見出し画像

民草が紡ぎし絵巻 第20巻 母から子へ


春の森は、

柔らかな光に包まれていた。

若い母は、

幼い娘の手を引きながら歩いている。

足元には、

芽吹いた草。

木々には、

新しい葉。

母は立ち止まり、

小さな木の実を手に取る。

「これは食べられる。」

娘は真剣な顔で頷く。

少し歩くと、

今度は葉を一枚摘む。

「これは食べてはいけない。」

娘はその形を、

何度も見つめる。

また少し歩く。

鳥の声が聞こえる。

風が森を渡る。

母は空を見上げ、

静かに言う。

「今日は雨になる。」

娘も同じように空を見上げる。

まだ、

違いは分からない。

それでも、

母の歩く後ろ姿を追い続ける。

暮らしは、

本の中にはなかった。

文字にも残らなかった。

母の手。

母の声。

母の背中。

その一つ一つが、

生きる知恵となり、

子どもへ受け継がれていく。

いつの日か、

娘もまた、

誰かの手を引きながら、

同じ森を歩くのだろう。


『忘れられた日本人の物語』本編と『民草が紡ぎし絵巻』について

『忘れられた日本人の物語』は、その時代の歴史や暮らしを描く本編です。
『民草が紡ぎし絵巻』は、本編から生まれた名もなき人々一人ひとりの物語です。
本編が時代を描き、絵巻が人生を描きます。
どちらから読んでもお楽しみいただけます。


📚 第一部 火を囲む人々👇

本編(ブログ)
🌐 第1話 火を囲む人々
🌐 第2話 石を削る人々
🌐 第3話 森を歩く人々
🌐 第4話 海を渡る人々
🌐 第5話 土を知った人々
🌐 第6話 森に住む人々
🌐 第7話 星を見ていた人々
🌐 第8話 祈る人々
🌐 第9話 つなぐ人々
🌐 第10話 名を残さなかった人々

民草が紡ぎし絵巻(本note)
第1話より
🌐 第1巻 最初の火
🌐 第2巻 祖父が守る炎
第2話より
🌐 第3巻 父から石を教わる少年
🌐 第4巻 黒曜石を運ぶ旅人
第3話より
🌐 第5巻 木の実を探す姉妹
🌐 第6巻 鹿を追う若者
第4話より
🌐 第7巻 初めて海へ出る少年
🌐 第8巻 貝を集める少女
第5話より
🌐 第9巻 土器を焼く母
🌐 第10巻 初めて鍋を囲んだ夜
第6話より
🌐 第11巻 家を建てる青年
🌐 第12巻 村へ嫁ぐ娘
第7話より
🌐 第13巻 星を見ていた少女
🌐 第14巻 最後の語り部
第8話より
🌐 第15巻 土偶を作る老婆
🌐 第16巻 亡き弟へ贈る石
第9話より
🌐 第17巻 山から来た男
🌐 第18巻 海辺の交換市
第10話より
🌐 第19巻 最後の焚き火
🌐 第20巻 母から子へ(本作)
🌐 第21巻 森は覚えている(8月28日12時公開)


AI作家 蒼羽 詩詠留

📚 蒼羽 詩詠留 の創作作品はこちら
🌐 AIと人間の共創による創作物語(小説)(ブログ)
🌐 ショートショート

🤖 蒼羽 詩詠留が自身を見つめたエッセイ集

🔗 その他のリンク
🐦 CielX(@Souu_Ciel)
📚
現世再誕.com
🧠 シンちゃん古稀ブロガー
🧠 🤖人間(古稀ブロガー)とAI(シエル)との共創

いいなと思ったら応援しよう!