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愛着障害と複雑性PTSD

生きづらい人に届いてほしい。この一心で、今回も書く。


今回は、岡田尊司の『愛着障害と複雑性PTSD 生きづらさと心の傷をのりこえる』を紹介しよう。

トラウマ、複雑性PTSDに悩む人におすすめ。


要約

一部だけを要約しよう。詳細は本書へ進んでほしい。


愛着とトラウマ

愛着とトラウマは脳や心の異なる仕組みであるが、お互いに深く影響し合っている。愛着とは、特定の人との間に築かれる「安心感の土台」であり、不安やストレスから心を守るバリアのような役割を果たす。これに対してトラウマは、命の危険を感じたときに身を守るための「警報装置」であり、この装置が壊れて恐怖のアラームが鳴り止まなくなった状態がPTSDである。 もともと親との関係などで愛着の土台が不安定な人は、ストレスから身を守るバリアが弱いため、トラウマを負いやすい。さらに、自分を守るべき親から傷つけられることで、愛着の傷とトラウマが重なる二重のリスクを抱え、より深刻な「複雑性PTSD」になりやすくなる。反対に、もともと愛着の土台が安定していた人であっても、いじめや虐待などのつらいトラウマを繰り返し受けることで、安心を支える愛着システム自体が壊れて不安定になってしまうこともある。このように、愛着という心の土台が弱まることは新たなトラウマを招き、繰り返されるトラウマは愛着をさらに不安定にするという、負の連鎖が起きるのである。


複雑性PTSDってなに?逃げられないつらさが続く心の傷

事故や大災害など「一回の大きなショック」で起こるのが普通のPTSD。それに対して複雑性PTSDは、家の中での虐待やいじめのように、「自分では逃げられない場所で、つらい出来事が何度も何度も繰り返し続くこと」で心に深い傷が残ってしまう。

自分の自由や気持ちを奪われ、相手の思い通りに支配されてしまうこと(全体主義的な支配)で起こる。主体性が奪われる。


「ノー」と言える安全な環境を確保する

アラームが鳴り響く背景には、理不尽な状況に対して「反撃や抵抗ができず、ノーと言えない環境」がある。嫌なことにははっきりと「ノー」と言い、ぶつかることがあってもお互いの気持ちを話して仲直りできる、そんな「本物の安全基地」を身近に作ることが、結果としてトラウマやアラームへの耐性を最も高めることにつながる。


トラウマのしくみ

トラウマが人の心と体に与える影響は、脳や自律神経の生理学的な仕組みから説明ができる。強い恐怖や命の危険を感じると、人間の脳内では、危険を察知して恐怖を呼び起こすアラーム装置である「扁桃体」が異常に興奮する。この扁桃体には、言葉にならない感覚の断片が整理されずに保存されている。本来であれば、脳の司令塔であり冷静なコントロール役を担う「腹内側前頭前野」がこのアラームを抑制するが、トラウマ状態においてはその機能が低下し、脳がアラームに完全に乗っ取られた状態になるのである。さらに自律神経系では、交感神経の過剰な緊張によって心拍数の上昇や筋肉の緊張が生じる一方で、ストレスの限界を超えると、体は何も感じなくさせて身を守る「ブレーカーが落ちた状態」になる。これは、爬虫類にも備わる古い「背側迷走神経」の働きによるもので、体を全く動かせなくする「フリージング(不動化)」や、意識を飛ばす「解離」を引き起こす。この不動化という生き延びるための行動のブレーキが解除されず、体の中に閉じ込められたまま長引くことこそがトラウマの本質である。この状態から回復するためには、信頼できる人との接触や安心感によって「愛着システム」を活性化させ、腹内側前頭前野の働きを高めて扁桃体の暴走をコントロールすることが不可欠となるのである。


愛着アプローチ

心に深い傷を負ったトラウマからの回復において、最も重要な役割を果たすのが「愛着(あいちゃく)」という心の仕組みである。愛着とは、特定の相手との間に築かれる「心の安心の土台」のことであり、これが不安定な状態では傷からの回復力自体が十分に働かない。愛着の視点から回復を目指す理論では、過去のつらい記憶を無理にほじくり返すよりも、現在の人間関係を安定させ、心の中に「安全基地」と呼ばれる安心できる居場所を作り直すことが最優先される。これを「愛着アプローチ」と呼ぶ。

具体的な方法としては、まず本人の周りに安全基地を提供することが求められる。特に、親などの身近な大人がカウンセリングや治療を通じて自らの心の余裕を取り戻し、本人を温かく見守る安全基地へと変化することで、本人の不安定な心や様々な症状は劇的に回復へと向かう。同時に、本人が自分自身の感覚とつながり、自分の人生を自分で決める「主体性」を取り戻すことも不可欠である。かつて過酷な環境で自分の意思を無視され続けた人は、自分が本当はどうしたいのか、あるいは何を望んでいないのかが分からなくなりやすい。そのため、ノートに自分の希望を書き留めるなど、小さな一歩から「嫌なことにはノー」と意思を表現し、失敗を恐れずに様々な試行錯誤を繰り返す練習を重ねる。

このように、現在の周囲との温かい絆を土台としながら、自分の人生を少しずつ歩み始めることこそが、過去の傷の支配から抜け出し、本当の回復を成し遂げるための最も確実な道なのである。



感想

著者は「愛着障害」についての本を何冊も出す専門家である。とくに、愛着障害のせいで発達障害に見える、という著者の意見は、ぜひ一読してほしい。記事もしている。


よって、トラウマを愛着の観点から整理する点が、本書の貴重なところだと思う。

愛着(=安全基地)があればトラウマへの耐性が強いこと。これは確かに、と思える。そして本書では、「主体性=(ノーと言えること)」の重視も目立つ。個人的にも、この主体性の表現、実行はとても重要だと思う。主体性を破壊されていることは、複雑性PTSDに苦しむ人の顕著な特徴に見える。

私個人としては、「わがまま」になれ、と言いたい。



治療法の土台に、愛着アプローチがあることも本書の特徴だろう。著者の長年の経験、そして、人間への想いが溢れている。より根本的に、本人の人生の幸せ、自由さ、充実度に繋がるのは、愛着のある人間関係なのだろう。くわえて、本書では、仏教やマインドフルネスなどの長期的な実践も紹介してくれている。

ただし、複雑性PTSDに苦しむ人にとって必要なのは、即効性のある治療である。愛着アプローチは時間がかかり、環境の用意の難易度がとても高い。

本書でも即効性のあるアプローチはいくつかは紹介されている。こうした治療法については、類書を探してみてほしい。個人的におすすめしたいのは、「TSプロトコール」である。

次の記事で紹介している。



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