【小説】Lv7 ユーチの予感|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第1章 冒険への誘い 編
【これまでのお話】
Lv7 ユーチの予感
小4春ーーーーー
僕は、骨折した。
僕は昔から、
信じられないほど
よく怪我をする子どもだった。
落ち着きがなくて、
だらしなくて、
いつもどこかしらにぶつかっている。
僕の骨折履歴は、
なかなかに壮絶だ。
最初の記憶は3歳の頃。
兄と家で相撲をしていて、
あっけなく肩を骨折した。
それを皮切りに、
僕はこれまでの人生で、
実に『計6回』もの骨折を
経験することになる。
その内の1回が、
まさにこの小学4年生の春だった。
バキッ。
いつものように派手に転んだ。
けれど、その時だけは、
いつもと違う鈍い音が体の中に響いた。
病院へ運ばれ、
真っ白で重い、
大きなギプスで右腕を
ガチガチに固められた。
文字通り、
右も左もわからない
10歳の少年の一人冒険。
突然始まった、
不自由極まりないギプス生活。
小4、勇者の元で始まった、
新しい学校生活。
毎日が眩しくて、
楽しくて、
エキサイティングで、
「僕たちのパーティーは無敵だ」
「このクラスなら、どんなことだって楽しい」
そんな全能感に満ちた、
今までにない最高の日常の中で、
僕の心には、きっとどこかで
『油断』が生まれていたんだ。
自然界のトラップは、
その一瞬の隙を見逃してはくれない。
「調子に乗るなよ」
それを教えるための、
手痛いペナルティ。
それが、
今回の骨折だったんだ。
……そう、自分に言い聞かせようとした。
ただの不注意。
よくある子どもの怪我。
なのに。
何かが、おかしいんだ。
ギプスの中で、
じくじくと鈍く続く痛みを感じながら、
僕は言葉にできない奇妙な感覚に襲われていた。
普通の骨折と、
何かが違うような気がする。
説明のつかない違和感が、
胸の奥で黒いシミのように
じわじわと広がっていく。
心臓の鼓動が、
サッカーをしている時とは違う、
冷たいリズムでドクドクと脈打ち始める。
この後。
僕の身に、
この4年4組の教室に、

何か、とんでもないことが
起こる気がする。
これは、その大災害の前に鳴り響く、
不穏な前兆なのかなぁ……。
僕が大胆に転んだ瞬間、
僕を取り囲む『世界の境界線』が、
パキリと音を立てて
歪んでしまったかのような。
現実の景色が、
ほんの少しだけ、
現実じゃなくなってしまったかのような。
「いや、気のせいだ。」
考えすぎだ。
ただの骨折じゃないか。
だらしなキングが、
いつも通り派手にやらかした、
ただの怪我。
そうやって、
必死に自分の頭を振って、
冷たい予感をかき消そうとした。
しかし。
その10歳の直感は、
100%当たっていたんだ。
この骨折をキッカケに。
僕の人生を、
そして4年4組の日常を
根底からひっくり返す、
とんでもない未知の展開が、
すぐ目の前まで迫っていた。
世界の裏側の扉が、
静かに、開きかけていたんだ。
ユーチ、骨折を治せ!
Lv7:ユーチの予感 完 / Lv8へ続く
