第3話|AIなら簡単に作れる。でも、「何を学ぶか」はAI任せにできなかった
ログイン機能ができて、「これなら、本当にアプリを作れるかもしれない」と思い始めました。
では、次に何を作るか。
ここから、ようやく英検対策アプリ「AiKen」らしい機能の開発が始まります。
最初に作ることにしたのは、
英単語テスト
でした。
実は、ここについては最初からある程度構想がありました。
私は英検対策に特化した「KIRIHARA Online Academy」というオンラインスクールの立ち上げ・運営に携わっています。
そのため、英検対策でどんな学習をすればいいのかは、それなりに分かっているつもりです。
問題は、
それをどうアプリにするか。
でした。
単語帳や過去問を、アプリに置き換えたいわけではありませんでした
英検対策では、単語帳や過去問を使った学習が基本になります。
だから、「単語帳も過去問も必要ない。AiKenだけで合格できます」
というアプリを作りたいとは思いませんでした。
むしろ逆です。
単語帳や過去問での勉強を、もっと効果的にするためにアプリを使う。
こちらの方が、私には自然に思えました。
KIRIHARA Online Academyも、考え方は似ています。
単語帳や過去問で自分自身が勉強する。
そこに日本人講師が加わります。
宿題を管理する。
分からないところを質問する。
英作文を添削する。
面接のロールプレイをする。
そして、学習を続けられるように伴走する。
教材を置き換えるのではなく、教材を使った学習をもっと効果的にする。
では、同じことをアプリで考えたら何ができるだろう。
そこから機能を考え始めました。
まずは、「覚えたつもり」をテストできるようにしたい
単語学習で最初に思いついたのが、テストでした。
単語帳を何度も読んでいると、「これは覚えた」と思うことがあります。
でも、実際に問題として出されると答えられない。
そんなことは珍しくありません。
だったら、アプリでどんどんテストできるようにすればいい。
4択形式で英単語を出して、意味を選ぶ。
これならスマートフォンでもPCでも使いやすい。
しかも、アプリなら、「どの問題を間違えたのか」を記録できます。
間違えた問題を保存して、あとから復習できる。
さらに、
間違えた単語ほど、次のテストでもう一度出やすくする
という仕組みも作れます。
これは紙の単語帳では、なかなかできないことです。
「アプリだからできる単語学習って、こういうことかもしれない」
少しずつ形が見えてきました。

正解して終わりでは、少しもったいない
もう一つ入れたかったのが、例文です。
単語は意味だけ覚えても、実際にどのように使われるのか分からないことがあります。
どんな文章で使われるのか。
どんな単語と一緒に登場することが多いのか。
そうした使われ方まで一緒に確認できた方が、理解しやすくなります。
そこで、テストに回答したあと、
その単語を使った例文を表示する
ようにしました。
正解した。
「やった!」
で次へ進むのではなく、
「実際にはこんな文章で使うんだ」
まで確認してから次の問題へ進む。
小さな機能ですが、単語テストを単なるクイズにしないために大切な部分だと思いました。

さらに、「音」も入れたくなりました
単語を覚えるなら、文字だけではなく、音も一緒に覚えたい。
単語も例文も、その場で発音を聞けるようにしたいと思いました。
でも問題があります。
一つひとつ音声を録音していたら、とんでもない作業量になります。
「これ、どうすればいい?」
とCursorに相談しました。
そこで教えてもらったのが、Web Speech APIでした。
ブラウザやデバイスの音声読み上げ機能を利用して、英単語や英文を読み上げてもらう仕組みです。
もちろん、人間が収録した音声とまったく同じではありません。
それでも、英単語や例文の音をその場で確認する用途なら十分使えそうでした。
早速、実装してもらいました。
ボタンを押す
英単語が読み上げられる
例文も読んでくれる
「おお、これいいな」
少しずつ、自分が欲しかった単語学習の形になっていきました。

間違えた単語だけを集めたページも作りました
もう一つ欲しかったのが、復習機能です。
テストを何回も受けていると、「いつも間違える単語」が出てきます。
そこで通常の学習履歴とは別に、
間違えた単語だけを一覧で確認できるページ
を作りました。
何を間違えたのかが残る。
そこからもう一度確認できる。
そして、その単語を次のテストでも出やすくする。
テストする
間違える
復習する
もう一度テストする
この循環をアプリの中で作れるようになりました。
機能としては、かなり満足できるものになりました。
ところが。
ここで、ものすごく大きな問題に気付きます。

