を大切にします。
具体的な実践の流れとステップは以下の通りです。
そして、まずは簡単なことからはじめてみるのが一番のコツです。リラックスしてやってみましょう。
◆慈悲の観想の基本
一般的に、慈悲の観想は以下の順序で、対象を広げながら行います。対象は人・生命です。
無理に感情を湧き上がらせる必要はなく、言葉を心の中で唱え、その「慈しみの感覚」を心に馴染ませていくことが大切です。
慈(メッター): 自分自身と生きとし生けるものの幸福を願う心。
怒りを静める。
悲(カルナー): 苦しむものに寄り添い、救いたいと願う心。
残虐性や害意を静める。
喜(ムディター): 他者の成功や喜びを共に喜ぶ心。
嫉妬や不満を静める。
捨(ウペッカー): 執着や偏りのない、平静な心。
慢心や怒りを静める。
◆慈しみを育てる5つのコツ
①慈しみの対象を「自分自身」から始めましょう
③結果を求めないこと。
④目的も作らないこと。
⑤無理をしないこと。
※これらは心と脳がリラックスして喜ぶ効果があります。
1. 基本的な姿勢と心構え
姿勢: 家庭やオフィスや電車の椅子、どこでも構いません。スペースがあればあぐらで座っても良いでしょう。また、横になった姿勢、立った姿勢でもOKです。(ようするに、いつでもどこでもできるということです)
背筋を無理なく伸ばし、身体の力を抜いてリラックスします。
呼吸: 2〜3回 深呼吸をして心を落ち着かせ、普段の自然な呼吸に戻します。
心構え: 無理やり心や性格を変えようとする必要はありません。
念じる、祈る、願う、どんな形でもやりやすい形でOKです。
自分にとって、「ほんの小さなこと」「簡単にできる事」からやってみます。
2. 慈悲の瞑想の「4つのフレーズ」
伝統的に、以下の4つの願い(幸福、苦しみがないこと、心の平和、健康)をベースにした言葉を唱えます。
私が幸せでありますように
(慈・メッター)
私の悩み苦しみがありませんように。
(悲・カルナー)
私の願い事がかなえられますように。
(喜・ムディター)
私に、真理の智慧の光が現れますように。
(捨・ウペッカー)
3. 実践のステップ(対象を広げていく)
テーラワーダ仏教では、慈しみの感情を無理なく育てるために、
**「簡単な対象から、徐々に難しい対象へ」**と段階を踏んで広げていくのが特徴です。じつは全ての瞑想で大切なのは、順番、段階を飛ばさないことです。だから慌てなくて大丈夫。ひとつづつやってみましょう。
ステップ①:自分自身への慈悲
すべての基本は自分自身です。自分が幸福で満たされていなければ、他者に真の慈しみを向けることはできません。
実践: 自分に意識を向け、上記の4つのフレーズを心の中でゆっくり、丁寧に唱えます。
私が幸せでありますように
私の悩み苦しみがなくなりますように
私の願いがかなえられますように
私に智慧の光が現れますように
ステップ②:親しい人々への慈悲
次に、自分が心から感謝している人、大好きな人。(例:両親、家族、お世話になった人、恩師、親友など)
※恋人や夫、妻は愛欲の対象になるので、瞑想のときは対象にしません。
実践: 「私の親しい人々が幸せでありますように…」と、フレーズの対象を彼らに変えて唱えます。
私の親しい生命が幸せでありますように
私の親しい生命の悩み苦しみがなくなりますように
私の親しい生命の願いがかなえられますように
私の親しい生命にも智慧の光が現れますように
ステップ③:生きとし生けるものすべてへの慈悲
個人の枠を超えて、すべての生命へと慈悲の波動を広げていきます。
実践:
生きとし生けるものが幸せでありますように
生きとし生けるものの悩み苦しみがなくなりますように
生きとし生けるものの願い事がかなえられますように
生きとしいけるものにも智慧の光が現れますように
ステップ④嫌いな人(あるいは苦手な人)
ここからが最も難しいステップです。相手の不幸を願うのではなく、その相手の怒りや苦しみが解けるようにと願います。
実践
私の嫌いな生命が幸せでありますように
私の嫌いな生命の悩み苦しみがなくなりますように
私の嫌いな生命の願いがかなえられますように
私の嫌いな生命にも智慧の光が現れますように
ステップ⑤私を嫌っている生命
私を嫌っている生命が幸せでありますように
私を嫌っている生命の悩み苦しみがなくなりますように
私を嫌っている生命の願いがかなえられますように
私を嫌っている生命にもに智慧の光が現れますように
ステップ⑥:生きとし生けるものすべてへの慈悲(全体への拡大)
全ての生命へと慈悲の波動を広げていきます。
実践:
生きとし生けるものが幸せでありますように
生きとし生けるものの悩み苦しみがなくなりますように
生きとし生けるものの願い事がかなえられますように
