人生が壊れかけた62歳、家族を守るために僕が選んだ生き方 第2章
その弌
警備員という仕事が教えてくれたこと 3
第3話 私も、そう思っていた
警備員になる前の私は、この仕事を知っているつもりだった。
解体や建設、設備メンテナンスの現場で長く働いてきた私は、警備員の姿を毎日のように見てきた。
朝一番に現場へ来て、車を誘導し、人の安全を守る。
現場が終われば最後まで残る。
決して楽な仕事ではない。
それなのに、現場では心ない言葉を掛けられることもある。
乱暴な態度を取られることもある。
私は、その光景を何度も見てきた。
だからこそ、自分がその制服を着る日が来るとは思ってもいなかった。
正直に言えば、抵抗があった。
「自分には関係ない仕事。」
どこかで、そう思っていた。
でも、その「どこかで」が偏見だったのかもしれない。
がんになり、仕事が減り、年齢を重ね生活を守る方法を考えなければならなくなった。
立場が変わると、見える景色も変わる。
今まで遠くから見ていた仕事が、自分の目の前に現れた。
面接を受け、採用が決まり、制服を受け取った日。
うれしいという気持ちよりも、複雑な気持ちの方が大きかった。
「本当に自分にできるだろうか。」
「やっていけるだろうか。」
そんなことばかり考えていた。
今振り返れば、仕事に不安があったのではない。
変わることに不安があったのだと思う。
ただ、生活は待ってくれない。
一歩踏み出さなければ何も変わらない。
紹介してくれた人たちへの感謝もある。
だから私は、その制服に袖を通した。
その時はまだ知らなかった。
この仕事が、私の仕事に対する考え方を大きく変えることになるとは。
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今回の一言
偏見は、遠くから見ている時に生まれる。
