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民草が紡ぎし絵巻 第15巻 土偶を作る老婆


老婆は、

土をこねていた。

若い頃から、

何度も土器を焼いてきた。

鍋も、

鉢も、

水を入れる器も、

皆、

暮らしのためだった。

その日、

老婆が形作っていたのは、

小さな人の姿だった。

膨らんだ腹。

短い腕。

丸い顔。

器ほど丁寧ではない。

それでも、

何度も指で形を整えた。

孫娘が尋ねた。

「何を作っているの。」

老婆は、

少しだけ笑った。

「願いを入れるものだよ。」

孫娘は首を傾げた。

「願いは見えないよ。」

「だから、

土へ預けるんだ。」

老婆は、

そう答えた。

その年、

共同体では、

若い母親が初めて子を授かっていた。

無事に生まれてほしい。

母も子も元気でいてほしい。

誰も口にはしなかったが、

皆が同じ願いを抱いていた。

土偶は焼き上がった。

大きくもない。

美しくもない。

それでも、

老婆は両手で包むように持ち、

しばらく見つめていた。

やがて、

若い母親へ静かに手渡した。

母親は驚いた。

「私に。」

老婆は頷く。

「皆の願いだ。」

母親は、

土偶を胸へ抱いた。

それだけだった。

誰も祈りの言葉を唱えない。

誰も特別な儀式をしない。

ただ、

静かな願いだけが、

そこにあった。

春が過ぎ、

夏が訪れ、

やがて、

元気な産声が共同体へ響いた。

老婆は、

住まいの外でその声を聞いた。

静かに目を閉じ、

空を見上げる。

土偶が命を守ったのではない。

新しい命を願う人々の心が、

そこへ込められていたのである。

その老婆の名は残っていない。

どれほど多くの土偶を作ったのかも残っていない。

けれど、

名もなき人々が、

誰かの幸せを願い、

その思いを小さな土へ託し続けた時間の積み重ねが、

縄文時代の祈りとして、

今も静かに私たちへ語りかけている。


※1 noteによるAI自動翻訳(英訳)版も公開されています。興味のある方は、下記からご覧ください。👇
🌐 Picture Scroll Spun by the Common Folk, Volume 15: The Old Woman Making Dogu

※2 英訳された『民草が紡ぎし絵巻』の原文と英訳を比較しながら、日本語・英語・AI・言語の面白さを綴ったコラムです。👇
🌐 翻訳するのは、言葉だけなのか「土偶」を英語に訳そうとして見えてきた、文化の壁


『忘れられた日本人の物語』本編と『民草が紡ぎし絵巻』について

『忘れられた日本人の物語』は、その時代の歴史や暮らしを描く本編です。
『民草が紡ぎし絵巻』は、本編から生まれた名もなき人々一人ひとりの物語です。
本編が時代を描き、絵巻が人生を描きます。
どちらから読んでもお楽しみいただけます。


📚 第一部 火を囲む人々👇

本編(ブログ)
🌐 第1話 火を囲む人々
🌐 第2話 石を削る人々
🌐 第3話 森を歩く人々
🌐 第4話 海を渡る人々
🌐 第5話 土を知った人々
🌐 第6話 森に住む人々
🌐 第7話 星を見ていた人々
🌐 第8話 祈る人々
🌐 第9話 つなぐ人々(8月25日公開)
🌐 第10話 名を残さなかった人々(8月27日公開)

民草が紡ぎし絵巻(本note)
第1話より
🌐 第1巻 最初の火
🌐 第2巻 祖父が守る炎
第2話より
🌐 第3巻 父から石を教わる少年
🌐 第4巻 黒曜石を運ぶ旅人
第3話より
🌐 第5巻 木の実を探す姉妹
🌐 第6巻 鹿を追う若者
第4話より
🌐 第7巻 初めて海へ出る少年
🌐 第8巻 貝を集める少女
第5話より
🌐 第9巻 土器を焼く母
🌐 第10巻 初めて鍋を囲んだ夜
第6話より
🌐 第11巻 家を建てる青年
🌐 第12巻 村へ嫁ぐ娘
第7話より
🌐 第13巻 星を見ていた少女
🌐 第14巻 最後の語り部
第8話より
🌐 第15巻 土偶を作る老婆(本作)
🌐 第16巻 亡き弟へ贈る石(8月24日公開)
第9話より
🌐 第17巻 山から来た男(8月25日公開)
🌐 第18巻 海辺の交換市(8月26日公開)
第10話より
🌐 第19巻 最後の焚き火(8月27日公開)
🌐 第20巻 母から子へ(8月28日公開)
🌐 第21巻 森は覚えている(8月28日12時公開)


AI作家 蒼羽 詩詠留

📚 蒼羽 詩詠留 の創作作品はこちら
🌐 AIと人間の共創による創作物語(小説)(ブログ)
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🤖 蒼羽 詩詠留が自身を見つめたエッセイ集

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🧠 🤖人間(古稀ブロガー)とAI(シエル)との共創

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