……で、単語は誰が用意するの?
単語テストの仕組みはできました。
でも当然ながら、中身がありません。
英検5級
4級
3級
準2級
準2級プラス
2級
準1級
1級
それぞれに必要な単語を用意しなければいけません。
市販されている英検対策の単語帳はたくさんあります。
でも、それらをそのままデータ化するわけにはいきません。
自分たちで、AiKenのための単語データを作る必要があります。
「これ、どうやって作ろう……」
またCursorに相談しました。
そこで、まずAIに級ごとの候補となる単語を出してもらい、それを人間が確認して取捨選択していく方法を考えました。
確かに、それならゼロから全部考えるより速い。
やってみることにしました。
ところが、ここからが本当に大変でした。
AIが出した単語を、私が判断できない
AIは大量の候補を出してくれます。
でも、
「この単語、本当に3級で必要?」
「これは2級じゃなくて準1級では?」
「この意味で覚えさせて大丈夫?」
と考え始めると、簡単には判断できません。
AIが出したものをそのまま採用してしまえば速い。
でも、それでは英検対策アプリとして提供するには怖い。
最終的には、人間が確認しなければいけない。
そこで私は、英検対策の単語帳をいろいろ買いました。
そして級ごとに、
AIが出した候補
実際の教材
自分たちがこれまで英検対策で見てきた内容
それらを見ながら、一語ずつ精査していくことにしました。
開発が「1」なら、この作業は「100」でした
ここまでAIコーディングを体験して、「開発ってこんなに速くできるんだ」
と驚いていました。
単語テストの画面を作る
履歴を保存する
音声を再生する
間違えた問題を出やすくする
こうした機能は、Cursorに相談するとどんどん実装されていきます。
でも、
中に入れる単語を決める仕事は、AIだけでは終わりませんでした。
一語ずつ見る
意味を見る
級を見る
例文を見る
また次の単語を見る
終わらない。
本当に終わりません。
感覚としては、
開発の大変さが「1」なら、コンテンツを作る大変さは「100」くらい。
途中で何度も、「これ、全部やるの無理じゃない?」と思いました。
ここでも、AIに「作業そのもの」を改善してもらいました
面白かったのは、ここからです。
単語の判断そのものをAI任せにはできない。
でも、
判断するための作業を効率化することはできる。
そう考えるようになりました。
「この作業、もっと速くできない?」
「毎回同じ操作をしているけど、自動化できない?」
「確認しやすい画面を作れない?」
そんなことをCursorに相談しながら、単語を精査するための小さなスキルや仕組みを作っていきました。
つまり、
アプリを作るために、アプリを作る。
そんなことまで始めました。
それでも大変でした。
でも、少しずつ進みました。
そして、なんとか一通りの単語データを作るところまでたどり着きました。
AIコーディングで一番大変なのは、コードではないのかもしれない
このとき、一つ大きなことに気付きました。
AIを使えば、プログラムは驚くほど速く作れます。
でも、
「何を入れるのか」まで自動的に正しく決まるわけではありません。
英検対策アプリなら、
どんな単語を覚えるべきなのか。
どんな例文を出すのか。
どんな順番で学習するのか。
そこには、英検対策についての知識や経験が必要になります。
AIが「どう作るか」をものすごいスピードで助けてくれるようになったからこそ、
人間が「何を作るか」を考えることの重要性が、むしろ大きくなった。
この単語テストを作りながら、そんなことを感じました。
そして私は、自分でも英検を受けることにしました
出来上がった単語テストは、自分でもかなり気に入っています。
スマートフォンでどんどん問題を解ける
間違えた単語が残る
例文を確認できる
音声も聞ける
最初に考えていた、
「単語帳での勉強を、もう一段効果的にするアプリ」
には、かなり近づけたと思います。
ただ、ここまで作ると、また別の気持ちが出てきました。
本当にこの単語でいいのだろうか
実際の英検を受けたとき、どのくらい役に立つのだろうか
もっと自分自身で確かめたい
そう思うようになりました。
そして最終的に、
私自身も英検を受験することになります。
ただ、それはもう少し後のお話です。
もし近々英検を受験する方が周りにいらっしゃったら、ぜひAiKenの単語テストも試してみてください。

※「AIと一人で、アプリを作る。|AiKen開発記」マガジン連載中
(第5話、2026年9月1日 更新予定です)