生きとしいけるものにも智慧の光が現れますように
と唱えます。人間だけでなく、動物、昆虫、目に見えない小さな生命、さらには生きる世界すべてを包み込むようにイメージします。
最後に、その清らかな心を「東・西・南・北・上・下」の空間全体、そして地球全体、宇宙の一切の生きとし生けるものへと、限界なくサーッと放射し、世界をその心で満たしていくイメージを保ちます。
慈しみの心を「意図して向けた」という行為そのものが、心の筋肉を鍛える最強のトレーニングになります。繰り返し何度も何度も行う事がとても重要です。
💡 実践のコツと注意点
最初は「嫌いな人」を対象にしなくても大丈夫です。
嫌いな人をしっかり念じられるようになるまで何ヶ月もかかるかもしれません。だけどそれでいいのです。必ずできるようになっていきます。
具体的なイメージは必要ありません。リラックスしてやってみましょう。感情がこもらなくても問題はありません。
時には素早く、時にはゆっくりと時間をかけて、慈しみの心がだんだんと育ってゆきます。ブッダの教えに心身をゆだねてみましょう。
この毎日の積み重ねが、「慈しみ」というまったく新しい心を育ててゆくのです。
まずは「自分」と「親しい人」、そして「生きとし生けるもの」から始めます。
できたら次のステップに進みます。
「親しい人々」「嫌いな人々」という区別の境界線が溶けていくことを「境界打破」、「境界の融解」といいます。
慈しみが理解できず、心が澄んだ状態や温かくならなくても問題ありません。
生命のシステム上、人間は「愛着」を理解することはできますが、「慈しみ」を始めは理解することができないのです。
「言葉を感じる」
「慈しみの感覚を感じる」
という行為自体が、脳と心に慈しみの種を蒔いています。毎日5分でも10分でも、淡々と続けることが大切です。
「慈しみ」が脳と心に育つのにゆっくり時間がかかります。慌てなくていいのです。
これはビジネスでも何でもないのですから…。
ベッドの中でも、歩いているときでも、眠っていない時ならばいつでも実践します。
日常のあらゆる瞬間で行う
座って行う瞑想だけでなく、歩いているとき、電車に乗っているときなどに、周りの人々に向けて心の中で「この人たちが幸せでありますように」と念じるのも素晴らしい実践(日常のメッタ・慈しみ)になります。
スリランカの寺院などでは、朝夕の読経(プージャー)の際にもこの慈悲の言葉がパーリ語で唱えられ、人々の生活に深く根付いています。
(Sabbe sattā bhavantu sukhitattā...)
(サッベーサッダーバワントゥスキタッター)
(全ての 衆生 生まれゆくものが 幸福でありますように)
sadu,sadu,sadu(善き哉、善き哉、善き哉)
慈悲の瞑想のやり方を少々補足してあります。
イメージを使用しない理由を解説しております▼
山あり谷あり。しんどいことも沢山ある人間界。でもメリットもあるのです。▼
人間の世界での修行を諦めないために。
なぜ修行になかなか成果がないのか?また、成果がなくても諦める必要が全くない理由をお伝えします▼
沢山あるブッダの教え。どのように実践したらいい?おすすめ記事はコチラ▼
実際にサンガの比丘から指導を受けたい方はこちらがおすすめです(^^)指導場所の紹介▼
ヴィパッサナー瞑想の基本となる「四念処」についてはこちらがオススメです(^^)▼
人間は何を修行し、何を思い生きるべき?
お釈迦様が息子ラーフラに説いた修行の全てにも慈悲の瞑想が含まれています▼
※こちらの記事の補足です。(内容がかぶってるところもあります)

生きとし生けるものが幸せでありますように。
_________________________________________________
・2500年前ブッタが伝えた苦を滅する瞑想
ダンマパダの登場人物達が実際に行っているヴィパッサナー瞑想、慈悲の瞑想のやり方を、スリランカ上座仏教アルボムッレ・スマナサーラ長老がテキストにしてまとめられた記事です。
ヴィッパッサナー瞑想 - 日本テーラワーダ仏教協会 https://share.google/R0CUcvXbkXnV6xrHZ
慈悲の瞑想
https://youtu.be/LatA5FQa81o?si=IwafgsgSp5Fi6lpa
(参考書籍)
「心の清流を求めて」ダンマパダとその因縁物語全集
(施本)
https://kokoronoseiryu.sakura.ne.jp/sehon_info/sehon_info_main.html
(内容)
https://kokoronoseiryu.sakura.ne.jp/dp_contents/dp_1_p_dp_contents_index.html
