応元維新――兆しは、すでに現れている⑥ エピローグ
一年後のクリスマス、少女は街を歩いていた。
治安回復を最優先に掲げた政府の方針でたまり場は消えた。
ただ想像よりクリスマスは普通のクリスマスだ。
施設の大人から聞いた話。
「これから国の向きが変わるから、分かれ道でどっちを選んでも、そんなに間違ったところには行かないよ。きっと」
ピンと来なかったが、なんだか良さそうだと、施設のおじさんの笑顔から感じとった。
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五年後の秋、団地の女は区役所の窓口へ行った。
用件は大したことではなかった。子どもの転校にともなう書類の確認だった。
別の用事が長引いて出遅れた。今日終わらないと面倒だな。
そう思いながら窓口に向かった。
受付の番号機は変わっていなかった。プラスチックの椅子も同じだった。
「どれくらい掛かりそう?」一応聞いてみた。
担当の若い職員が書類を見ながらこう言った。
「三点のうち二点はここで処理できます。残りの一点だけ、別の窓口へご案内しますが、今日中に終わります」
以前は違った。半日かけてたらい回しにされるのが常だった。
女は「ありがとうございます」と言いながら、なぜそれが当たり前のように感じられるのかを考えた。変わったのか、と思う。それとも、変わっていると思いたいだけなのか。
用事を終えて外に出ると、十一月の空は低く、商店街はまだ半分シャッターが下りたままだった。完全には変わっていない。五年で変わるほど、積み上がったものは薄くない。
でも、と彼女は思った。
区役所の職員が、最初に「今日中に終わります」と言った。
それだけのことが、五年前にはなかった。
麦茶を買って帰ろうと思いながら、彼女はスーパーの方へ歩いた。国の話は、もうニュースだけのものではなかった。それは、いつの間にか、こういう小さなことの中に降りてきていた。
良くなったのか、悪くなったのか、彼女にはまだよく分からない。
ただ、今日の窓口の職員の顔は、疲れてはいなかった。
それだけは確かだった。
━ 付記に続く ━


