ジークアクスが継承した、ガンダムのメッセージ
先日、面白い記事が出ていましたね。
富野由悠季監督が、ガンダムで描いた宇宙移住を否定したという記事です。何が面白いって、ガンダムを作ってた時は言えなかったという大人の事情ですね。これがリップサービスではなく事実であることは、15年前のこちらの動画で解ります。
富野監督の主張はずっと一貫しているんですね。つまり物資を届ける距離の問題を解決しなければ生活は現実的ではないし、そもそも文明の利器がなければ生存も不可能な空間での自給自足は極めて難しい、ということでしょう。移住は馬鹿馬鹿しい話だ、としながらも宇宙から地球を見る必要性を説くあたりは、ニュータイプ論で語ろうとした人類の革新に通ずるものも感じます。リアルと夢想の狭間に生きるアニメーション作家の姿ですね。
視野を広げるための活力を、アニメから
また、富野監督は3年前にこのようなインタビューも受けています。
Gレコ劇場版後のインタビュー、これも上の記事で語った直近の宇宙論と同じことを言っていますね。嚙み砕いてまとめると、パソコンの中で完結させず世界を見ろ、という話になるでしょうか。日本から出たこともなく、また出ようとも思っていない私には、結構刺さる話でした。
ただ、イーロンマスクはじめ宇宙開発云々を謳う著名人には政治的思惑しか感じないので、人間は地球に足を着けてしっかりと生きていくべきだという点にはとても共感できます。
そもそも現代、未来が明るいと思えないので人々から能動性が失われていて、代わりにインターネットが発達してしまった(あえてこう書きます)のでなんでも「その場から動かずに出来る」ようになっている。なかなか、自分の足と目で世界を見よう、という気持ちになれず視野はどんどん狭くなっていく…というのが問題なのかな、と感じています。
途端にスケールの小さい話になって恐縮ですが、先日特に目的もなくちょっと遠出をした話を書きました。
これはよくよく考えると、家から出なさすぎるのは良くないなという危機感に基づいて行動したものですから、指針としては健全なムーブだったなと思います。「たまには行ってみるか」、結構大事なのではないでしょうか。
自分の身体を動かして、様々な場所を実際に見て回る。
人間に必要なことはそうやって学んでいくものである。
第二次大戦時の軍人、イーロンマスクのような出来もしないことを出来ると思ってしまうバカにはなるな。学ばない政治屋になるな。
富野監督の言葉は、こう伝えている気がします。
太平洋戦争開戦直前に生まれ、日本の盛衰を見てきた方の強い意志ですね。
監督の作品には、そんなエネルギーをあらためて感じます。
クリエイターが見せる「抵抗」、そこが醍醐味
ここまでの話、「視野を広く持て」という意志がガンダムはじめ富野作品にあるのだとしたら、それをある意味、今の時代に沿った形で実現したのが先日まで放送されていたジークアクスではないでしょうか。
内容に賛否はあれど、過去作未見の視聴者に、初代ガンダムへの関心を持たせることには成功しています。ジークアクスが無ければ、大袈裟な話一生涯観ることが無かったかもしれない人達が動いたということです。
初代ガンダムのifストーリーを描き、ガンダムを知る人たちがネットで大盛り上がりを見せる。それに感化され、初代ガンダムを観てみようかという気持ちが芽生える。「視野を拡げろ!」と押し付けるのではなく、「楽しそうだから私も参加したい」という能動的な形で、まずは興味のあるアニメで心を動かす。まさに現代的な成功例と言えるかもしれません。
8話の放送時点で、そういう趣きを感じて感想としたことがありました。
挑戦的でかつ、迎合している部分も併せ持っているんですね。
しかしそれらも含めての、時代の流れへの「抵抗」ではないかと感じています。

実際にジークアクスを観た人達の何割が興味を持ち、その中の何%が観るのか、までは分かりません。ですが観た、という声は聞きますしさらに初代だけでなく逆シャアまで、という熱量の方も見受けられました。
さらにはこの中の幾人かは感銘を受け、他の富野アニメや同じ時代の別の作品にも手を伸ばす可能性まであります。たかだかアニメかもしれませんが、確実に見識を広げることに繋がっているのではないでしょうか。
制作者の自己満足だ、同人作品だと批判されることも多いジークアクスでしたが、今の時代ネットでバズらなければすぐに人の記憶から消えていきます。アニメが三ヶ月で切り替わる時代ですから、半年もすれば過去のものになってしまうんです、まず、話題にならなければ作る意義も無いのが現実です。「ガンダム玄人」を唸らせるだけの作品に大した価値はありません。
そう言った観点から、やはりジークアクスは傑作だったなぁ…という思いを改めて持った、今回の富野監督記事でした。
監督自身がジークアクスをどう思っているかは知りませんが、少なくとも正しく現代のガンダムであったことは喧伝していきたく思います。
というわけで、ジークアクス各回感想記事を今一度まとめます。
今、円盤情報が待ち遠しくて仕方ないんですよね。
※第8話は記事内に
